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クルマを他人に譲る場合に発生するのがクルマの名義変更です。車検証上の所有者を変更する場合には、複雑な手続きが必要となります。いざという時に困らないように、元自動車ディーラー営業マンである筆者が、名義変更のやり方をお教えします。
■クルマは「不動産」!?
クルマを購入すると、車検証に所有者として記載されます。この所有者の登録は、不動産の登記行為と同じです。軽自動車は動産として扱われますが、小型乗用車以上のクルマは土地や住居などと同じように不動産として扱われます。登記を証明する書類が車検証で、所有者の変更は、不動産登記を変更するのと同様ですので、様々な書類が必要です。
■必要書類は多岐にわたる
必要書類は旧所有者と新所有者の双方が準備をします。
旧所有者は印鑑証明書(発行から3ヶ月以内)、実印の押印と記名をされた委任状、譲渡証、車検証原本を新所有者に提出します。
新所有者は旧所有者から受け取った書類に加えて、自身の印鑑証明書(発行から3ヶ月以内)、実印の押印と記名をされた委任状と、残りの車検期間をカバーする自賠責保険証券を準備します。
書類を揃えるのと同時に、必ずやっておかなければならないのが車庫証明を取っておくことです。管轄の警察署へ行き、車庫証明の申請を行います。申請から土日祝日を除く5日間が経過すると、車庫証明が発行されます。即日交付とはならない点に留意し、余裕をもって申請しておきましょう。車庫証明の有効期間は交付日から1か月です。
また、新所有者が希望ナンバーを取得したい場合は、事前に申請が必要です。こちらも車庫証明と同様、発行までの日数がかかるので注意が必要な部分です。
特殊な例として、旧所有者側の印鑑証明に記載されている住所が、車検証に記載の住所と異なっていると面倒です。車検証に記載されている住所が出てくるまで、住民票をさかのぼり、除票を準備する必要がでてきます。同一都道府県の場合なら比較的簡単ですが、遠方の場合や、1つ前の異動ではなく、2つ3つ前の住所となると、車検証に記載されている古い住所から、現在の印鑑証明に記載されている住所までの全ての足取りを示さなければならないため、各都道府県へ郵送での除票請求が必要となります。
■取得税がかかる?
高年式で新車販売価格が高額車両の場合、自動車取得税がかかる可能性があります。月割りで支払う自動車税とは異なり、クルマの残価額によってかかる税金が変わってきます。大きな金額だと40万円~50万円程度かかる場合もあるので事前に確認が必要です。
車検証に記載のある型式指定番号と類別区分番号から、自動車取得税額はインターネットで確認することができます。
■書類とお金がそろったら運輸支局へ
名義変更をするには、新しく自動車を登録する管轄の陸運支局への届け出が必要です。公的機関への申請となるので、軽微なミスも許されません。自分の準備する書類への記載ミスであれば、その場で修正可能ですが、旧所有者の準備した書類への誤記や不備が見つかった場合には、修正ができません。書類の管理や準備には入念な準備が必要です。年に何十件もこなすディーラー営業マンでも、名義変更にはかなり神経を使います。
申請にはプロの力を借りることもできます。管轄する陸運支局の近くには必ず行政書士事務所がありますので、多少の手数料はかかりますがプロに任せるのもいいでしょう。
まずは、譲渡する側もされる側も書類をしっかりと揃える必要があります。自信がない場合には、行政書士の力を借りて、スムーズに手続きを終えたほうがトラブルも少なくなります。
■まとめ
不動産登記と同様に、クルマの名義変更は大変です。カーディーラーでも数はこなしていますが、毎回不安になる手続きでした。書類の準備不足や誤記が発生しやすく、慣れた人でもかなりの神経を使います。
ネットオークションやフリマアプリなどの台頭で、クルマの個人間売買も多く行われる昨今では、名義変更を個人で行うケースも多くなります。手順を正しく理解して、慎重かつ丁寧に名義変更の手続きに臨みましょう。
(文:佐々木 亘)