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■気になる疑問「パトカーなら何キロ出しても許される?」にお答えします
●サイレン&赤色灯をつければ一般道は80キロまでOK
速度違反を取り締まるためパトカーや白バイ(以下単にパトカーという)が猛然とかっ飛んでいくのを見かける。あれは許されるのか?
パトカーは「サイレンを鳴らし、かつ、赤色の警光灯をつけ」ると「緊急自動車」になる(道路交通法施行令第14条)。
緊急自動車は、道路の右側を走ってもいいとか、一時時停止場所で停止しなくていいとか、いろいろな規則を守らなくていいことになっている(道交法第39~41条)。緊急自動車は火災や急病や殺人事件の現場へ緊急に駆けつけなければならないのだから当然だろう。
その際の速度については、緊急自動車は一般道路で時速80キロまで出していいことになっている(道交法施行令第12条第3項)
そして道交法第41条第2項にこんな規定がある。
2 前項に規定するもののほか、第二十二条の規定に違反する車両等を取り締まる場合における緊急自動車については、同条の規定は、適用しない。
第22条とは、制限速度の遵守についての規定だ。
●緊急自動車扱いでスピード違反取り締まり中なら制限速度なし!
つまり、サイレンを鳴らして赤色警光灯をつけ緊急自動車の要件を満たしたパトカーは、スピード違反を取り締まるためなら制限速度を守らなくていいのである。
しかし、こんな声もあるのではないか。
「覆面パトを追い抜いた違反車を、サイレンも赤灯もナシで覆面パトがかっ飛ばして追いかけるのを俺は見たぞ!」
「サイレンを鳴らして赤いのを回したのは、違反車を停止させる瞬間だけだったぞ!」
どうなっているのか。
●スピード違反取り締まりの際は赤灯もサイレンも必要なかった!
そこには理由がある。まずサイレンについて。
前出の道交法施行令第14条にはただし書きがある。速度違反を取り締まるときで「特に必要があると認めるときは、サイレンを鳴らすことを要しない」と。
これにより、サイレンを鳴らさなくてもセーフなのだ。
では赤灯はどうか。そこは要するに、「赤灯をつけずスピード違反を取り締まっても、だからといって取り締まりが違法になるわけではない」という趣旨の判例が1980年代にいくつもある。
加えて、刑法第35条がこう定めている。
第三十五条(正当行為) 法令又は正当な業務による行為は、罰しない。
スピード違反の取り締まりは警察の「正当な業務」だ。
ということで、スピード違反を取り締まるときサイレンも赤灯もナシでかっ飛ばすのはオッケーということになっているのだ。
ただ、実際にはあんまりムチャな速度は出さないようだ。私が16年半にわたり東京地裁の傍聴席で観察してきたところによれば、制限時速80キロの首都高速で時速160キロ以上出して起訴された事件は、すべてオービスによって取り締まられている。
ともあれ速度が高いほど事故時の被害は甚大になる。注意しましょう、一般車もパトカーも。
(今井亮一)