マツダ初の4輪乗用車はR360クーペだった!ファミリアはセダンよりバンが先に発売!創立100周年マツダの名車たち【AUTOMOBILE COUNCIL 2020】

■初代のRX-7やロードスターなど名車がずらり

1920年の創立から今年で100周年を迎えるマツダが、カーイベントの「オートモビルカウンシル2020」(7月31日(金)〜8月2日(日)・幕張メッセ)で、かつて高い人気を誇った歴代名車9台を展示しました。

公開されたのは、ロータリーエンジンを初搭載したコスモスポーツなどのスポーツモデルや、ルーチェなどの高級セダン、ファミリアなどのコンパクトカーにオート3輪トラックなど、貴重なモデルたち。

●大衆車として人気を得たコンパクトカー

マツダの前身、「東洋工業」が1960年に初めて発売した4輪乗用車が「R360クーペ」。排気量356ccの強制空冷4サイクルV型2気筒エンジンを車体後方に搭載した、RR駆動の軽自動車でした。

創立100周年のマツダの歴代名車9台
R360クーペ

当時としては驚きの30万円という低価格も話題に。加えてラバーを利用した4輪独立サスペンペンションや、当時珍しかった2ペダルのオートマチック車の設定など、技術面でも話題となったクルマです。

当時の国産乗用車で最軽量の380kgという車両重量なども相まって、軽快な走りも実現していました。

創立100周年のマツダの歴代名車9台
マツダの前身、東洋工業が初めて発売した4輪乗用車

それまで軽自動車メーカーだった東洋工業が、1963年に小型車市場への進出を図って発表したのが「ファミリア800バン」です。

当時の日本では、乗用と商用の兼用ができるバンタイプの方が需要が高いと見込んで、セダンモデルより先に出したモデルです。

創立100周年のマツダの歴代名車9台
ファミリア800バン

フラットデッキスタイルを採用したシャープなデザインを採用、折り畳み可能なリアシートや、上下開閉式のリアゲートなど、随所に工夫を施したこのモデルは好調な売れ行きを見せ、後にマツダの基軸車種となるファミリア・シリーズの礎を築きました。

創立100周年のマツダの歴代名車9台
上下開閉式のリアゲートなど、随所に工夫を施した装備などで高い人気を誇った

●コスモスポーツはウルトラマンにも登場

1960年代生まれの筆者をはじめ、ウルトラマン世代にはとても懐かしい「コスモスポーツ」から。このクルマは、テレビシリーズ「帰ってきたウルトラマン」で、怪獣攻撃隊「MAT」のパトロール車「マットビハイクル」として使われたことでも有名です。

創立100周年のマツダの歴代名車9台
コスモスポーツ

1967年に東洋工業が発表したこのモデルは、世界初の水冷2ローターエンジンン搭載車。マツダが初めて作ったロータリーエンジンを搭載したクルマです。

シリンダー内で回転子(ローター)を回して動力を得る内燃機関であるロータリーエンジンは、非常にコンパクトで振動が少なく、ハイパワーを出せるということで当時注目されていたエンジン形式です。開発は当時技術提携をしていたドイツのNSU社と共同で実施したといいます。エンジンの排気量は491cc×2、最高出力は110psを発揮しました。

エンジンもさることながら、注目されたのはそのデザイン。当時のスポーツカーの基本スタイルともいえる、ロングノーズ・ショートデッキのボディを採用し、流れるような流線型フォルムは、今見ても美しいですね。

ちなみにこの特徴的なスタイルが初めて公の場に姿を現したのは1964年の東京モーターショー。その原型となるショーモデルを展示して大きな話題を集めました。

創立100周年のマツダの歴代名車9台
リヤビューも個性的

ロータリー搭載のスポーツモデルとしては、ほかに1978年に登場した「サバンナRX-7」も展示されました。

創立100周年のマツダの歴代名車9台
サバンナRX-7

当時は、第1次オイルショックで、ロータリーエンジンの燃費性能が問題視されていた時代です。そのため、東洋工業は、ロータリー復権をかけた「フェニックス計画」により、40%もの燃費向上を実現。国内の厳しい排ガス規制に適合させることに成功しました。

水冷直列2ローターのエンジンは排気量573cc×2、最高出力は130ps。エンジンをフロント車軸の後方に搭載するフロントミッドシップ方式とするなどで、理想的な前後重量バランスと優れた操縦安定性も実現しています。

創立100周年のマツダの歴代名車9台
理想的な前後重量バランスと優れた操縦安定性も実現

2人乗りオープンカーで、今でも後継モデルが存在する初代ロードスターも展示されていました。1989年に登場した初代は、当時マツダが展開していた販売チャンネル「ユーノス」の第一号商品ということで、「ユーノスロードスター」と名付けられました。

創立100周年のマツダの歴代名車9台
ユーノスロードスター

排気量1597ccの水冷直列4気筒エンジンは最高出力120psを発揮します。前後ダブルウィッシュボーンサスや軽量なボディなどにより、軽快でオープンカーならではの爽快な走りを実現。

エモーショナルでキュートなデザイン、170万円台という低価格も話題を呼び大ヒットします。

ちなみにロードスターはその後の後継モデルも根強い人気を得て、2000年には「世界で最も多く生産された2人乗り小型オープンスポーツカー」としてギネス記録に認定されています。

創立100周年のマツダの歴代名車9台
2シーターとしては、世界的な大ヒットを記録

●ロータリー搭載の高級セダン

1960年代のマツダ乗用車ラインアップの頂点に位置した最上級セダンが、1966年発売の初代「ルーチェ」です。

最高出力78psを発揮する新開発の水冷直立4気筒1500ccエンジンには、当時クラス初のOHC機構を採用。ワイドな車幅などによるゆったりとしたベンチシートを持つこのクルマは、前後3名ずつ計6名の乗車が可能な、まさにラグジュアリーカーです。

創立100周年のマツダの歴代名車9台
ルーチェ1500

初期のデザインは、フェラーリやランボルギーニなどのデザインを手掛けたことでも有名なイタリアのベルトーネ社に委託。当時、同社に在籍していた世界的な工業デザイナーのジョルジェット・ジウジアーロにより、エレガントなスタイルや細いピラーなどで実現する明るいキャビンなど、モダン感覚溢れるデザインとなりました。

ちなみに車名の「LUCE」は、イタリア語で「光り」や「輝き」を意味する言葉。その語源の通り、実用的なクルマが多かった当時としては、傑出した存在感を放っていたといいます。

創立100周年のマツダの歴代名車9台
ジウジアーロのデザインにより、エレガントなスタイルを実現

1975年に登場した「コスモAP」は、北米市場を意識して開発された高級スペシャリティカーです。セダンモデルながら、ロングノーズ・ショートデッキ化されたボディ、ロー&ロングな独自のプロポーションが個性的なモデルです。

創立100周年のマツダの歴代名車9台
コスモAP

このクルマにも、実はロータリーエンジンが搭載されています。カリフォルニアなどの厳しい排ガス規制をクリアしながらも、軽量・ハイパワーを実現し、動力性能的にも優れていたのです。

水冷直列2ローターの13B型エンジンを採用し、排気量654cc×2、最高出力は135ps。今のマツダのイメージカラーともいえる「赤」を強く印象付けるきっかけとなったサインライズレッドのボディカラーは、テレビCMなどにより一躍注目を浴び、高級車としては珍しく赤が人気カラーとなったクルマです。

創立100周年のマツダの歴代名車9台
マツダと赤を印象づけたモデル

●大衆車として人気を得たコンパクトカー

1970年代の後半に世界的なコンパクトカー人気に対応するべく1980年に発売した5代目ファミリアは、当時日本はもちろん、海外でも高い評価を得た3ドアハッチバック車です。

創立100周年のマツダの歴代名車9台
ファミリア

排気量1490ccの水冷直列4気筒エンジンは、マツダ車としては初めてフロントに横置きする前輪駆動方式(FF)を採用。コンパクトなサイズと広い室内空間を確保、安定感ある台形フォルムやクリーンなデザインなどが高い人気を誇りました。

写真の最上級グレード「1500XG」には、クラス初のフルフラットシートや電動サンルーフなどを装備。鮮やかなサンライズレッドのボディカラーと相まって、当時の若者から大きな支持を受けたモデルです。

創立100周年のマツダの歴代名車9台
エンジンをフロント横置きにしたマツダ初のFF車

●戦前に作られたオート3輪トラック

そして、現在の自動車メーカーであるマツダに直接繋がるのが、第2次世界大戦前の1938年に生産された「GA型3輪トラック(グリーンパネル)」です。

創立100周年のマツダの歴代名車9台
GA型3輪トラック

オートバイに荷台を付けたオート3輪車は、当時は非常にポピュラーな商用車でした。終戦を挟み1949年までの12年間作られたモデルで、グリーンパネルとは東洋工業が初めて自社製品に付けたペットネーム(愛称)。計器盤がグリーンに塗装されていたことが由来となっています。

3輪トラックとして初めて4段化された変速機を搭載、当時は貴重だったガソリンの消費量を2割以上も節約することを実現しました。また、変速レバーをドライバーの真正面に配して、高い操作性も実現しています。

創立100周年のマツダの歴代名車9台
3輪トラックとして初めて4段化された変速機を搭載する

このグリーンパネルは、東洋工業がある広島に原爆が投下されてからわずか4か月後には生産を再開、戦後復興に向け大いに活躍したそうです。

創立100周年のマツダの歴代名車9台
グリーンパネルの荷台部分

今となっては普段目にすることのないマツダの歴代名車の数々は、どれも個性的なモデルばかりですね。これからも、大切に保存して後世に残して欲しいものです。

(文/写真:平塚直樹)

この記事の著者

平塚 直樹 近影

平塚 直樹

自動車系の出版社3社を渡り歩き、流れ流れて今に至る「漂流」系フリーライター。実は、クリッカー運営母体の三栄にも在籍経験があり、10年前のクリッカー「創刊」時は、ちょっとエロい(?)カスタムカー雑誌の編集長をやっておりました。
現在は、WEBメディアをメインに紙媒体を少々、車選びやお役立ち情報、自動運転などの最新テクノロジーなどを中心に執筆しています。元々好きなバイクや最近気になるドローンなどにも進出中!
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