スバルBRZとトヨタ86に搭載されるFA20型水平対向エンジンは、いわゆる新世代BOXERと呼ばれるもので、ボア×ストロークが86mm×86mmという数値にこだわって設計されたとも言われるスクエアストロークのエンジンです。
新世代BOXER第1弾はフォレスターに搭載されているFB20型エンジンですが、こちらはボアストロークが84mm×90mmとロングストロークタイプとなっており、これまでのBOXERエンジンより大幅に燃費性能が向上したといわれています。
水平対向エンジンは、低重心というメリットの代わりに、左右に幅を取るため物理的にロングストローク化が難しいとされてきました。
このため水平対向エンジンを搭載するスバル車は「上まで回るけど燃費が悪い」と言われ続けてきました。
実際、これまでの主力であったEJ20エンジンはボア・ストローク92mm×75mmのショートストロークエンジンであり、他のエンジンでもショートストロークが基本でした。
FAエンジン登場前に既に86mm×86mmのスクエアストロークの水平対向エンジンが存在したのをご存知ですか?
それは輸出仕様に搭載されるBOXER DIESELのEE20エンジン。
水平対向エンジンは、向き合うピストンが互いの振動を打ち消し合う事で振動を消す為バランサーシャフトが不要と言うのは意外と知られていますが、前途の通りストロークに限りがある点がデメリットとして挙げられ、水平対向ディーゼルエンジンは振動面では有利な物の、ロングストローク化が困難な事からBOXER DIESELは既存車種への搭載は無いのではという噂もありました。
しかし、ピストン高を抑え、シリンダーヘッドを削り、目一杯ストロークを取った結果86mm×86mmというスクエアストロークになり、ディーゼルエンジンに必要なストロークを稼ぐことに成功しました。
スクエアストローク化に成功したEE20エンジンは、バランサーシャフトが不要と言うメリットを活かし、フリクションロスを低減した事から滑らかな回転フィールと低燃費を実現し、市販車初となる水平対向ディーゼルとして注目が集まり、ディーゼルが主役のヨーロッパにおいて高評価のエンジンとなりました。
ストロークを増やす事は直列エンジンや、V型エンジンに比べ、直接車体幅に影響を及ぼしてしまう為、スバルのエンジニアは並々ならぬ努力をせねばならず、エンジンを共有する車種の多いスバル車では特に苦労が多い部分なのではと感じました。
(井元 貴幸)