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■ミドルクラスミニバンで「走って楽しい」はどれ?
トヨタ・ノア、ホンダ・ステップワゴン、日産セレナの3台を、3人のレビュアーが様々な視点からチェックする比較検証企画第2弾。デザイン編に続く今回のテーマは、気になる「走り」!
車高が高く箱形のミニバンで、良質な走りを実現するには、ひと工夫もふた工夫も必要です。日本を代表するミドルクラスミニバンの3台は、一体乗ったらどんな印象をもたらしてくれるのでしょうか。
自動車ジャーナリスト、レーシングドライバー、運転大好きなモデルという個性派揃いの3人が、三者三様の率直な感想をリポートします。
●トヨタ・ノアの走り
・工藤貴弘「コーナリングの爽快感はライバル中トップ!」
ノアはライバルの中で唯一、ハイブリッドモデルでも4WDが選べます。今回の試乗車がそれだったのですが、驚いたのは曲がり方の気持ちよさ。滑りやすい路面だけでなく、舗装路においても後輪でしっかりトルクを発生するから、後輪駆動車のように気持ちよく曲がるんですよ。
ハイブリッドの4WDモデルに限ってですが、コーナリングの爽快感はライバルの中でトップですね。接地感もライバルより高いし。ただ、パワートレインの洗練度とアクセルを踏む気持ちよさはライバルのハイブリッド未満。燃費はいいのですが。
・井出有治「悪いところが思いつかない」
良くも悪くも、ロール感も少なく、普通に運転できるミニバンっていうのが第一印象。発進時のモーターアシストは街中渋滞でも使いやすいので、文句なく良いですよね。フロントガラスに映るヘッドアップディスプレイ、コレ見やすくていいです。投影される位置が高さ的にも最適で、視線を動かさずに確認できるので便利。『普通』っていいことなのかも。悪いところが思いつかないくらい気にならないから。
最近のトヨタ車で良く感じるんですけど、10年前くらいからトヨタの足の味付けって変わりましたよね。昔はフワッフワで船に乗っているような足だったんだけど、今のはどの車種に乗っても、腰があり過ぎるくらいにしっかりしているんです。フワフワしてないのは良いけど、逆にちょっとファミリーカーは硬い感じもする。
あ、もうひとつ。ウインカーを出したときの“カッチッカッチッ…”っていう音がな~んか気になっちゃった。軽いというかなんというか、オモチャみたいというか。 音も結構デカいし。あともうひとつ。ステアリングが、真っ直ぐ走っていてもうっすら手応えがあるのは良いけど、そこのところの反応が変に良すぎるんです。そのせいで、微妙に首に力を入れていないとフラフラ持っていかれるくらいに反応がいい。もうちょいラフでもいいカモ。
・久保まい「3車の中で1番癖がなくスムーズ」
癖がない走りで、ウインカーなども軽く操作性がよかったです。また、ヘッドアップディスプレイも見やすく、運転中にメーターを確認するための目線の動きを減らしてくれるのが、安全につながるので良かったです。フロントガラス越しにスピードを確認できるのはとてもいいですね♪
総合的な感想としては、3車種の中で1番癖がなくスムーズで走りやすく、中の空間も狭いと感じることもなく万人にうける車なのかな。
●ホンダ・ステップワゴンの走り
・工藤貴弘「車幅感覚がつかみやすく運転しやすい」
運転しはじめてすぐに感じたのは、ボンネットの端がよく見えて車幅感覚がつかみやすいこと。「運転しやすいミニバンを選びたい!」というのなら大切なポイントですね。ハイブリッドモデル同士で比べての加速の爽快感は、“ノア以上、セレナ未満”。
ノアに比べると滑らかかつ軽快だけど、セレナほどの気持ちよさはないという感じです。ただ、リニアにパワーが立ち上がる感じは、ガソリン車に比べると圧倒的に爽快ですね。
意外だったのは、ハンドルの操舵感がライバルより重めなこと。理由はよくわかりませんが、どうしてなのでしょう?
・井出有治「普通に流して走るならコレが一番」
ステップワゴンが3台中で1番乗りやすいかな。走り出しもモーターアシストがしっかり効いているからスムーズだし、普通に走っていても段差乗り越え時でも、変なゴツゴツ感もないし。昔のホンダ車のこの手の車って、足が硬い柔らかいっていうのではなく、スッカスカで安っぽかったんですけど、今のホンダ車の足はしっかり感もあって凄く良くなっていますね。
それに、タイヤのパターンノイズも少なくていいです。これ、乗る前はノアのほうが静かなのかな?と思ったけど、実際に試乗したらステップワゴンのほうが静か。意外でした。
今日試乗したのが、トラック多めな都内の一般道ってことで、コーナリングがどうの、高速域の伸びはどう…なんかはまったく分かんないけど、普通に流して走るテイではステップワゴンが一番かな。
・久保まい「ダッシュボードが平らで見晴らしも◎」
今回3台とも初めて運転する車種だったのですが、個人的に1番運転がしやすかったのはステップワゴンでした。ダッシュボードが平面なので見晴らしも◎。ウインカーなどのレバーも程よくかたく、引っ掛かりがあるので、操作しやすかったです。
欲をいえば、ノアのようにヘッドアップディスプレイがあればもっといいな。ファミリー向けにも、もちろんおすすめですし、オットマンや2列目のシートヒーターも標準装備ということで、上質な乗り心地だけじゃなくて、使い勝手に配慮された装備がいいなとも思いました。
●日産セレナの走り
・工藤貴弘「加速の気持ち良さならコレがイチオシ」
セレナe-POWERの加速感はもうサイコー! モーター駆動車らしい滑らかさや軽快感があるのに加えて、アクセルを踏み込んだ時の伸び感とか盛り上がりがあるのがステキすぎます。
実のところ、滑らかさとか軽快感はステップワゴンのe:HEVにもある(ノアにはあんまりない)けれど、伸び感とか盛り上がりはセレナがリードですね。
というわけで、気持ちいい加速をしたいというなら、セレナe-POWERがイチオシですね。あと、セレナは新型になってハンドリングと旋回時の車体の安定感が大幅に引き上げられたのも実感しました。ダブルピニオンのパワステによる澄んだステアフィールも爽快です。
・井出有治「新型には乗りたくなかった(涙)」
なんといっても、セレナのe-ペダルやプロパイロットは中長距離の楽々ドライブには欠かせないシステム。特にプロパイロットは、旧型に比べて物凄く進化しているので、旧型には戻れないくらい賢くなっています(だから新型には乗りたくなかった…涙)。
タイヤは、ステップワゴンとセレナは同じブリヂストンを履いていたけど(ノアはTOYO)、セレナが一番車とのマッチングがいいような感じ。それがハンドリングにも活きていて、ロールセンターとかの設定にも合っているんだと思います。
あ、ステアリングはちゃんと持っていないと怒られますねw! でもその作動も雑じゃなく、自然な感じ。左右に振ってもロール感も少ないし。セレナ…やっぱいいな、新型!
・久保まい「ちょっと気になったのがウインカーの操作性」
走行性はスムーズで、アクセルペダルを離した時にかかる、エンジンブレーキの利きが1番良かったです。ヘッドアップディスプレイも装備されていたのですが、スピード表示が小さかったので、ノアのほうが見やすいなと思いました。
最後に気になったのが、ウインカーです。右左折時には自動的にウインカーが戻るので気にならなかったのですが、車線変更等の時に、ウインカーを出して戻す操作が、慣れないのもあったと思うのですが、苦戦しました。ウインカーを戻すときって、中央の引っ掛かりのようなものが感覚的にあると思うのですが、セレナはその引っ掛かりがほぼなく、戻しすぎて逆方向のウインカーを出してしまうことが何回かありました(泣)。
例えば、追い越し車線へ車線変更する際に右ウインカーを出して、車線変更したら、戻すときに左ウインカーを出してしまう…といった感じです。後続車からしたら、一瞬あれ?と思わせてしまうような操作で申し訳なかったのですが、これは慣れですかね~(汗)。
【レビュアー紹介】
工藤 貴弘:若手フレッシュ自動車ライターがいつの間にか大御所のひとりに。大雑把な部分から重箱の隅まで、走りの車種からのんびり車種まで、あらゆる知識と興味が豊富。
井出 有治:元F1ドライバーにして現在一児の父。子どもが生まれるまではミニバンに興味なかったものの、もっか愛車セレナを子守り仕様へと改装するのに夢中。
久保 まい:車、タイヤへの愛があふれる長身モデル。運転大好きで、愛車のミッドシップスポーツカーが修理不能になって、次の購入車には再び同じ車種のMTを選択!
●トヨタ・ノア ハイブリッド S-Z E-Four 主要諸元
全長×全幅×全高:4695×1730×1925mm
ホイールベース:2850mm
車両重量:1710kg
エンジン:直列4気筒
総排気量:1797cc
最高出力:98ps(72kW)/5200rpm
最大トルク:142Nm/3600rpm
フロントモーター最高出力:95ps(70kW)
フロントモーター最大トルク:185Nm
リヤモーター最高出力:41ps(30kW)
リヤモーター最大トルク:84Nm
駆動方式:4WD
トランスミッション:電気式無段変速機
サスペンション:前マクファーソンストラット 後トーションビーム
タイヤ:前後205/60R16
車両本体価格:389万円
●ホンダ・ステップワゴン e:HEV スパーダ プレミアムライン 主要諸元
全長×全幅×全高:4830×1750×1845mm
ホイールベース:2890mm
車両重量:1840kg
エンジン:直列4気筒
総排気量:1993cc
最高出力:145ps(107kW)/6200rpm
最大トルク:175Nm/3500rpm
モーター最高出力:184ps(135kW)
モーター最大トルク:315Nm
駆動方式:FWD
トランスミッション:電気式無段変速機
サスペンション:前マクファーソンストラット 後トーションビーム
タイヤ:前後205/55R17
車両本体価格:391万2700円
●日産セレナ e-POWER ルキシオン 主要諸元
全長×全幅×全高:4765×1715×1885mm
ホイールベース:2870mm
車両重量:1850kg
エンジン:直列3気筒
総排気量:1433cc
最高出力:98ps(72kW)/5600rpm
最大トルク:123Nm/5600rpm
モーター最高出力:163ps(120kW)
モーター最大トルク:315Nm
駆動方式:FWD
サスペンション:前ストラット 後トーションビーム
タイヤ:前後205/65R16
車両本体価格:479万8200円
(写真:萩原 文博/まとめ:クリッカー編集部)