アメリカのバラク・オバマ大統領が降り立つ地で必ず待ちうけるのが、大統領専用車である「キャデラック・プレデンシャルリムジン」です。これまでの大統領専用車と異なるのは、既存のモデルがない…ということです。
装備や機能などは、トップシークレットにつき詳細は公開されていないものの、ロケット弾が命中しても壊れない防弾ボディ、厚過ぎて自然光を取り入れることができない防弾ガラス、銀行の大金庫のようなドア、化学兵器の攻撃を想定して外気を完全に遮断する空調システム、パンクしても走行可能なタイヤ、最先端の暗号化衛星通信システムなどが採用されています。つまり、クルマの機能を兼ね備えた“戦車”と言ってもいいモデルなのです。
エクステリアデザインは「キャデラックDTS」に似た印象を受けますが、完全なオリジナル。フロントライトなどは「キャデラック・エスカレード」の部品が流用されているなど、様々な部分にGMグループのアイテムが盛り込まれています。
ちなみにこのモデルは、アメリカでは主にダンプや宅配トラック(乗用タイプもラインナップする)として活躍している大型ピックアップトラック「GMCトップキック」のシャシーがベースとなっているのです。最近では映画「トランスフォーマー」に登場したモデルとしても知られています。
気になるパワートレインは「デュラマックス6600」と呼ばれるV8-6.6Lツインターボを搭載しています。それもガソリンではなくディーゼルというのがポイントです。OHV32バルブで電子制御コモンレール式高圧燃料噴射システムを採用しており、最高出力403ps/3000rpm、最大トルク106kgm/1800rpmのパフォーマンス。厳重な装甲によってトラック並みの8トン並みと言われる車両重量を軽々と加速(0→60マイル:15秒)させるようです。ちなみに燃費は2.8km/Lだそうです。
実は過去にイスラエルで軽油とガソリンと入れ間違って動かなくなる…というトラブルがあったようですが、それくらい「静粛性も高い」のでしょう。
ちなみにこのエンジンに「日本の血」が流れているのをご存じでしょうか。
実はディーゼルエンジンのリーディングカンパニーである「いすゞ」で開発されたユニットなのです。GMといすゞは2006年に資本提携は解消していますが、業務提携関係は維持されており、現在も小型ピックアップトラックの共同開発(3代目D-MAX)などを行なっているなど良好な関係を築いています。生産はGMグループのディーゼルエンジン北米のエンジン生産拠点である「ディーマックス(GMが60%、いすゞが40%出資)」で行なわれています。日本の技術はこんな所でも大きく活躍しているのです。
(大地颯人)