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■Zやマッハよりも歴史が長い! カワサキ「W」シリーズの歴史を紐解く
最新進化形では「W800ストリート」と「W800カフェ」となったカワサキ「W」シリーズ。その歴史は「Z」や「マッハ」より長く、初代「W1」は半世紀以上も前、1966年に発売されました。
今回、カワサキの協力を得て、そのたいへん貴重な「W1」に乗ることができました!! Wヒストリーとともに紹介しましょう。
筆者(青木タカオ)は25年間、1971年製の「W1SA」に乗る熱烈なWファンなのですが、なかでも初代への憧れは強く、たいへん貴重な機会を得たことに感謝感激です。エンジン始動はキックスタートオンリーで難しいと思われがちですが、じつは完調に整備されていれば難しくはありません。
●バーチカルツインの迫力あるサウンドに痺れっぱなし
今回の「W1」も、さすがはカワサキが用意した車両だけあってコンディションは抜群。バーチカルツインの目覚めはとても良かったです。キックアームを少し動かして圧縮がかかるところを探し、あとはキックアームにしっかり体重を乗せ、クランクが勢いよく回るよう思いきって下まで踏み込めば、エンジンに火が入ります。冷間時ならハンドル右についたチョークレバーを使いますが、暖まっているときは不要です。
英国式の右チェンジで、シーソーペダルの前側を踏み込んでいくに従いシフトアップとなり、トップ4段へと至ります。右足でギヤチェンジし、左足でのブレーキ操作は違和感があるものの、慣れてしまえば問題ではありません。「ダブワン」ならではの迫力あるサウンドにシビれっぱなしでした。最下段にある動画もぜひご覧ください。
■カワサキ「W」ヒストリーPLAY BACK
●W1のルーツはメグロK2にある!
(メグロ K2/1966年)
▲「W1」のミッション別体式OHV2バルブエンジンは、このモデルから受け継いだものでした。ボア66mm×ストローク77mmの排気量496ccで、ミクニ製の27mm径キャブレターを1つ装備。36PSを発揮します。カワサキは60年代に目黒製作所を吸収合併。メグロのエンブレムに、カワサキリバーマークが組み込まれています。
●初代は1966年に誕生!
(W1/1966年)
▲「W1」は1965年の東京モーターショーで「X650」として発表され、翌66年に「W1」として発売されました。ボア74mm×ストローク77mmで、排気量を624ccに拡大。対米輸出も見込んだもので、メッキタンクにカラフルな赤を配色したのも、当時は斬新でした。キャブレターはまだ1つしかなく、ミクニVM31を装着。エアクリーナーはフレームのセンターパイプ間に収まっています。国内仕様の最高出力は47PSです。
(W1SPECIAL(W1S)/1967年)
▲翌67年の「W1 SPECIAL(W1S)」でキャブ(VM28)を2基にし、最高出力を53PSに向上。前後18インチだった足まわりはフロント19インチ、リア18インチとなります。
▲輸出仕様ではシングルキャブのまま前後フェンダーをショート化した「コマンダーW1SS」や、国内仕様より一足先にツインキャブ化した「コマンダーW2SS」、さらにスクランブラー仕様の「W2TT」もありました。後の「Z1 SUPER4」が北米市場でヒットしますが、その礎を「W」が築いたのです。1966年に、シカゴに現地販売会社「アメリカン・カワサキ・モーターサイクル」を設立し、当初の主力製品は「COMMANDER W1/W2」、そして2スト250cc「SAMURAI A1」や350ccの「A7」でした。
(W1SPECIAL(W1SA)/1971年)
▲「Z1」登場で海外市場を席巻したカワサキ。W1の市場はもはや国内にしかありませんでした。右チェンジだったミッションを、リンクを介して左チェンジとした「W1SA」が1971年に発売されます。燃料タンクは全塗装となり、コンタクトブレーカーを2ポイント化。後期型より無鉛ガソリン対策も施されました。これがW1〜3のシリーズではもっともヒットし、生産台数は9870台に。
(650RS(W3)/1973年)
▲1973年に発売された「650RS(W3)」には、カワサキ初のダブルディスクブレーキが与えられました。タックロール仕上げのスプリング式シートが現代的なスポンジ製となり、フロントフォークやメーター、ウインカーなどは72年に発売した「Z1」や「H2」と共通としています。74年の生産終了時には、当時では珍しいプレミアム価格がつき、新車の値段が高騰しました。
●ベベルギヤ駆動の新バーチカルツイン搭載!
(W650/1999年)
▲まったく新しいバーチカルツインエンジンが新設計され、Wは25年ぶりの復活を果たします。ベベルギヤ駆動のSOHC4バルブは、左右2つのピストンが交互ではなく同時に上下する360度クランクをW1と同じように採用。「美しいモーターサイクルを作りたい」という思いが結晶し、誕生したのでした。当然、セルスターターも装備されています。
(W400/2006年)
▲普通二輪免許で乗れるアンダー400のWも2006年に発売し、ファン層を拡大します。このときターゲットとなったのが、女性ライダーでした。カタログにも女性モデルが起用され、シート高を下げたこともアピールされました。
(W800/2011年)
▲2011年には排気量を773ccに拡大し、フューエルインジェクション化されました。キックペダルはこのとき取り外され、始動方法はセルスターターのみとなっています。
●最新型は「ストリート」と「カフェ」の2モデル!
(W800CAFE/2019年)
▲そして最新型が「W800ストリート」と「W800カフェ」です。360度クランクのバーチカルツインという伝統を受け継ぎつつ、レトロとモダンが融合した新感覚なスタイルを実現。サウンドやエンジンフィールにこだわり、テイスティな乗り味を追求しています。Wシリーズは、また新たな歴史を歩みはじめたのです。
(文:青木タカオ/写真・動画:カワサキモータースジャパン、川崎重工業)