電気自動車がエンジン車を超える日は近い

横浜ゴムより『低燃費タイヤ「BluEarth」のプロトタイプを装着した 電気自動車でヒルクライムレースに参戦』という発表がありました。

 

参加するヒルクライムレースとは、ご存知”パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム”。今年で89回目となる伝統のイベントは、日本から総合優勝を狙ってモンスター田嶋選手が参戦することでもおなじみ。今年は田嶋選手の永遠のライバルともいえるロッド・ミレン選手が復活するというウワサもあり、例年に増して盛り上がりが期待されています。


そのモンスター田嶋選手ら総合トップを狙う選手があやつるのは1000馬力級ガソリンエンジンのスペシャルマシンですが、横浜ゴムが走らせる電気自動車もパイクスピーク用のスペシャルメイド。

 


見てのとおり、センターシートのバギースタイルで、そこに三洋製のリチウムイオンバッテリーやアメリカACP社製モーターを組み込んだもの。そしてタイヤは横浜ゴムのオレンジオイル配合の低燃費タイヤ『BluEarth(ブルーアース)』を装着。

 

ドライバーは日本のダートレースJFWDA戦において前人未到の10連覇を成し遂げ、またバハ・カリフォルニアなどの海外ダートレース でも活躍する塙郁夫選手。昨年、パイクスピークにおける電気自動車の歴代最高タイムを記録したというのも納得の、豊富な実績を持つドライバーです。

 

ところでパイクスピークの舞台となるヒルクライムコースは、普段は観光道路として使われている道。しかも舗装とダートが混在するので一般的なレースで使われるようなスリックタイヤという選択はありえず、タイヤだけとっても一筋縄では行かない難しいイベント。

 

さらにクルマにとって厳しいのは、スタート地点の標高が2862m、ゴール地点では標高4301mにもなってしまうという点。標高が高くなると空気が薄くなるわけで、外気を吸い込むエンジン車はゴールに近づくに連れてパワーがダウンしてしまうのが問題となっています。

 

しかし、電気自動車にはこうした空気密度の変化によるパワーダウンという問題は発生しません。連続走行によるモーターやバッテリーの発熱などクリアしなければいけない課題はあるものの、標高に起因するパイクスピーク特有の問題点から解放されているのは大いにメリット。

 

そうした影響もあるのか、このイベントでは意外に電気自動車とエンジン車との差が少ないのです。

 

たとえば昨年(2010)のリザルトでいえばオーバーオールトップのモンスター田嶋選手が10分11秒5というタイムなのに対して、塙選手は13分17秒6。参考までにランサーエボリューションの改造マシンでは12〜13分というタイムですから、電気自動車だから遅いという印象はありません。

 

もちろん3分というタイム差はかんたんに縮まるものではありませんが、そう遠くないうちに電気自動車とエンジン車がパワーソースの違いを越えてトップ争いをするイベントになりそうな予感。そのためにも、この横浜ゴム&塙選手による電気自動車の進化からは目が離せないといえるでしょう。

 

こちらの映像は、昨年のパイクスピークでの勇姿を収めたもの。

http://www.youtube.com/watch?v=SaEbJrVTp3w

 

電気モーターならではの、キーンというジェット機のようなサウンドとスキール音のコンビネーションが、未来のモータースポーツを感じさせてくれます。

 

今年の活躍にも期待しましょう!

 

(山本晋也)

この記事の著者

山本晋也 近影

山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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