オイルショック後、安くて壊れず燃費が良い小型な日本車は、アメリカで大人気!ところが売れ過ぎて、日米自動車摩擦が勃発。80年代、日本メーカーは輸出自主規制と現地生産の制約の中で、アメリカで商売をしなければなりませんでした。そんな中でトヨタ、ホンダ、日産の3社が同時に高級車戦略に向かったのは、輸出台数が絞られるなら、単金が高い高級車を輸出しようと考えたからでした。。
そしてアメリカ市場において、高級車による新たな進出を目指して、新ブランド戦略を展開しました。トヨタはレクサス、ホンダはアキュラ、日産はインフィニティを立ち上げたのです。
ただ80年代当時、日本国内での高級ブランド展開は時期尚早と判断されたため、ブランドを伏せ、新型車として発売してきました。
トヨタからは、V8エンジンを搭載したセルシオが発売されました。世界最高の静粛性と豪華さを目指し、原因を元から断つ「源流主義」を開発方針として徹底して、世界のメーカーをアッと言わせました。まさに世界戦略車に相応しい、威風堂々たる佇まいのクルマでした。
ホンダは、初のV6エンジンを搭載したレジェンドを開発。ただ日本での量販を見込んだめに、5ナンバーベースのコンサバなセダンに留まったのは残念なところ。
ちなみに、当時高級車開発の経験がないホンダがイギリスBL(ブリティッシュレイランド)と共同で開発を行ったこと、更にレジェンドの兄弟車がローバーブランドで存在したことは、今となっては遠い記憶・・・。後にスペシャリティーカーを意識して、スタイリッシュな2ドアクーペが追加されたのがトピックスでした。
日産からは、日本文化の高級感をテーマにした、V8エンジンのインフィニティQ45が発売されました。高級車のセオリーである立派なグリルをあえて廃するなど、チャレンジングなクルマでしたが、販売面では苦戦しました。むしろ兄弟車のプレジデントの方が、わかりやすかったかもしれませんね。
「世界に通用する高級車とは何か?」という命題に、3社が出した答えが、セルシオでありレジェンドでありインフィニティQ45でした。
特に世界最高の静粛性と豪華さを実現したセルシオは、国産プレミアムカーの競演を制したどころか、ベンツやBMW等の欧州プレミアムカーにも多大な影響を与えたというのですから、本当に素晴らしいと思います。
(拓波幸としひろ)