マツダが開発した圧縮点火式ガソリンエンジン「SKYACTIV-X」。そのメカニズムとは?【SKYACTIV-X試乗会】

マツダは2017年の東京モーターショーに次世代ガソリンエンジン「SKYACTIV-X(スカイアクティブ・エックス)」を出展します。ショーに先立ち、報道関係者に同エンジンを搭載したテスト車両を試乗する機会が与えられました。

「SKYACTIV-X」はガソリンエンジンとディーゼルエンジンのいいところ取りを狙ったエンジンで、その最大の特徴は従来のガソリンエンジンでは不可能とされていた圧縮着火方式を採用するところにあります。

従来、ガソリンエンジンは空気とガソリンが混ざった“混合気”を圧縮し、そこに点火プラグで火花を飛ばして燃焼させていました。その後、直噴ガソリンエンジンが登場、空気のみを圧縮しそこへ燃料を噴射し点火プラグ火花を飛ばして燃焼させる方式が生まれました。

一方、ディーゼルエンジンには点火プラグが存在せず、圧縮した空気に軽油(船舶用などは重油を使うことなどもあり、燃料には一定の自由度があります)を噴射することで自己着火して燃焼します。

「SKYACTIV-X」には点火プラグがありますが、その燃焼方式が従来のものとは異なります。従来の燃焼は、点火プラグで発生した火種が混合気に順番に伝播して燃えます。例えば、広げた新聞紙の角にライターで点けた火が順々に燃え広がるような燃え方です。

「SKYACTIV-X」の場合は、圧縮された混合気に着火することは同じですが、その火種が広がるのではなく、火種ができることで燃焼室内の圧力が一気に上昇しあちこちで自己着火を起こします。いわば、広げた新聞紙の角に火を点けると新聞のあちこちで燃え始めるような燃え方となります。

なお、すべての領域でこの燃焼が行われるわけではなく、条件によっては通常の火炎伝播燃焼の領域も存在しています。

「SKYACTIV-X」の構造は基本的にはガソリンエンジンと同じですが、大きなポイントとなる構造物が、筒内圧センサー、高圧燃料系、高応答エアサプライの3点です。

筒内圧センサーは燃焼方式などを制御するためのもの、高圧燃料系は筒内に燃料を噴射するためのものでディーゼルエンジン同様にコモンレール(燃料デリバリーパイプ)方式となっています。高応答エアサプライはスーパーチャージャーのことで、より多くの空気を筒内に導入するために使われます。

(諸星陽一)

この記事の著者

諸星陽一 近影

諸星陽一

1963年東京生まれ。23歳で自動車雑誌の編集部員となるが、その後すぐにフリーランスに転身。29歳より7年間、自費で富士フレッシュマンレース(サバンナRX-7・FC3Sクラス)に参戦。
乗って、感じて、撮って、書くことを基本に自分の意見や理想も大事にするが、読者の立場も十分に考慮した評価を行うことをモットーとする。理想の車生活は、2柱リフトのあるガレージに、ロータス時代のスーパー7かサバンナRX-7(FC3S)とPHV、シティコミューター的EVの3台を持つことだが…。
続きを見る
閉じる