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■社会情勢からオイルにも燃費重視の波が
●燃費には粘度が大きく影響する
燃費規制強化の中で、エンジンオイルにも燃費性能の向上が求められています。フリクション低減のための低粘度オイルは、最近は多くのエンジンに使用されています。
燃費に影響の大きい粘度に注目して、エンジンオイルについて解説していきます。
●エンジンオイルの基本的な役割
高速で回転運動、往復運動するエンジン部品は、オイルを供給することによって、潤滑作用だけでなく他にも多くの作用が働き、摩擦や摩耗を軽減して耐久信頼性を確保しています。
エンジンオイルには、潤滑作用の他にも以下の働きがあります。
・気密性を保つ密封作用
・燃焼で発生する熱を吸収して放出する冷却作用
・局所的な荷重や圧力の上昇を油膜で分散させる緩衝作用
・錆や腐食からエンジンを守る防錆作用
・燃焼による汚れを洗い流す洗浄作用
●燃費向上のためのオイル粘度
オイルの重要な特性で流動性を示す粘度は、温度に大きく依存します。
温度が低いと粘度は高く「ネバネバ」状態に、温度が高いと粘度が下がり「サラサラ」状態になります。
粘度が高いと高温でも油膜が形成されますが、粘性抵抗が大きくなり燃費や出力が悪化します。一方で、粘度が低いと粘性抵抗が小さくなり燃費や低温始動性は良くなりますが、油膜が切れやすくなります。その結果、潤滑作用が低下してオイル消費の増加や摺動面の損傷を招きます。
最高油温で安定した油膜が形成できる粘度で、燃費のために低温で低い粘度が保持できるエンジンオイルが理想です。
●何を見たらオイルの粘度は分かる?
粘度の指標としては、SAE(米国自動車技術者協会)が規定した「〇W-xx」が一般的に使われています。
「〇W」は低温時の粘度指数を示します。数字が小さいほど粘度が低いサラサラのオイルで、低温時の始動性の目安となります。「xx」は高温時の粘度指数です。数字が大きいほどネバネバのオイルで、高温時の油膜保持性が高いことを表します。
クルマには、新車時にメーカーが推奨する粘度のエンジンオイルが入っています。純正オイルでクルマとエンジンが最適化されているので、特別な使用状況や目的がある場合以外は変更しない方が良いです。
日本車の多くは、5W-20ないし5W-30、欧州車や米国車は5W-40ないし10W-40のオイルが標準的に設定されています。欧州や米国は、日本に比べて高速走行頻度が高いので、オイルの高速(高温)時の性能を重視しています。
●最近流行っている低粘度オイルとは
オイルは、鉱物油と化学合成油、部分合成油から成るベースオイル(80%)と添加剤(20%)で調合されます。ベースオイルに、添加剤の粘度指数向上剤や流動点降下剤、極圧剤、摩擦調整剤などを加えて、目標とする粘度になるように調整します。
燃費重視の流れの中で、多くのメーカーが低粘度オイルを積極的に採用しています。0W-20の超低粘度オイルを標準オイルとしている低燃費車も出現しています。低粘度オイルは最新の潤滑油技術によって、低粘度でありながら優れた高温安定性と高速走行にも油膜厚さを維持するように調合しています。
低粘度オイルは、燃費低減アイテムのひとつと位置付けられ、石油メーカーで開発が進んでいます。一方で、低粘度オイルの効果を引き出す要因として、エンジン側の表面処理技術の進化も見逃せません。
石油メーカーによるオイル自体の潤滑改良技術だけでは限界があります。より一層の効果を引き出すためには、今後もエンジン側との技術連携が必要です。
(Mr.ソラン)