【自動車用語辞典:電動化技術「電気自動車」】急速に進化するEVのメリットとデメリットとは?

■CO2低減などメリットは多いが電池の進化に大きく依存する

●進化途上で航続距離や充電時間などに課題

2000年以降、モーターや電池などの電動化の要素技術が急速に進み、電気自動車(EV)が市場に出現し始めました。しかしまだ進化途上で、航続距離が短い、充電に時間がかかる、コストが高いといった課題があります。
電動車の最終形と位置付けられるEVの現状と課題について、解説していきます。

●EVのCO2低減メリット

EVは、外部電力源で充電した二次電池の電気エネルギーでモーター走行します。
走行中のCO2排出量はゼロですが、電気を製造、輸送の過程でCO2は発生します。ガソリン車の場合は、石油採掘~製油~給油所~走行までの全過程で発生するCO2を、「Well to Wheel CO2排出量」と呼びます。

EVの場合の「Well to Wheel CO2排出量」は、電気をどのように製造するかによって、大きく影響されます。日本の発電は、原子力、LNG(天然ガス)、石油、石炭、水力などで構成されています。
EVの「Well to Wheel CO2排出量」(2009年の発電構成)は、ガソリン車の排出量の35~37%程度です。

●EVの走行費用はどれくらい?

ユーザにとって興味があるのは、ガソリン車に対してEVはどれだけ金銭的なメリットがあるかではないでしょうか。

同一車両の三菱i-MiEVとガソリン車i(アイ)を比較しました。

・i-MiEVの場合

バッテリ容量は16kWh、航続距離は164km。家庭の契約電気代を30円/kWhと仮定すると、満充電に必要な電気代は480円。164km走行できるので、電力経費は2.9円/kmです。

・ガソリン車iの場合

JC08モード燃費は19km/L。ガソリン価格140円/Lとすると、燃料経費は7.4円/kmです。

以上のおおまかな計算の結果、EVはガソリン車に対して、走行燃料(電気)代が約60%節約になります。

●EVの基本構成

EVの構成はシンプルです。

二次電池とその充放電を制御するコントローラー、モーターとインバーター、車載充電器などで構成され、エンジン車で必要な変速機や吸排気系、多くの補機類などが不要です。

外部充電のための充電口は、2種類装備されています。家庭用の100V、または200V電源に接続する車載充電器用(2~3kW程度)と、充電スタンドの急速充電器用(数10kW)です。

車載電池としては、リチウムイオン電池が使われます。正負極で発生する酸化・還元反応で電力を発生させ、正負極間でリチウムイオンが行き来することによって、充電と放電を繰り返すことができます。

他の電池に比べて、エネルギー密度が高く、大きなパワーが得られる、寿命が長いなどのメリットがあります。しかし、EV用としてはまだ大量の電池セルが必要なため、重量が重く、コストが高いという課題があります。

●最新のEV(日産リーフ)

日産リーフは、2017年10月に航続距離を従来の280kmから400kmへと大幅に改良しました。

リチウムイオン電池のエネルギー密度を上げ、同体積ながら電池容量を30kWhから40kWhに増大し、さらに電源システムや車両全体の効率も上げました。

1回の満充電で400km走行できれば、燃費の良くないガソリン車の満タンの航続距離とほぼ同レベルになり、EVの電欠ストレスから解放されるかもしれません。


EVは、CO2の低減やゼロエミッション以外にも、レイアウトの設計自由度が向上し、車両のデザインの自由度も高くなるメリットがあります。

EVの普及は、電池の開発次第という状況は、今も変わりません。航続距離、コスト、充電時間の課題がいつ解消されるかが戦略上非常に重要ですが、それを現時点で予測するのは難しいです。

(Mr.ソラン)

この記事の著者

Mr. ソラン 近影

Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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