目次
■Modulo Epson NSX-GTの牧野選手がレース1予選と決勝を通しての最速ラップ
11月23日・24日に富士スピードウェイで開催されたSUPER GTとDTMの交流戦「AUTOBACS 45th Anniversary presents SUPER GT x DTM 特別交流戦」。22日金曜日のフリー走行から雨が続いていましたが、その中でトップクラスのタイムを叩き出していたのが64号車 Modulo Epson NSX-GTでした。
23日に行われたレース1。その日のうちに予選と決勝が行われるという過密スケジュールをドライブした牧野選手。
ウェットだった予選で「タイヤの読みを外したので残念な順位からのスタート」と語る牧野選手。予選が終わってから決勝レースまでの間は車両保管状態となるルールのためセッティング変更もままならない状況で決勝を迎えることとなります。
20番グリッドからのスタートとなったModulo Epson NSX-GT。ここで大きな賭けに出ます。
スタートではレインタイヤを装着し、まだ差がつきにくいスタート周でピットイン。そこでスリックタイヤに履き替えてライバルがピットインする度に順位を上げていこうという作戦をとりました。今回の交流戦ではレース時間50分+1周というレース距離の中でタイヤの4輪交換を伴うピットインが1回義務付けられています。そのルールをうまく使おうという作戦なのです。
作戦は一見功を奏したかのように見えました。牧野選手はタイヤ交換直後にスーパーラップを続出しファステストラップを叩き出します。予選はウェットで行われたので参考にはなりませんが、この23日のレース1で予選決勝を通して一番速いタイムを出したのが牧野選手のModulo Epson NSX-GTだったのです。
しかし残念ながら追い上げはここまで。牧野選手曰く「タイヤが壊れた」というタイヤトラブルのため25周でリタイアとなってしまいました。しかしオーバーオールのファステストラップを叩き出したことで翌日のレース2には大きな期待が寄せられます。
■予選からポテンシャルを発揮したナレイン・カーティケヤン選手
24日のレース2。午前中に行われた予選からModulo Epson NSX-GTとナレイン・カーティケヤン選手は大活躍をします。
ウェット路面だった予選のチェッカーフラッグ直前にラストアタックに突入したナレイン・カーティケヤン選手。アタック中にチェッカーフラッグが振られフィニッシュラインに戻ったらセッション終了という最後の最後でこれまでのタイムを1秒以上も縮めた1分47秒034で3番手に上がります。
しかし予選エピソードはこれだけでは終わりません。予選でトップだったMOTUL MUGEN NSX-GTは22日のフリー走行でのクラッシュによりマシン交換をしていたために5グリッド降格となってナレイン・カーティケヤン選手のModulo Epson NSX-GTは2番グリッドからのスタートとなりました。
2番グリッドといえばフロントロー。予選順位通りの3番手であれば2列めからのスタートとなりフロントローに前を塞がれる形となることからも分かる通り、フロントローは圧倒的に有利なポジションとなります。
■セーフティーカー3回!荒れたレースをうまく抜け出したModulo Epson NSX-GT
そして決勝レースがスタートします。路面はレース1の予選から数えれば初めてのドライ路面。
ナレイン・カーティケヤン選手はホールショットはとれなかったもののポールポジションだったロイック・デュバル選手の28号車 BMC Airfilter Audi RS 5 DTMを追いまくります。
ロイック・デュバル選手のペースがそれほど上がらないところへのナレイン選手の猛チャージ。ナレイン選手がトップに立つのも時間の問題と言えるでしょう。
その瞬間はあっけなく訪れます。2周めのコカコーラコーナーではすでにトップとなり、逃げ切り体制を築こうとするナレイン・カーティケアン選手。
しかし9周目にDTMマシンの破損した部品を回収するためにセイフティーカーが導入されるとせっかく築いたマージンが帳消しになってしまいます。
今回の交流戦ではセイフティーカー解除の際の再スタートはインディ式スタートとなっており、2列縦隊でギチギチに前後の間隔を締めての再スタートのためアドバンテージは一気に縮まってしまうのです。
再スタート時の上位勢はNSX-GTが占めていました。しかしModulo Epson NSX-GTはうまく抜け出しトップをキープしていきます。その後タイヤ交換を伴うピットインが各チームともにレース中盤に集中し、各車がピットインを終えた頃にはModulo Epson NSX-GTは3位となっていました。
しかし21周目に再びセイフティーが導入されると3位だったModulo Epson NSX-GTは上位2台を射程距離に捕まえます。
セーフティーカー解除と同時にそのうちの1台を抜き去るといよいよ残る1台とトップ争いのバトルか?と思いきやトップのマシンはいきなりピットイン。これで再びModulo Epson NSX-GTがトップに立ちます。
しかし、レース終了まで7分を切ったところでレクサス系が4台も絡む多重クラッシュが発生し再びセーフティーカー導入!このままセーフティーカーチェッカーなのかと思いきやラストラップ直前で解除されます。
ラスト2周の大攻防。マルコ・ウイットマン選手のBMW M4 DTMが最終コーナーまで執拗に追いかけますが、Modulo Epson NSX-GTのストレートスピードの圧倒的な速さで逃げ切って優勝をつかみ取ります。
チェッカーを迎えたピットは大興奮!中嶋悟総監督は「来年は全部これで行きたいよね」と喜びを語ります。
Moduloのレースクイーン、Moduloプリティの永原芽衣さんと蒼乃茜さんも今季初勝利を喜びます。
パルクフェルメでは牧野選手も駆けつけ優勝を喜び合います。
ナレイン・カーティケヤン選手にとってはSUPER GTマシンによる初めての優勝をDTMを交えた世界の強豪の中でもぎ取りました。
今回の優勝についてナレイン・カーティケヤン選手はclicccarとの単独インタビューで「タイヤが同じこともさることながら、チーム全員が良いマシンに仕上げてくれていい作戦を作ってくれたことで勝てたレースです。チームの力が優勝の全てです」と語っています。
今シーズンの最後を締めくくった交流戦の最後の最後で勝ちを収めたModulo Epson NSX-GT。ミッドシップマシンとしてのNSX-GTの有終の美をModulo Epson NSX-GTが飾った歴史に残るレースとなりました。
(写真:松永和浩、高橋秀彰 文:松永和浩)