■スバル独自の水平対向エンジンによる効果は大きい!
webやTV CFなどで目にする「雪なら、フォレスター。」というスバルの広告。
本当にフォレスターは雪に強いのか?ということを実感してみようと、氷上試乗会が開催される予定の長野県女神湖までドライブしました。
最初に謝っておきますが、残念なことに当日は湖も凍らず路面にもほとんど雪がないという悪?コンディション。
そこで、氷上試乗会を主催する日産の開発者に、アリアやエクストレイルに搭載されているe-4ORCEの特徴や、スバルの4WDについてどう考えているのかを聞いてみました。
まずは、スバルの4WDシステムについて紹介しましょう。スバルの4WDシステムを語る上で重要なワードが「シンメトリカルAWD」でしょう。
シンメトリカルAWDの特徴は、スバルの魂とも言える水平対向エンジンを核としたパワートレインが、左右対称・一直線にレイアウトされていることです。
このレイアウトは、四輪にバランス良く荷重をかけることができるため、タイヤの接地性をしっかりと確保できるのです。つまり、四輪に配分されたトルクを無駄なく発揮できるのです。
またシンメトリカルAWDは、重量物であるトランスミッションが車体の重心近くに配置可能です。この優れた重量バランスにより、コーナリングやブレーキング時の慣性モーメントが小さく、車体が揺れにくいので乗り心地への負荷も少なく、快適なドライブを楽しむことができます。
スバルのAWDシステムは、エンジン車では、アクティブトルクスプリットAWD、VTD-AWD、そしてDCCD式AWDの3種類。そしてBEVには前後独立モーター駆動式AWDの4種類を採用しています。
今回試乗したスバルフォレスターは、アクティブトルクスプリットAWDを搭載しています。
このAWDシステムは、ドライバーのスキルに関わらず、あらゆる走行状況においてAWDのメリットを最大件に引き出すことのできる安定性重視のシステムです。
フロント60:リア40のトルク配分を基本に、加速、登坂、旋回などの走行状態に合わせてリアルタイムにトルク配分をコントロールします。前輪がスリップを検知した際には、後輪へのトルクを増やして駆動力を確保できるように制御します。
また一部車種には、VDC(横滑り防止装置)からハンドル角、ヨーレート、横加速度信号などの車両情報をモニターすることで、より緻密なトルク配分を実現する新制御を採用しています。
VTD-AWD(不等&不変トルク配分電子制御AWD)は、WRX S4などに採用されており、センターデフによってトルクをフロント45:リア55に不等配分。高い走行安定性を維持しつつ、回頭性を高めることで、積極的でスポーティな走りを可能とするシステムです。
また、DCCD式AWDは現在、日本市場では搭載車はないですが、旧型のWRX STIに搭載していたシスデムです。フロント41:リア59を基本にトルクを不等配分します。遅れのないリニアな制御が可能なトルク感応機械式LSDと、緻密な制御が可能な電子制御LSDを組み込むことにより、より大きな駆動力を発揮して、意のままのドライビングを可能とするシステムです。
こうして見ると、スバルのガソリン車に搭載されているAWDシステムは、フロントとリアの駆動力配分を予め配分していることがわかります。最近、多くの車種が搭載しているパッシブ型の4WDは、スリップなどを検知した時に駆動力配分を最適化しますので、このタイプに比べるとスバルのAWDシステムは、悪路に対しての準備が万全といえるのかもしれません。
さらに、フォレスターには走破性と安心感を高める制御システムのX-MODEを搭載しています。X-MODEを作動させておくと、エンジン・モーター、トランスミッション、AWD、VDCを統合制御することで、四輪の駆動力やブレーキなどを適切にコントロールして、滑りやすい路面や荒れた路面でもスムーズに走行することが可能です。
そしてフォレスターでは路面を見て、モードを選択するだけの簡単操作で、様々な路面の道を安心して走行可能な2モードタイプを採用しています。
このスバルのAWDシステムの概要がわかったところで、日産のe-4ORCE開発者にスバルのAWDの実力とe-4ORCEについて聞いてみました。
●「日産のe-4ORCE」は常にアクティブに駆動力をコントロールしドライバーのプレッシャーを取り除く
雪道のような滑りやすい路面において大事なポイントの一つは、いかに四つのタイヤにトラクションを上手に掛けることだと思います。
スバル車は基本的に制御を入れなくても、キチンと四輪にトルク配分が行えるという車の素性がよくできているというのがポイントではないでしょうか。
スバル独自の水平対向エンジンをコアとしたシンメトリカルAWDを採用することで、重心も低く、バランスも良くできてイン荷重も少なく取れるというメリットがあります。
また、スバル車の一部は、希有な存在というか現在でもセンターデフ方式の4WDを採用しています。
この方式は、前後のタイヤに常に一定のトルクを与えておいて制御するので、応答性が早いのがメリットです。その一方で、トルクを与えているので燃費が悪くなるというデメリットもあります。
昨今の環境問題や燃費性能への影響を考えると、必要のない部分をカットするようになっています。
そこで生まれたのが、パッシブ型AWDです。これは滑ったら4つのタイヤにトルクを配分しようというタイプで、現在はこのシステムが主流になっています。あのアウディでさえ、途中でカットする方式を採用しています。
エクストレイルやアリアに搭載しているe-4ORCEは、前後独立したモーターで常にアクティブに駆動力を制御しているのが特徴です。つまり、ドライバーの操作などによるフィードバックによる応答ではなく、ハンドルを切った時、アクセルやブレーキを踏んだときなど、電気の応答で前後どのような駆動配分が良いのかというのを常にアクティブに動かしているのです。
フィードバックが入ると、どうしても挙動が変わってしまうのです。e-4ORCEはこの挙動の変化を起こさずに、この舵の入れ方をしたらこういう動きをするという、期待通りの挙動を作れるのです。
簡単に言うと、ガソリン車の4WDはトルクを動かすだけでしたが、e-4ORCEはトルクを動かすだけでなく、動かす瞬間に路面が氷だなと認識すると、全体をセーブすることができるのです。そういう意味では、直線でもカーブでも常に最もグリップが良い状態をキープできるように制御していると言えます。
何よりe-4ORCEはドライバーに対してのホスピタリティが高いと思います。さらにeペダルを使用すれば、上手く減速もしてくれるので、オーバースピードのリスクを減らしてくれるので、どんな路面状況でも安定感と安心感をドライバーに提供してくれます。e-4ORCEを搭載している車は4つのタイヤに頭脳があると言えるかもしれません。
e-4ORCEの開発者に話を聞いた後に、e-4ORCEを搭載したエクストレイルとフォレスターで同じルートを走行してみました。
エクストレイルの時のほうが凍結している場所が多かったのですが、加減速、ステアリング操作を行う際にスリップしたりヒヤリとしたりするシーンはありませんでした。
一方のフォレスターもヒヤリというシーンはありませんでしたが、ペダルやハンドル操作にわずかながら慎重さを求められました。
スバル車のAWDシステムの高性能さは実感できましたが、日産のe-4ORCEはどんな人が運転しても安心できるホスピタリティの高さを感じることができました。
(文・萩原 文博/写真・日産自動車、萩原 文博)
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