目次
■安全性が第一、加えて耐衝撃性や耐熱性、断熱性、軽量化が重要
●最近は、UVカットやIRカットガラス、遮音ガラスのような快適性や燃費を重視
自動車に使われるウインドウガラスには、透明性は無論のこと、耐衝撃性や耐熱性、断熱性、軽量さなどが求められます。特に重視されるのは安全性で、一般のガラスに対して割れにくく、かつ割れても飛散しにくい「安全ガラス」であることが保安基準で規定されています。
自動車用ウインドウガラスについて、解説していきます。
●そもそもガラスとは何
一般に使われているガラスは、ケイ酸(SiO2)化合物からできています。
金属やセラミックが常温で結晶状態であるのに対し、ガラスは結晶を形成しません。ガラスの中の原子は結晶のように規則的でなく、液体のようにランダムになっている非晶質固体です。
自動車用ウインドウガラスとしては、安価なソーダ石灰ガラス(SiO2-CaO-Na2O)が使われています。ソーダ石灰ガラスは、砂(酸化ケイ素)を原料として炭酸ナトリウムや炭酸カルシウムなどを調合して熱処理します。
これにより、透明で成形しやすい、組成物性の自由度が高い特徴を持つガラスが生成されます。
●クルマで使う安全ガラスとは
クルマのウインドウガラスには「安全ガラス」が義務付けられており、「合わせガラス」や「強化ガラス」、「部分強化ガラス」があります。一般的には強化ガラスと合わせガラスが使われます。
合わせガラスは、2枚のガラスの間に柔らかで強靭な樹脂製中間膜を挟んだ3層構造となっています。衝撃を受けても破片がほとんど飛び散らないのでフロントウインドウに使われます。
強化ガラスは、板ガラスを熱処理して割れにくくしたガラスです。衝撃抵抗が同厚の普通ガラスに対して、3~5倍大きく割れにくい特徴があります。割れると細かな粒状になり、鋭利な部分が少ないため乗員への危害が少なく安全です。
しかし衝撃を受けると無数のヒビが入り、視界が失われるのでフロントウインドウには使えません。
●さまざまな機能をもつウインドウガラス
現在使われている代表的な機能ガラスは、以下の通りです。
・IR(赤外線)カットガラス
断熱ガラスとも呼ばれ、赤外線の透過量を減少させて夏場の車室内温度の上昇を防ぎます。特殊な中間膜を使用する合わせガラスタイプと強化ガラスの表面にコーティングしたタイプがあります。
・UV(紫外線)カットガラス
紫外線の透過量を減少させ、乗員の日焼けを防いで内装の劣化も抑えます。
・遮音ガラス
車室内の静粛性を向上させるため、音の透過を抑える中間膜を使った合わせガラスです。
・プライバシーガラス
可視光線の透過率を調整したスモークガラスです。外から車内が見えにくくなりますが、同時に視認性も低下するので、フロントガラスとフロントドア用への使用は禁止されています。
●ウインドウ場所と適用されるガラス
・フロントウインドウ
可視光透過率が70%以上の合わせガラスが義務付けられています。面積が大きく、直接日射を受けることが多いため、UVカットやIRカットの機能を与えることによって車内温度の上昇を抑え、冷房機能を発揮させます。また、エンジンフードから放射される騒音を中間膜によって遮断する遮音ガラスも多用されます。
・サイドウインドウ
割れにくい強化ガラスが主流です。視認性を確保して車室内を快適に保つため、UVカットやIRカットなどの機能が与えられるほか、撥水処理を施した撥水ガラスが使用されます。また車上荒らしなどの防犯のため、容易に割れないことが重要です。
・バックウインドウ
強化ガラスが主流ですが、合わせガラスが採用されている例もあります。防塵、防霜のための伝導体プリントガラス、電熱線入りガラスを組み合わせて使う場合が多いです。
最近のウインドウガラスは、視界と安全を確保するだけでなく、UVカットやIRカットガラス、遮音ガラスのような快適性や燃費を重視した仕様が普及しています。
また、2Lクラスの乗用車でウインドの重さは全体で30~35kgにもなります。この重量を半減することを目標に、ポリカーボネート樹脂などを活用する研究が進められています。
(Mr.ソラン)