■F1パワーユニットの開発責任者を務める浅木泰昭氏のコメントとは?
日本ですでに発売されているホンダの新型フィットは、ヨーロッパではジャズの名で販売されています。すでにウェブでデビューを果たしていて、2020年後半にも英国での発売が予定されているそう。
彼の地では、F1のハイブリッドユニットから新型ジャズ(フィット)にどうやってノウハウが活かされているのかアナウンスされています。
ホンダは、F1で使われているハイブリッドのパワーユニット(PU)プログラムの知見を活かし、「e:HEV」と呼ばれる2モーター式ハイブリッドのエネルギー効率を向上させています。
F1に復帰してからホンダは我慢の年月が続いていましたが、昨シーズンは、F1のハイブリッドユニットである「RA620H」の戦闘力が増し、アストンマーチン・レッドブル・レーシングとスクーデリア・トロ・ロッソ(現スクーデリア・アルファタウリ)により計3勝と6度の表彰台獲得に貢献。
なお、ホンダのF1エンジニアは、最適なパフォーマンスを発揮すべく、ハイブリッドシステムが回収して展開するエネルギーの比率を常に評価し、柔軟に対応しています。
ハイブリッドパワーユニットを最適な効率と出力で稼働させるために培われた知見は、フィットなどの市販車に搭載される「e:HEV」パワートレインにも活かされているそう。新型ジャズ(フィット)も例に漏れず、エネルギーを再利用してバッテリーの充電とエンジン出力をサポートすることで、力強い加速と高効率な走行を両立しています。
初代N-BOXの主査でありF1 PU(パワーユニット)開発責任者の浅木泰昭氏は「e:HEVハイブリッドでは、F1チームの専門知識が応用されていて、どのような走行モードでも、パワートレイン制御ユニットがドライバーに可能な限り最高のパワー、そして高い効率を提供できるようにしています」とコメント。
さらに「e:HEVシステムは、新型ジャズ(フィット)のために新たに開発されたもので、最適な燃費効率、ファン・トゥ・ドライブを実現できるように設計されています。1.5Lのi-VTEC DOHCガソリンエンジン、リチウムイオンバッテリーをはじめ、インテリジェントパワーコントロールユニットを介した固定ギヤ式トランスミッションに接続された、2つのコンパクトでパワフルなモーターで構成されています。これらが調和してスムーズでダイレクトなレスポンスを実現しています」と続けています。
市街地走行の多くでは、EV走行とハイブリッド走行をシームレスに切り替えることで最適な効率を実現。高速道路ではエンジンがメインになり、モーターからのブーストにより高負荷時のエンジンを補助。
ハイブリッド走行では、ガソリンエンジンからの余剰電力を発電機モーターを介してバッテリーに充電することもできます。EV走行は減速時にも作動し、回生ブレーキでエネルギーを回収してバッテリーを充電されます。
さらに、トランスミッションは従来とは異なり、新開発の電子制御式無段変速機(eCVT)が搭載され、ギヤ比を1つに固定することで各部の動きを直結させています。
これにより、すべての走行(駆動)モードでスムーズかつ安心感のあるトルク伝達とリニアな加速感を得ています。
ホンダのレースの歴史は1958年にまで遡り、1965年にはF1で初優勝を果たしています。F1では合計74回のグランプリと6回のコンストラクターズタイトルを獲得しています。
我慢の年月はありながらも最高峰のモータースポーツに参加することで、高度なエンジニアリング能力を維持し、サーキットでの専門知識を市販車にフィードバックしています。
(塚田勝弘)