スバルWRCマシンを個人所有。究極の「車道楽」に執念でたどり着く

■本物のスバル「グループA」参戦車両がここに蘇る!

●サインツが乗ったインプレッサの実車が!

故障で修理中の白いマシンも含めると、3台のグループA車両
故障で修理中の白いマシンも含めると、3台のグループA車両

スバル車コレクターのAさん(仮名)は、ネオクラシック車両に造詣が深く、なかでも初代インプレッサ(GC8)に、ことさらの思い入れがあるそうです。

市場での車両価格が異常高騰しているあの限定車や、レアなコンプリートカー、希少なボディカラーなど、そのコレクションは多岐に渡りますが、まさに「GC8マニア」の究極の姿とも言える、WRCのグループAマシン所有という夢を具現化しているのです!

すべて、プロドライブの地元であるイギリスから流出してきた車両
すべて、プロドライブの地元であるイギリスから流出してきた車両

“先駆者”として、すでに日本でかつてのWRC車両を個人輸入し、国内でナンバー登録まで行ったという知り合いから、「AさんもGC8好きだったら、グループA車両1台どうですか?」と誘われた時点では、「いくらなんでも無理ですよ」と断ったそう。

ですが、「一緒に本物のラリーカーを所有して、イベントとかで並べましょうよ!」と再三口説かれ、グラついてしまったのが発端だと言います。

「徐々にグループA車両もいいかな、と思い始めて。それまでにラリーレプリカは所有したこともあったのですが、本物のラリー車かぁ。スバル好きとして、新たなジャンルを開拓するのも悪くないなと」。

カラーリングもニュージーランドのものを再現しています
カラーリングもニュージーランドのものを再現しています

そんなこんなでやってきた、初めてのグループA車両は白いボディのインプレッサで、実際の戦績は不明(※現在、そのマシンは修理中)。リアルを求めるようになると「やっぱりWRブルーのマシンがいいよな。オールペンするしかないかな〜」と思っていた矢先に、「海外で、いい出物がありましたよ! しかもブルーですよ」という悪魔のささやきが…。

それがこの車両で、ヒストリーとしては94年のニュージーランド・ラリーをエースドライバーのカルロス・サインツ(※スペイン出身のドライバー。94、95年のWRCにおいてインプレッサで活躍)で走った実績が残っているそう。現在もすこぶる各機関の調子は良好で、トラブルなく走れているとか。

●バタネンがWRCアクロポリスに出場のレガシィも!

そして、SWRT(スバル・ワールド・ラリー・チーム)の歴史を語るうえで、初勝利を飾ったマシンとして欠かすことのできない存在である初代レガシィ(BC5)もコレクションに加わったのです。

相当なポッサムファンが前オーナーで、来たときのままの仕様
相当なポッサムファンが前オーナーで、来たときのままの仕様

「BCレガシィのグループA車両って、国内で全然見たことがないけど、どうなんだろうね?」と話していたところ、「じゃあ探してみましょう!」と、その知り合いが動き出します。

でも、GCインプレッサに比べると、25台ほどしか存在していないはずのBCレガシィのグループA車両。「出てくるわけないと思ってたら、執念で見つけてきたんです(笑)」

それがこのイエローのレガシィ。ポッサム・ボーン(※ニュージーランド出身のドライバー。スバル車との関係も深い)のファンが所有していたことから、ボディが「ポッサム仕様」になっていますが、その車のヒストリーを調べると、アリ・バタネン(※フィンランド出身のドライバー。81年のWRCチャンピオン)が93年のアクロポリスラリーに出場したという、れっきとしたWRCマシンだったのです。

●マクレーのインプレッサまで!

実際に走行シーンも見せていただき、感動でした
実際に走行シーンも見せていただき、感動でした

修理中のインプレッサを含めて3台ですが、なんと2024年の春頃にもう1台、あのコリン・マクレーが乗ったというインプレッサもやってくるので、合わせて4台体制。

グループA車両ならではの轟音が耳をつんざくのです
グループA車両ならではの轟音が耳をつんざくのです

『WRCマシンを持つということは、車を買うというだけじゃなくて、その背景やヒストリーも含めて所有するというところにロマンがあるんです。たとえ成績はポディウムに立ってなくても、完走できていなくてもいいんです。世界選手権であるWRCという最高峰の舞台で戦った、そしてあのドライバーが乗った、という歴史を受け継ぐんです』

車両を手配してくれたAさんの知人が残すこの格言に、Aさんはいつも後押しされているそうです。

(文・写真:TOKYO CIAO MEDIA)