●使い勝手においても高い性能を誇るモデル。ダイハツ・ロッキー/トヨタ・ライズ
2019年の東京モーターショー。ダイハツブースに突然展示されていたモデルがありました。車名こそ伏せられていましたが主要諸元は公開。そこから読み取れるのは、5ナンバーのSUVであることでした。
モーターショーが終了し、正式に発表されたモデル名は「ダイハツ・ロッキー」と「トヨタ・ライズ」。
ダイハツブランドはかつてのクロスカントリー4WDで使われたネーミングの復活でした。初代のロッキーは角張ったいかにもクロカン四駆という力強いデザインでしたが、新型はモダンなSUVらしいスタイリングとなりました。ボディサイズは、全長が3995mm・全幅1695mm・全高1620mmで、きっちり5ナンバーに収まります。搭載されるエンジンは1リットル(996cc)3気筒ターボ。車重はもっとも軽いモデルだと970kgとなります。
つまり、日本のインフラにあった5ナンバーサイズで、自動車税は0.5〜1リットルクラス、重量税は0.5〜1トンクラスに収まるモデルです。残念なのは機械式立体駐車場には入りづらい1.6mオーバーの全高を持つことで、頻繁に機械式立体駐車場を使う人や、マンションの駐車場に制限がある場合はあきらめざるを得ません。
ドライバーズシートの高さはさほど高くなく、乗降性はしやすいタイプです。乗り込んで見える視界は開けています。屋外駐車場からクルマを出し、屋内の駐車場に入れてみましたが、クルマの見切りはよく扱いやすいものでした。
最小回転半径は17インチタイヤ装着車が5m、16インチタイやだと4.9mですので、なかなかの小回り性能といえます。
駐車場から出て一般道を走らせると、ごくごく普通の印象です。一般道の坂道を登っていっても、エンジンの力不足は感じません。
ロッキーは1リットルターボの3気筒で、最高出力は98馬力・最大トルクは140Nm。今や軽自動車でもエンジンのスペック不足を感じないのです。それを考えたら、もう十分過ぎるほどです。
さらに、普通の1リットルターボよりはずっといいなあ? と思わせる底力があるのですが、それには理由があります。
それは、新たに採用された遊星ギヤ付きのCVTにあります。この方式は発進はCVTで行い、その後に遊星ギヤを切り替える方式です。発進時にしっかりと加速してその後にギヤ式とすることで発進のスムーズさと、中速以降のしっかり感の両立に成功しているのです。もちろん2リットルターボなどと比べたら不足感はありますが、普段使いとしての不満感はなしです。
5ナンバー、1リットルターボモデルであることを考えたら乗り心地はかなりいいものだといえます。このロッキーからプラットフォームがDNGAと言われる新しいものとなっていることは大きく影響しているはずです。
サスペンションはしっかりと動き、ダンピングもよくボディの余計な動きは抑えられています。SUVなので車高がある程度高くなっていて、それをしっかりと考えたセッティングだといえます。
17インチタイヤのモデルと16インチタイヤのモデルを試乗しましたが、ハンドリング、乗り心地、ノイズともに17インチが上でした。ちょっと前までは、だいたいホイールサイズが小さいほうがいいフィーリングを示すことが多かったのですが、最近はこのロッキーのようにホイール径が大きいタイヤを履くモデルのほうがいいフィーリングを示すことが増えてきています。どうも、小径ホイールモデルのタイヤ開発にかけるコストが落ちている気がしてならないのですが、それは考えすぎでしょうか?
ロッキーは使い勝手においても高い性能を誇るモデルだといえます。ラゲッジスペースは上下2段に調整できるデッキボードを備えています。このデッキボードを下段にセットした場合、定員乗車状態で369リットルの容量を確保しています。
現在、日本車のラインアップからは、ステーションワゴンが次々と姿を消しています。5ナンバーワゴンに至っては絶滅危惧種レッドカードです。そうしたなかで、これだけのラゲッジスペースを備える5ナンバー車が登場したのはある意味、ニッチ市場への参入ですが、このサイズでミニバンではないユーティリティ系を待っていた人も多いはずです。
そして、価格のリーズナブルさも大きな魅力です。ロッキーは170万5000円〜242万2200円、ライズは167万9000円〜228万2000円という価格設定。
200万円を切る車両本体価格で、前述のように税金面でも安いとなると、これは大ヒットする可能性を秘めていること間違いなし。他社の追従がどうなるか? も楽しみです。
(文/写真・諸星陽一)