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■6時間以上(ル・マンは24時間)トラブルなく走行することを目標とする過酷なレース
●ル・マンは、パリ郊外ル・マン市のサルトサーキットで昼夜24時間走り続けて周回数を競うレース
WEC(世界耐久選手権)は、「ル・マン24時間レース」を含む耐久レースの世界選手権です。スピードもさることながら6時間以上(ル・マンは24時間)トラブルなく走行することを目標とする過酷なレースです。
WECとその代表格であるル・マン24時間レースについて、解説していきます。
●WECとは
耐久レースの歴史は古く、1953年の世界スポーツカー選手権が始まりで、名称やレギュレーションを変えながら長く継続的に開催されていました。この流れを引き継ぎ、2012年に正式名称「FIA世界耐久選手権」、略称WEC(ウェック)として世界選手権の仲間入りを果たしました。
2018年のWECは、欧州や日本を含むアジア、中東で全8戦を行いました。第3戦のル・マン24時間レースとセブリング1000マイル以外は、すべて6時間レースです。
WECに参戦する車両はプロトタイプカーとグランドツーリングカー(GTカー)の2種類に分けられます。それを車両やドライバーなどのレギュレーションによって4つのクラスに区分し、各クラスでドライバーやメーカーなどのタイトルが争われます。
●WECのレギュレーション
レギュレーションによる4つのクラス分けは、LMP1、LMP2、LMGTE-PRO、LMGTE-AMです。それに加えて、ドライバーも「プラチナ」、「ゴールド」、「シルバー」、「ブロンズ」の4段階に分けられ、クラスごとにドライバーの資格が決まっています。
・LMP1(最上位クラス):プロトタイプ
2017年までは、ハイブリッドとノンハイブリッドに細分化されていましたが、2018年からは統一されました。自動車メーカーのワークスや有力プライベーターが独自に設計したレーシングカー
・LMP2:プロトタイプ
プロトタイプカーとは、フォーミュラカーのようにオープンホイールでなく、前席2シートのスポーツタイプのクルマです。LMP2は、プライベーターを対象にした市販シャシーと市販エンジンの組み合わせのレーシングカー
・LMGTE-PRO
プロドライバーが運転する市販車ベースの入門レーシングカー
・LMGTE-AM
アマチュアドライバーが運転する市販車ベースの入門レーシングカー
それぞれのクラスは、全長/全幅/全高、車両重量が規定されています。また、エンジン気筒数、排気量、搭載位置は自由ですが、最大燃料流量、最大積載燃料、回生エネルギー回生量などが規定されています。
決められた燃料量でいかに速く、長く走るかが勝負です。
●ル・マン24時間レース
ル・マン24時間レースは、モナコグランプリ、インディ500と並ぶ「世界三大レース」のひとつです。
1923年から始まった長い歴史をもつ耐久レースです。
パリ郊外のル・マン市のブガッティサーキットと公道をつないだ全長約14kmのサルトサーキットを舞台に、毎年6月の夏至に最も近い土日を開催日として行われます。昼夜を通して24時間走り続けて、周回数を競う過酷なレースです。
自動車メーカーにとってル・マンで勝つことは、技術力や耐久信頼性の高さをアピールでき、非常に名誉なことです。ゴール目前のトラブルで涙を飲むこともしばしばで、「ル・マンには魔物が棲んでいる」という名言があります。
現在は、WECには日本からトヨタだけが参戦し、初参戦から30年の時を経て2018年ついに優勝を果たしました。過去には、マツダがロータリーエンジンで何度も挑戦し、1991年に日本のワークスチームとして初めて優勝しました。
WECから、ポルシェとアウディが撤退して、ワークスとして参戦しているのはトヨタだけになりました。F1よりも高い技術が求められるWECには膨大な費用がかかると言われており、欧州メーカーはより実践的な電気自動車のフォーミュラEに主戦場を移しています。
モータースポーツにも、電動化という大きな波が押し寄せています。
(Mr.ソラン)