ホンダ「トゥデイ」デビュー。ライフ以来、11年ぶりにホンダの軽自動車が54.8万~67万円で復活【今日は何の日?9月10日】

■復活したホンダの軽はボンネットバンのトゥデイ

1985年発売の軽ボンネットバンながらスタイリッシュなトゥデイ
1985年発売の軽ボンネットバンながらスタイリッシュなトゥデイ

1985(昭和60)年9月10日、「ライフ」の生産中止以降、軽自動車の生産を中断していたホンダが、11年ぶりに軽自動車の「トゥディ」を発表。発売は翌日から始まりました。

トゥディは、乗用車のようなスタイルの商用車で、当時1983年にスズキ「アルト」が開拓した軽自動車のスタイル「ボンネットバン」と呼ばれるようになっていくジャンルの軽自動車です。


●シビックが世界的にヒットしたため軽自動車の生産を一時中断

ホンダの軽自動車は、1967年にデビューした「N360」に始まりました。軽自動車の常識を覆す低価格と高性能を実現したN360は、それまで10年間トップを独走していた「スバル360」から首位を奪い取り、圧倒的な人気を獲得したのです。

1971年にデビューした初代ライフ。人気はあったが、4年の短命に終わる。
1971年にデビューした初代ライフ。人気はあったが、4年の短命に終わる

その後、1971年に本格的な軽自動車を目指した「ライフ」が登場。スタイリッシュなデザインと優れた性能、水冷エンジンへ変更して静かで広々した室内空間を実現したライフは、人気モデルとなりました。

1972年にデビューして大ヒットした初代シビック
1972年にデビューして大ヒットした初代シビック

ところが、ホンダは1974年に軽自動車の生産から一時撤退することを英断します。それは、1972年に登場した「シビック」がマスキー法をクリアしたCVCCエンジンとともに世界的な大ヒットモデルとなり、生産・開発が間に合わなくなったためでした。軽自動車ではなく、収益の大きい小型車を優先したのです。

●11年ぶり復活した軽自動車トゥデイは商用車のボンネットバン

1979年にデビューしたアルト。軽ボンネットバンという新しいコンセプトを開拓
1979年にデビューしたアルト。軽ボンネットバンという新しいコンセプトを開拓

ホンダとして11年ぶりに復活したトゥデイは、当時一大ブームとなっていた商用車の軽ボンネットバンでした。

ボンネットバンとは、軽商用車でありながら乗用車のようなスタイルの車のこと。当時、商用車にすることのメリットとして、物品税が非課税となるので、車両価格が下げられることがあったのです。

トゥデイは、ホンダの「M・M思想(人のためのスペースは最大に、メカニズムは最小に)」をコンセプトに開発されました。全高は低く、軽としてはロングホイールベースでワイドトレッド、タイヤは可能な限り4隅に配置して、広い室内空間を確保しているのが特徴です。

商用車なので十分な荷室あ確保されているトゥデイ
商用車なので十分な荷室あ確保されているトゥデイ

外観は、愛らしい丸いヘッドライトを組み込んだ大胆なスラント&ショートノーズのフォルムを採用。パワートレインは、550cc2気筒SOHCエンジンと、4速MTおよび3速ATの組み合わせ、駆動方式は基本FFですが、後に4WDも用意されました。

F(54.8万円)、M(62万円)、最高グレードのG(67万円)の3つのグレードがあり、好調な販売を記録。ちなみに当時の大卒の初任給は、14万円(現在は約23万円)程度でした。

●背高ノッポ「シティ」とは対照的だった車高の低いトゥデイ

1981年に背高ノッポの愛称で大ヒットした小型車「シティ」は、背の低い車がカッコいいという価値観を打破して、市場に衝撃を与えました。そして、ホンダが次に投入したのが、車高の低いペッタンコな軽自動車トゥデイでした。

1981年発売の初代シティ、「トールボーイ」と呼ばれて大ヒット
1981年発売の初代シティ、「トールボーイ」と呼ばれて大ヒット

当時の軽は、小さなボディでもできるだけ室内空間を確保するために車高を高くするのが一般的でしたが、トウディの発想は他車とは異なる奇抜なものでした。実際にトゥデイの車高は、スズキ「アルト」やダイハツ「ミラ」よりも10cm近くも低い1315mmだったのです。

当時の軽にはない、車高が低く、ヒップポイントの低いスポーティな軽として、ファッション性やスポーティさを求める若者や女性から特に人気を獲得しました。


トゥデイは、シティと真逆のコンセプトですが、基本であるファッショナブルでスポーティなイメージは共通でした。この頃からホンダは、背高ノッポのシティとともに「若い」というホンダのブランドイメージを築いていたのです。

毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれません。

Mr.ソラン

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Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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