富士SUPER TEC24時間レースのST-5クラスはマツダしか勝てない?【スーパー耐久2023】

■2023年の富士24時間レースのST-5クラスはマツダが表彰台を独占

2023年5月27日(土)15時にスタート、翌28日(日)15時にチェッカーフラッグという、現在の国内最長レースであるENEOS スーパー耐久シリーズ2023 第2戦 NAPAC 富士SUPER TEC 24時間レース。

富士SUPER TEC24時間レースの総合優勝トロフィー
富士SUPER TEC24時間レースの総合優勝トロフィー

オフィシャルタイヤサプライヤーがハンコックから急遽ブリヂストンに変更となり、また世界初の液体水素燃料を使ったレーシングマシン「水素カローラ」ことORC ROOKIE GR Corolla H2 conceptが走るなど、様々に話題を呼んだ富士SUPER TEC 24時間レース。

ST-5クラス表彰式
ST-5クラス表彰式

この富士SUPER TEC 24時間レースの参戦クラスで一番排気量の少ないST-5クラスにはマツダ、トヨタ、ホンダのコンパクトカーが参戦していますが、絶対的な強さを誇っているのがマツダのマシンです。

2023年2位のOHLINS Roadster NATS
2023年2位のOHLINS Roadster NATS

1500ccクラスで競われるST-5クラスですが、マツダにはND型ロードスターという1500ccクラスのオープンスポーツカーがあり、ST-5クラスでは最多の5台エントリーとなっているので、他のFF勢に比べて有利だと思われるかもしれません。

2023年3位のodula TONE 制動屋ロードスター
2023年3位のodula TONE 制動屋ロードスター

今回の富士SUPER TEC 24時間レースでは表彰台にND型ロードスターが2台入り、この型のマシンの層の厚さを見せつけましたが、優勝はロードスターではなくディーゼルエンジンでFFのデミオ、DIXCELアラゴスタNOPROデミオだったのです。

ピットロードをパレードランする優勝のDIXCELアラゴスタNOPROデミオ
ピットロードをパレードランする優勝のDIXCELアラゴスタNOPROデミオ

DIXCELアラゴスタNOPROデミオは3時間経過のあたりからトップを争うようになり、6時間経過あたりのナイトセッション序盤では4号車 THE BRIDE FITや65号車 odula TONE 制動屋ロードスターと同一周回でバトルを展開します。

その後、ナイトセッションが進むにつれ燃費の良さがピット回数に表れてきたようで、未明の午前3時、つまり12時間経過後には2位に1LAP差をつけてのトップとなります。

2023年優勝のDIXCELアラゴスタNOPROデミオ
2023年優勝のDIXCELアラゴスタNOPROデミオ

3時30分頃にダンロップコーナー進入でST-4クラスのマシンにアクシデントがあり、セーフティーカーからの赤旗中断となり、最後尾方面からも間を詰められていくかと思いきや、5時となった時点でも周回差があったために順位を脅かされるような状態にはならず、最後までトップで駆け抜けていきました。

2023年優勝のDIXCELアラゴスタNOPROデミオ
2023年優勝のDIXCELアラゴスタNOPROデミオ

DIXCELアラゴスタNOPROデミオはディーゼルエンジンの強みで燃費がいいことは間違いありませんが、ホンダFIT勢と並ぶ速さを身に着けた今の状態では特筆するほどではないかもしれません。

2023年優勝のDIXCELアラゴスタNOPROデミオ
2023年優勝のDIXCELアラゴスタNOPROデミオ

その代わりにディーゼル特有の中低速のトルクは健在で、ダンロップコーナーからGR Supraコーナー、最終パナソニックコーナーを経てストレートへ向かい延々と上り坂となる第3セクターでは、全く速度が落ちないという強みが効いているようです。

ストレートエンドではエンジン回転の伸びるガソリンエンジンに分がありますが、意外とタイムが稼ぎづらい第3セクターを攻略しやすいというデミオディーゼルの特殊事情は大きいかもしれません。

優勝を喜ぶTEAM NOPROのレースクイーン
優勝を喜ぶTEAM NOPROのレースクイーン

今回の富士SUPER TEC 24時間レースでは強みを生かし切ったDIXCELアラゴスタNOPROデミオに層の厚いNDロードスターが相まって、マツダの表彰台独占となったのです。


●スーパー耐久富士24時間レース過去5回のST-5優勝車は全てマツダ

スーパー耐久の富士24時間レースは2018年から始まりました。

2018年優勝の村上モータース
2018年優勝の村上モータース

その2018年にST-5クラスで優勝したのは村上モータースのNDロードスター。2019年も優勝して村上モータースは2連覇を果たします。

2020年優勝のTEAM NOPRO
2020年優勝のTEAM NOPRO

その翌年、2020年はコロナ禍での開催となり、富士24時間レースはスーパー耐久の開幕戦として9月に開催されます。このレースを優勝したのはTEAM NOPROのデミオディーゼルです。

2021年優勝のOver Drive
2021年優勝のOver Drive

コロナ禍が続く2021年はスケジュール自体は例年に戻り6月開催となった富士24時間レースでした。このレースを制したのがOver DriveのNDロードスター。

2022年優勝のTEAM NOPRO
2022年優勝のTEAM NOPRO

そして昨年、2022年にST-5クラスを制したのがTEAM NOPROのデミオディーゼルで、2022年と2023年で2連覇を果たしています。デミオディーゼルは今回の富士24時間レースを含めると、勝率5割という強さを見せています。

参加台数としてはNDロードスターに次ぐ台数となる3代目FITに、2023年は4代目ホンダFITも登場、1.5リッターの「素の」ヤリスも参戦。参戦台数も多く車種もバラエティに富んでいますが、ご覧いただいた通り、こと富士24時間レースに関して言えばマツダの一強と言える状態が進んでいます。

2023年のスーパー耐久ST-5クラスは総勢12台で戦われています。FITもNDロードスターもコースによっては大きな強みを見せてきます。

所作がキレキレとSNSで評判の給油マン
所作がキレキレとSNSで評判の給油マン

2023年シーズンでは最終戦が富士5時間レースになります。そこではマツダ車が再び優勝するのか?ホンダやトヨタがその座を奪うのか?

また、富士以外のサーキットではどんなマシンが強みを見せるのか、にも注目していきたいと思います。

(写真・文:松永 和浩

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この記事の著者

松永 和浩 近影

松永 和浩

1966年丙午生まれ。東京都出身。大学では教育学部なのに電機関連会社で電気工事の現場監督や電気自動車用充電インフラの開発などを担当する会社員から紆余曲折を経て、自動車メディアでライターやフォトグラファーとして活動することになって現在に至ります。
3年に2台のペースで中古車を買い替える中古車マニア。中古車をいかに安く手に入れ、手間をかけずに長く乗るかということばかり考えています。
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