スタッドレスタイヤ「YOKOHAMAアイスガード6」に、カリフォルニアの山火事が与える影響とは?

この時期、寒冷地では自動車メーカーやタイヤメーカーの試乗会が行われます。特に1月半ば過ぎから2月上旬は一年でも最も気温が下がるため、この時期に集中して行われるのです。

今回足を運んだのは「ヨコハマタイヤ」の北海道試乗会。

主役は昨年発売されたヨコハマタイヤのスタッドレスタイヤ「ice GUARD6(アイスガード6)」の性能確認。

会場は北海道・旭川空港近くのTTCH(タイヤ・テスト・センター・オブ・北海道)。

昨年、悲願だった屋内氷盤路試験場が完成したことで安定した氷上実験が可能となり「より高度な技術開発が可能となった」とのこと。というか、今まで屋外だったことにむしろ驚きです。

ヨコハマタイヤの広報の方曰く「よい商品なのに広報のアピール不足で、なかなかお客様に商品の良さがご理解いただけずに残念」とのこと。ほかにもタイヤ販売は地場のショップなどの尽力などによる部分も大きいかもしれませんが、そんなヨコハマタイヤの自信作「アイスガード6」の商品力をたっぷり体感してきました。

今回は「アイスガード6」に試乗するだけではなく、いろいろな「比較」試乗。

たとえば冬用タイヤといっても「オールシーズンタイヤ」と「ウインタータイヤ」「スタッドレスタイヤ」とありますが、トヨタ・ノア/ヴォクシーに装着した北米で人気のオールシーズンタイヤ「AVID Ascend」は新雪ならまずまず、圧雪路となると少し怪しくなり、凍結路では微妙。欧州で人気のウインタータイヤ「ブルーアース V905 」は新雪と圧雪はまずまず。しかし凍結路はおすすめしません。新雪、圧雪、凍結路共に抜群に効果が高いのはスタッドレスタイヤの「アイスガード6」。制動距離もほかの2つに比べて断然短く、食いつき方も違って安定感抜群。また、音も静か。北米では「オールシーズンタイヤ」、欧州では「ウインタータイヤ」が人気なのは、その土地柄や使い方、冬といっても気温などにも影響があるようです。

ほかにもタイヤのデザイン(パターン)違いでの走行が変化する比較。

タイヤが地面に接する面の面積や溝の入り方の違いで、走行性能の変化を体験。接地感を向上させるためにブロックを大きくしながら剛性を高め、溝や新形状の細かい切れ込み(サイプ)をバランスよく採用することで、先代の「アイスガード5プラス」に加えてエッジ24%、接地8%、剛性50%とそれぞれ向上。「アイスガード5」もなかなか安定感はありますが、「アイスガード6」では更に加速時の安定感が増し、横滑り感が少なく、制動距離も短くなります。

そして面白かったのは、溝の無いスリックタイヤにウインタータイヤのゴムと、「アイスガード6」のゴムでの比較。「アイスガード6」はゴムのしなやか性を保つため大量のシリカを使用しつつ新素材の「ホワイトポリマー」とスタッドレスタイヤ用のオレンジオイルを採用。素材が変わることで、雪でも氷でも安定感が変わることに驚きです。

さらに驚きといえば、ヨコハマタイヤといえば効果は違いますが、ノーマルタイヤにもスタッドレスタイヤにもオレンジオイルを採用しています。夏タイヤの場合は、ウェットでの性能を上げるため、スタッドレスタイヤの場合には、長く使うためです。使用するオレンジはアメリカ・カリフォルニア産。なので時々起きるカリフォルニアの山火事に戦々恐々。場合によってはヨコハマタイヤの生産に大きな影響を与えてしまう可能性があるようです。日本産のミカンは食用とのバランスを考えると安定した供給が難しいのかもしれません。

またスタッドレスタイヤのデザインにもトレンドがあり、昨今はパターンがセンターからショルダー方向に貫通しているものなのだとか。「アイスガード6」はそれをうまく取り入れながらバランスよく使い、性能とデザインを両立させています。

タイヤは単に「黒くて丸いゴムの塊」ではなく、そこにデザインや素材の開発研究、いろいろな性能と安全性が伴い、私たちの安全とクルマを支える、実はスーパーヒーローなのです。

吉田 由美