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■トヨタのTNGAやVWのMQBなど、各メーカーは独自の手法で推進
●プラットフォーム戦略の中核は、「標準化」、「共用化」、「モジュール化」の3要素
ユーザー嗜好の多様性や環境規制等の要求に応えるために、さまざまなボディ形状やパワートレイン、安全機能の搭載がクルマに求められています。自動車メーカーは、この多様な要求に応えるため、プラットフォームの共用化戦略に取り組んでいます。
プラットフォーム戦略の狙いやメリットについて、解説していきます。
●プラットフォームとは
プラットフォームには、「土台」という意味があります。プラットフォームとは、広義の意味ではどの部分ということでなく、基本構成部分を指す概念的な用語です。
狭義の意味は、一般的にボディ内外装部とアッパーボディを除いた骨組み(土台)のシャシー部を指します。
クルマのシャシーは、多数のプレス部品を組み合わせて溶接した大型部品なのでコストがかかります。したがって、新型車を開発するたびにプラットフォームを作らず、同じセグメントのクルマでは極力流用するのが一般的です。
2010年以降、自動車メーカーはさらなる開発効率の向上やコスト低減を狙って、セグメントを超えたプラットフォームの共用化に取り組んでいます。
この場合のプラットフォームは、広義の意味で様々な基本構成部分を指します。
以下、広義のプラットフォーム戦略について解説します。
●プラットフォーム戦略の狙いと効果
プラットフォーム戦略は、「標準化」、「共用化」、「モジュール化」の3つの重要な要素で構成されます。この3つの要素が、多くのメリットをもたらします。
・標準化
共通のルールに基づいた作業標準や設計標準に代表されるように、部品のバラツキ低減など品質を確保する有効な手段です。
・共用化
複数のクルマで部品を共用化する「部品共用化」は、量産効果によるコスト低減の常套手段です。セグメントの枠を超えてラインを共用化する混流生産ができるので、生産コストも低減できます。
・モジュール化
クルマ全体をいくつかの独立したブロック(モジュール)に分割する手法で、分業や外製化によってモジュールごとに並行開発ができます。さらに、さまざまなモジュールを「レゴブロック」のように組み合わせることができるので、短期開発で車種のバリエーションを増やせるのが最大の特長です。
●プラットフォーム戦略の課題
多くのメリットがあるプラットフォームの共用化ですが、一方で過度に進めるとクルマの商品力が低下する、個性がなくなるという問題があります。
プラットフォームの共用化は、部品の寸法や選択などに制約を受けるため、クルマの仕様や開発の自由度が下がり、そのクルマの特徴や個性を出すのが難しくなります。
プラットフォームの共用化とクルマの商品力のバランスは、共用する部品の範囲をどこまで設定するかで決まります。言い換えると、ひとつのプラットフォームでいくつの車種をカバーするかの設定が重要です。
●各社のプラットフォーム戦略
メーカーは、セグメントを超えて大規模な部品の共用化を狙って、独自のプラットフォーム戦略を進めています。
プラットフォーム戦略に初めて本格的に取り組んだのは、2012年に発表されたVWのプラットフォーム構想MQB(モジュラー・トランスバース・マトリクス)です。
続いて、ルノー・日産のCMF(コモン・モジュール・ファミリー)、トヨタのTNGA(トヨタ・ニューグローバル・アークテクチャー)、スバルのSGP(スバル・グローバル・プラットフォーム)などすべての自動車メーカーは、プラットフォーム戦略に積極的に取り組んでいます。
なお、メーカーによるプラットフォーム戦略例については、別頁で紹介します。
プラットフォームの共用化によって、品質を確保しながら低コストのクルマを短期間で開発し、同時に商品力向上も実現できるようになりました。
燃費の良い安全なクルマをリーズナブルな価格で提供できるのも、プラットフォーム戦略が貢献しています。
(Mr.ソラン)