雨のレースだから見えてくる、レーシングマシンならではの空力特性【SUPER GT 2019】

●ウェットコンディションでは空気の流れが可視化される

4月14日に岡山国際サーキットで開催されたSUPER GT 2019開幕戦「2019 AUTOBACS SUPER GT Round1 OKAYAMA GT 300km RACE」。

雨の強まりで次々とアクシデントが起こりレースは赤旗中断になるという過酷な状況となりました。

雨が若干弱まっていたセイフティーカースタート直後でも、後方のマシンが見えにくくなるほどのウォータースクリーンが発生。

こういった雨のレースの場合、タイヤが巻き起こす水しぶきに注目すると、マシンのボディ下部の空気の流れがよく見えるということをご存知でしょうか。

例えばほぼ同じ場所で撮影した2台のマシンを見比べると、ポルシェの方がマシン後方へと流れる水しぶきがより高く発生しているのがお解かりいただけると思います。これはマシンのリアバンパー下部に取り付けられたデュフューザーの形状に起因しています。

ノーマル車代表のホンダNSX SUPER GTセイフティーカーと前述のGT300クラスのFIA GT3マシン、Modulo KENWOOD NSX GT3を見比べてみると大型デュフーザーの装着されたGT300マシンの方が水しぶきの高さが高くなっています。

真横から見てみると、その様子がもっとよくわかります。フロントタイヤから上がる水しぶきは上や横に向ってランダムになりますが、ドア後方からリアタイヤにかけては水しぶきがリアデュフーザーに吸い込まれるように流れていきます。

同じNSXでもGT500マシンのModulo EPSON NSX-GTではリアデュフーザーから巻き上がる水しぶきの高さがGT300よりも低いことがわかります。そしてフロントタイヤから上がる水しぶきはきれいに後方へ流れて生きます。

GT500マシンはGT300マシンに比べて車体の形状変更の自由度が高く、ボディー全体で空気の流れを整えます。そのためボディ上側を流れる空気も整えられているためにGT300のFIA GT3マシンとは違った水しぶきの流れが見られるのです。

しかしGT300マシンのFIA GT3マシンはボディー形状に大きな変更を加えにくいために空力付加物を積極的に使っていく方向で空気の流れを整えていきます。なので水しぶきの流れからウィングやスポイラー、デュフーザーの効果をより強く見ることができます。

同じGT300クラスでもボディ形状を大きく変更できる自由度の高いJAF GTマシンではGT500に似た水しぶきの流れを見ることができます。

雨のレースではレースマシンの速度も下がり、クラッシュなどの危険性も上がることから観戦している皆さんも残念な気持ちになるかもしれませんが、晴天でのレースでは見ることの出来ないシーンを見ることができます。せっかく足を運んだサーキットですからこういった発見などを感じて、思いっきり楽しんでいきましょう。

とはいえ、ゴールデンウィークに開催される次戦の富士500kmレースは雨が降らないでほしいな、と切に願います。

(写真・文:松永和浩)

この記事の著者

松永 和浩 近影

松永 和浩

1966年丙午生まれ。東京都出身。大学では教育学部なのに電機関連会社で電気工事の現場監督や電気自動車用充電インフラの開発などを担当する会社員から紆余曲折を経て、自動車メディアでライターやフォトグラファーとして活動することになって現在に至ります。
3年に2台のペースで中古車を買い替える中古車マニア。中古車をいかに安く手に入れ、手間をかけずに長く乗るかということばかり考えています。
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