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■オン・オフいいとこ取りのライトな走り
ヤマハ・トリッカーに乗って、誰もが驚くのはきっとその圧倒的な軽さでしょう。単に車両重量が軽いだけではなく、乗り味そのものが軽くなる工夫が随所にこらされています。
たとえば超スリムなタンクは、ふつうに乗るとライダーの膝が触れることがなく、スペック以上に車体をコンパクトに感じさせてくれるのです。ひらひらとラインが変えられる自転車感覚のライトな運動性が身上のトリッカーですが、直進安定性は高く、幹線路のクルージングなどでも不安はありません。
ただ、ハンドルバーのアクションに対してはちょっと過敏な面も。走行中、バーをこじるように力を加えると、思ったよりも大きくバイクの姿勢や進路が変わることがあります。
■粘り強くフラットで快適なエンジン
トリッカーに搭載された249cc空冷単気筒SOHCエンジンの最高出力は20PS。低速から高速までよどみなく回り、ほとんどシフトに気をつかわずイージーに乗れるエンジンです。高回転域での盛り上がり感はありませんが、アイドリング付近からしっかりトルクが出ているので常用域の速さはバツグン。
発進加速でローから引っ張っていくと、またたく間に3速に入り60km/hのスピードリミットに到達する出足の良さが印象的です。一般道でのクルージングはもちろん、フル加速中でも、振動や排気音はほどよく抑えられていて、不快に感じることはありませんでした。
■ニュートラルなコーナリング特性
トリッカーのターンはクセがなく、いつでもどこでも素直でニュートラル。スロットルを開けても閉じても、曲がり足りなかったり曲がりすぎたりすることがなく、意のままに美しいラインが描けます。オフロード系の脚長バイクのわりには、サスのふにゃつき感がなく、オンロードモデルのように落ち着いた乗り味でワインディングを楽しめます。
ただ、さすがに高速コーナーとなると、ピタッとリーンアングルがきまる安定感まではありません。攻める気分でフロントに寄りかかりすぎるとラインが乱れがちになるので、なるべくバイクの重心付近に乗るよう心がけると安定します。
■安心感たっぷりのタイヤとブレーキ
どちらかといえばロード寄りのタイヤが装着されていることもあって、舗装路でのロードノイズやバイブレーションは小さく、乗り心地は快適そのものです。前後ディスクブレーキの制動力も十分。
でも、フロントブレーキはタッチがソフトでレバーの握り込みが深いので、がっつりフルブレーキングすると、スロットルグリップを握る指の背に軽くブレーキレバーが当たってしまうことがありました。ハーフウエットの路面を選んでフロントロックも試してみましたが、挙動はゆるっと穏やか。突然ロックするような不安感はありません。
ABSは付いていませんが、限界付近でタイヤがぶるぶるとロック寸前のインフォメーションを送ってくれるので、ゆとりをもってハードブレーキングができました。
■最強のUターンマシン
ワインディングも幹線道路も楽しく走れて使い勝手のいいトリッカーですが、「軽量・スリム・コンパクト」の特性がストリートでいちばん力を発揮するシーンは、なんといってもUターン。トリッカーは、現行250クラス最強のUターンマシンといっても過言ではありません。
どんなに狭い路地でも、ちょっとした坂道の途中でも、軽くて足つきがよく、ハンドル切れ角の大きなトリッカーなら、いつでも安心してクルンとUターンできるのです。
初心者はもちろん、本当をいえばベテランライダーにだって、Uターンが苦手な人は多いはず。Uターンは、小さくみえてなかなか大きなライダーたちの難関なのです。ぜひ一度、トリッカーの華麗なUターンを体験してみてください。きっと見知らぬ町の袋小路にも、行き止まりになりそうな細い山道にも、どんどん入り込んでゆきたくなるはずですから。
【ヤマハ トリッカー主要諸元】
全長×全幅×全高:1980mm×800mm×1145mm
シート高:810mm
エンジン種類:空冷4ストロークSOHC2バルブ単気筒
総排気量:249cc
最高出力/最大トルク:20ps/2.1kgm
燃料タンク容量:7.0ℓ
タイヤ(前・後):80/100-19M/C 49P/120/90-16M/C 63P
ブレーキ:油圧式シングルディスク
車両価格:47万6,300円
(写真:高橋克也 文:村上菜つみ)
【関連リンク】
村上菜つみさんがホンダ・トリッカーで出かけたツーリング記事は、月刊誌「モトチャンプ」2020年5月号(4月6日発売)に掲載されています。
モトチャンプ5月号の詳細はこちら
https://www.sun-a.com/magazine/detail.php?pid=11361
トリッカー Official Site
https://www.yamaha-motor.co.jp/mc/lineup/tricker/