1997年4月1日、「福祉の充実」を名目に当時の橋本内閣が消費増税(3→5%)を敢行、僅かながら上向きかけていた景気は一気に急降下、深刻な不況に突入しました。
消費増税が国民の家計を直撃した結果、財布の紐が固くなり、タクシー業界は真っ先に影響を受けることに。
タクシーやハイヤー、観光バス等の労働組合で作る自交総連(全国自動車交通労働組合総連合会)の資料によれば、1996年まで増収が続いていたものの、1997年の消費増税に伴う運賃アップで、かつてない乗客の乗り控えが発生、増税後2年余りで営業収入が14%減少しています。
それに伴い、タクシー運転手の年収もそれまでの367万円から307万円まで急落(-16%)、2001年には300万円を切る状態に。
現在では更に年収が250万円程度まで下がっているようで、2014年4月に消費増税が行われると再び収入が急減して200万円レベルまで下降すると予測されています。
更に2015年時点で消費税が10%になれば営収減少に加えて、運賃に含まれる消費税を控除した上で賃金が計算される都合上、控除額も倍増し、深刻な影響が出る模様。
そもそもタクシー業界が苦境に陥った背景には1997年の消費増税に加えて2000年に実施された小泉改革による規制緩和が大きく寄与していると言います。
規制緩和法の成立に伴い、2002年に道路運送法が改正され、タクシー総量の受給調整規制が撤廃(自由化)されたことで、タクシーの台数が2007年には約27.4万台(+7%)まで増大。都市部で過当競争が起こり、乗客争奪戦に。
タクシー 1台当たりの売り上げが減少、運転手は夜間も長時間労働を強いられるようになり、キモとなる乗客輸送上での安全確保が危ぶまれる事態となります。
政府は2009年10月にようやく規制緩和の失敗を認め、「タクシー適正化・活性化法」(特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法)によりタクシー会社に3年以内に自主的に配車台数を減らすよう促します。
これにより、2011年には約25万台(2007年比-8.7%)まで減車されますが、事業者による自主的な減車や営業時間の制限だけでは大きな効果が上がりませんでした。
そうした中、毎日新聞によると自民、公明、民主3党がタクシーの台数制限を義務付ける「タクシーサービス向上法案」の秋の臨時国会成立に向けて合意したそうです。
運転手の「労働条件の改善」を目的としていますが、このタイミングで政府がいっそうの減車対策に乗り出したのは4月の消費増税を前にした、タクシー運転手の賃金現状維持への事前対策ともとれそうです。
新法案では特定地域の協議会とタクシー事業者に減車や営業時間の制限など輸送力の削減方法を盛り込んだ計画を国交相に提出するよう義務付け、これに事業者が応じない場合には営業停止や許可取り消しも盛り込んでいる模様。
また特定地域内への新規参入や増車も現在の認可制から期限付きで「禁止」に強化。
国交相が特定地域ごとに運賃の幅を定め、事業者はその範囲内で料金を決める新たな仕組みも盛り込んでいるそうです。
政府による規制でタクシー業者間での「抜け駆け」が封じ込められ、横並びでの減車が進むと期待される一方で、配車台数減が急激に進めば今度は逆に乗客側に不便を強いることになり、消費者軽視という批判を受ける可能性も。
減車目的は本来、需給バランスの適正化であるべき。今後の政府とタクシー業界のかけ引きが注目されます。
(資料出展 全国自動車交通労働組合総連合会)
■国土交通省 タクシー適正化・活性化法の施行について
http://www.mlit.go.jp/common/000050418.pdf
■全国自動車交通労働組合総連合会 Webサイト
http://www.jikosoren.jp/
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