年明けのアメリカ、雪のデトロイトを皮切りに世界各国で国際自動車ショーが開催されます。日本でも、2年に一度の東京モーターショーまで一か月足らず。日本メーカー各社からどんな新車やコンセプトカーが出展されるか楽しみですね。
さて、それに先立つこと約一ヶ月、日本と並んで世界の主力自動車メーカーが本社を置くドイツでも大規模なイベントが開かれます。
一年おきにフランスのパリと交互に開催される、フランクフルト・モーターショーはその規模の大きさで有名です。
欧州連合(EU)各国を束ね、ユーロ圏の金融政策を担う欧州中央銀行の所在地であり、ドイツ経済の中心でもあるフランクフルト。その中央駅にほど近い場所にあるのが「メッセ(ドイツ語で市場の意)・フランクフルト」。展示スペースの総面積はおよそ230平方キロ(サッカーグラウンド33個分)。広大なスペースに、世界中の自動車メーカー、部品サプライヤーなど1,000社以上が集まります。ホームグラウンドとあって、特にメルセデス・ベンツ、BMW、アウディ、フォルクスワーゲンなどドイツ勢は気合が入ています。
当然、世界各国からメーカー関係者、メディア、自動車ファンなどたくさんの人々がこの街に集まります。モーターショー期間中はホテルの値段が最低でもふだんの3倍以上に跳ね上がり、古ぼけたビジネスホテルでも一泊当たり数万円というケースはざらにある様です。
ところで、フランクフルトと聞いて真っ先に思い浮かべるのはモーターショーでなく、もちろん欧州中央銀行でもなく、ソーセージですよね?という事で、今回はモーターショーの前に本場(?)でフランクフルト・ソーセージを食べてみる事にしました。ホテルからモーターショー会場まで散歩を兼ねてお店を探すと…、見慣れたマクドナルドやバーガーキング、トルコのファーストフード・ケバブ屋さん、イタリアン、中華などなど。でも、「ソーセージ(sausage)」の文字が見当たりません。
そうこうするうちにメッセに到着。とりあえず会場内で食事のできる場所を探すと、飲み物やサンドイッチなどを売る売店に混じってソーセージを焼いている屋台を見つけました。
「ここで売ってるソーセージだからフランクフルト・ソーセージだろう」と、世界共通言語の指差しで鉄板の上で焼かれていた白いのと茶色いの、それぞれ一本づつオーダー。食べやすい大きさに切ってくれました。ソースとなにやら黄色い粉をかけていただくのがドイツ流の様です。結構太目のソーセージは、パリっと歯切れがよく、熱々でジューシーな肉汁がじわっと流れ出て、ほんのり効いたスパイスと塩味でおいしく頂けました。舌鼓を打ちながらお店の前でしばらく観察していると、黄色いのはカレー粉。これを振りかけた「currey wurst」と呼ぶようで、メニューにはフランクフルトソーセージとは書いてありません。。
フランクフルトのフランクフルトを食べたのかどうか、すっきりしませんがいよいよモーターショー会場に突入です。世間は狭いもの。すぐに顔見知りのドイツ人に呼び止められました。そこで、クルマの取材に入る前に彼女にソーセージに関するインタビューを敢行してみました。さすがに常に真面目なドイツ人、おかしな質問にも丁寧に答えてくれました。
「sausage=ソーセージ」は英語。ドイツ語では先ほどメニューで見た「wurst」、ドイツ語の発音だと「ヴルスト」と言うそうです。で、豚の腸を使った太めの物がフランクフルター・ヴルスト、つまりフランクフルト・ソーセージだそうです。なお、太さは2センチから3.6センチと決められているのを後で知りました。なんでもきちんとしたがるドイツらしいですね。ちなみに、「ウインナー」はオーストリアのウィーンにゆかりのあるソーセージで、こちらは羊の腸を使った細めの物を指すそうです。その他、BMWの本社があるミュンヘンなどの「バイエルン地方」でハーブなどを加えて作られる「Weiss Wurst=白ソーセージ」もドイツでは人気だそうです。
スパゲッティの本場イタリアのナポリには「ナポリタン」が無いとか、ウィーンで「ウインナーコーヒー」を注文したらカプチーノだったとか、海外では日本人にとっては新鮮な驚きを感じる事がありますが、どうやらフランクフルトのソーセージは本当に「フランクフルト」だったようです。
(Toru Ishikawa)