【TOKYO DRIFT】他チームを震撼させたGT-Rの本性

いやー、これはまずい。このままじゃまずい。

みんなそう考えたんじゃないでしょうか。それくらいTOKYO DRIFTでのTeam TOYO TIRES DRIFT TRUST RACINGのGT-Rの強さはショッキングでした。

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そもそも、ドリフト界というのはわりと保守的なんですね。データのない新規車種での参戦は大きなリスクを伴うと思われています。それは、レース業界のような自動車メーカーのサポートがいまのところはまだなく、またワンオフパーツをあまり使わずに、市販のパーツをメインにクルマづくりをしてきた歴史があるからでしょう。

だから、今季Team TOYO TIRES DRIFT TRUST RACINGがD1では初めてとなるニッサンGT-Rを投入し、川畑選手がそれに乗るということが決まったとき、どちらかといえば前途を心配する(というか、本心では手ごわいライバルがひとり減ったと喜ぶ)エントラントも多かったと思います。

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じっさい、前半戦はマイナートラブルも多く、また川畑選手の走りも安定感があるとはいいがたく、そのポテンシャルはつかみかねました。ときおり単走ですごい得点は出してくるものの、それは「パワーがあるからスピードは出るでしょ」くらいにしかとらえられていなかったかもしれません。

ところが10月18、19日に開催されたTOKYO DRIFTでは、D1開催コースのなかでももっとも重量級マシンに不利だと思われるお台場で、GT-Rが活躍してしまったのです。

第6戦は決勝で敗れたものの、どちらかといえば末永選手のミスに起因するもので、GT-Rの弱さが出たものではありませんでした。そして、それよりも衝撃的だったのは翌日のワールドチャンピオンズです。

じつはこのときまで、現在の最強マシンは斎藤選手があらたに製作したマークIIだと思われていました。1tちょっとまで軽量化したボディに、1000psのエンジンを積んだマークIIは、デビューした第5戦のときから、次元のちがうポテンシャルがあると認識されていました。ところが、このマークIIが川畑選手の乗るGT-Rに完敗したのです。川畑選手は、後追い時には、完璧にマークIIをとらえ、先行時にはじわじわとマークIIを引き離し、圧勝してみせました。重量では数百kg重いにもかかわらずです。

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そのあとに対戦した日比野選手、中村選手もノーミスどころかほぼパーフェクトな走り。しかし川畑選手のGT-Rには歯が立ちませんでした。それほどGT-Rは直線も速ければ、減速もでき、タイトコーナーのドリフトも速かったのです。そして、エキシビションマッチ「ワールドチャンピオンズ」優勝を果たしました。

GT-Rをベースにしたドリフトマシンはそう簡単ではないと思います。そもそも4WDをFR駆動に変更しなければいけないし。しかし、トラストには優れたエンジニアとアメリカのフォーミュラ・ドリフトを経験したメカニックがいました。そしてドライバーの川畑選手は、ドリフトの技術だけでなくパーツ開発等にも豊富な経験があるドライバーでした。両者が意欲的にテストを重ねた結果、ものすごいポテンシャルのマシンが誕生したのです。

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2015年ほかのチームはこのマシンを倒さなければいけません。いったいどんな知恵をしぼってくるのか、今季はいつになくシーズンオフも熱くなりそうです。

なおTOKYO DRIFT1日目となるD1GP第6戦は田中省己選手が単走優勝、末永正雄選手が総合優勝し、総合シリーズチャンピオンは高橋邦明選手が、単走シリーズチャンピオンは末永正雄選手が獲得しています。
https://clicccar.com/2014/10/19/273944/

※写真提供:D1コーポレーション

(まめ蔵)

この記事の著者

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まめ蔵

東京都下の農村(現在は住宅地に変わった)で生まれ育ったフリーライター。昭和40年代中盤生まれで『機動戦士ガンダム』、『キャプテン翼』ブームのまっただ中にいた世代にあたる。趣味はランニング、水泳、サッカー観戦、バイク。
好きな酒はビール(夏場)、日本酒(秋~春)、ワイン(洋食時)など。苦手な食べ物はほとんどなく、ゲテモノ以外はなんでもいける。所有する乗り物は普通乗用車、大型自動二輪車、原付二種バイク、シティサイクル、一輪車。得意ジャンルは、D1(ドリフト)、チューニングパーツ、極端な機械、サッカー、海外の動画、北多摩の文化など。
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