スバル「レオーネ」デビュー。シンメトリカルAWD(水平対向エンジン+4WD)を初めて採用したスバルブランドの原点【今日は何の日?10月7日】

■スバル初のスタイリッシュクーペ、乗用車初の4WDモデルも追加

1971年にデビューした初代スバルレオーネ
1971年にデビューした初代スバルレオーネ

1971(昭和46)年10月7日、富士重工業(現、スバル)から「スバル1000」の後継車「レオーネ」がデビューしました。

「クーペ1400」に始まり、その後セダン、スーパーツーリング、翌年には4WDを搭載した「レオーネエステートバン」、そして1975年には乗用車初の4WDモデルも登場し、スバルの主力モデルへと成長したのです。


●初めて水平対向エンジンを搭載したFF小型乗用車スバル1000

1966年、国民的な人気を獲得した軽乗用車「スバル360」に続いて、スバル初の小型乗用車「スバル1000」がデビューしました。

1966年にデビューしたスバル1000、スバル初の小型車
1966年にデビューしたスバル1000、スバル初の小型車

スタイリングは、ファストバック風の4ドアセダンですが、最大の特徴は現在もスバルブランドのコア技術である、水平対向エンジンを初めて採用したこと。駆動方式はスバル360のRRから一転して、当時としては画期的なFFレイアウトを採用して、小型車としては広い室内空間を確保しました。

パワートレインは、1.0L水平対向4気筒OHVエンジンと4MTの組み合わせで、最高速度は150km/hを記録。そのほかにも、4輪独立懸架やブレーキをドライブシャフトのデフ側に置くインポート・ブレーキ、冷却性能を向上したデュアルラジエターなど、先進技術満載でした。

ただし、スバル1000が発売された1966年は、トヨタ「カローラ」と日産自動車「サニー」がデビューした大衆車元年と呼ばれた年でもあり、カローラとサニーの熾烈な販売合戦の陰で、スバル1000の販売は苦戦しました。

●スタイリッシュなレオーネはスバルの主力モデルに成長

スバル1000の後を継いだレオーネは、最初にクーペ1400がデビューしました。

1972年にデビューしたレオーネ4WDエステートバン
1972年にデビューしたレオーネ4WDエステートバン

流麗なロングノーズとサッシュレスのドア、カットインのリアコンビランプが特徴でした。パワートレインは、1.4L直4 水平対向エンジンと4速MTの組み合わせ、駆動方式はFFを踏襲し、標準仕様は73.5万円で販売されました。ちなみに当時は、大卒の初任給が4.6万円(現在は23万円)程度の時代でした。

1975年乗用車初の4WDを搭載したレオーネ
1975年乗用車初の4WDを搭載したレオーネ

翌1972年には、国産初のフルオープン・サッシュレスドアを採用した4ドアセダンと2ドアセダンとスーパーツーリングが投入。同じく1972年には、世界初のジープタイプでない量産4WDの商用車エステートバン、さらに1975年にマイナーチェンジでセダンに4WDモデルを設定し、世界初となる4WD乗用車が誕生しました。

ここに、今もスバルブランドの象徴である“水平対向エンジン+4WD”のシンメトリカルAWDが完成したのです。

レオーネは、多彩なモデル展開によって比較的地味だったスバルのイメージを一新、スバルの主力モデルへと成長しました。

●スバルブランドを支えるシンメトリカルAWD

スバル1000に搭載された水平対向エンジン(EA52型)
スバル1000に搭載された水平対向エンジン(EA52型)

シンメトリカルAWDは、低重心の水平対向エンジンを縦置きに搭載してパワートレインが一直線に、左右対称に配置できるため、以下のようなメリットが得られます。

・優れた悪路走破性と高速安定性

左右対称なので4輪にバランスよく荷重がかかるため、車体が揺れにくく、安定したタイヤ接地性を確保。これにより、4輪駆動のポテンシャルを最大限に発揮でき、ダートや雪路など悪路での高い走破性、さらに雨天時や高速道路でも安定した走りができます。

シンメトリカルAWDのイメージ
シンメトリカルAWDのイメージ

・軽快なハンドリング性能

エンジンが縦置きなので、重量のあるトランスミッションを車体の重心近くに配置可能。これにより慣性モーメントが小さくなるため、車体が振られることが少なく、コーナリング時やブレーキ時に軽快なハンドリングが楽しめます。


現在もその卓越した走りで、多くのファンを夢中にさせているスバル独自のシンメトリカルAWDは、50年も前のレオーネエステートバンから始まりました。これは同時に、唯一無二のスバルブランドの始まりでもあったのです。

毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれません。

Mr.ソラン

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Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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