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■エンジンレスポンスや燃費、排出ガス性能に大きな影響
●Lジェトロ式が一般的だが例外も
吸気系システムの上流に位置するエアフローセンサーは、エンジンに吸入される空気量を精度良く計測するため、ほぼすべてのエンジンに装着されています。
エアフローセンサーとして一般的に採用されているホットワイヤ流量計とカルマン渦流量計、また吸気圧から吸入空気量を推定する方法について、解説していきます。
●吸入空気量の計測
エンジンを運転状況に応じて適正に制御するためには、時々刻々と変化する吸入空気量を正確に計測する必要があります。その方法は、直接吸入空気量を計測するLジェトロ方式が一般的ですが、吸気の圧力や密度から推定するDジェトロ方式の採用例もあります。
Lジェトロ(マスフロー)方式は、エアクリーナーとスロットル弁の間にホットワイヤ式やカルマン渦式などの流量計を装着し、直接吸入空気量を計測します。
ガソリンエンジンが、酸素(O2)センサーと三元触媒を使ったフィードバック制御による排出ガス対応するようになってからは、ほとんどが計測精度の高いLジェトロ方式を採用するようになりました。
一方でDジェトロ(スピードデンシティ)方式は、直接吸入空気量を計測するのではなく、スロットル弁より下流に圧力センサーを取り付け、吸気圧力から吸入空気量を推定します。
かつてはレスポンスの良さを生かして、スポーツ車の高出力エンジンに採用されていましたが、最近採用例は少なくなりました。
●カルマン渦式流量計によるLジェトロ方式
流れの中に柱状の障害物があると、その下流には渦が発生します。その渦の数と流速には比例関係があるため、渦の数をカウントすることで吸入流量が求められます。
カルマン渦が発生した空気の下流に超音波を発射して、渦の数に応じて超音波の波形が変化することを利用して、吸入空気量を計測します。光学的に渦数を計測する手法もあります。
かつて三菱自動車が採用していましたが、圧力損失が発生するため現在採用例はほとんどありません。
●ホットワイヤ式流量計によるLジェトロ方式
ホットワイヤ式エアフローセンサーは、白金の発熱線を流れに中に置き、空気の流れによって奪われる熱量から吸入空気量を求めます。
電流によって加熱した白金熱線を空気が通過すると、熱を奪って抵抗が変化します。流速が速いほど多くの熱が奪われ、抵抗が低くなって電流量が増えます。熱線の電流量を検出すれば、空気流量が計測できるというわけです。
原理的に質量流量が検出できるので、大気圧や気温の変化の影響を受けない扱いやすい特徴があります。白金熱線の抵抗は汚損の影響を受けやすいため、熱線の前後に汚損防止用のスクリーンが設けられています。
●圧力センサーによるDジェトロ方式
スロットル弁下流の吸気マニホールドに圧力センサーを取り付け、吸気圧力とエンジン回転から吸入空気量を推定します。電子制御噴射システムの採用初期には一般的な手法でしたが、現在採用例は少なくなりました。
エンジンに近い吸気圧力から空気量を推定するので、空気量変化の応答性に優れている特徴があります。一方、直接空気量を計測するのではなく、あくまで推定なので計測精度は劣ります。
特にEGR導入時には、吸気圧力が吸入空気量とEGR量を含めた量を代表するので、吸入空気量の正確な推定ができないという課題があります。
運転条件に応じて変動する空気量を応答良く計測することは、クルマのレスポンスや燃費、排出ガス性能にとって非常に重要です。
最近は、排出ガス(NOx)低減や低燃費のために、大量のEGRを導入するエンジンが多いため、吸入空気量だけでなく、EGR量も計測する必要があります。両者を精度良く計測するため、エアフローセンサーと吸気圧力計測を併用するのが、一般的です。
(Mr.ソラン)