ヤマハ発動機が開発を進める水素エンジンやエンジンとモーターの発電ユニット、ハイパーEV向けのモーターの現在地【人とくるまのテクノロジー展2023】

■エンジンの可能性と電動化対応を進める

「人とくるまのテクノロジー展2023」は、2023年5月24日~26日にパシフィコ横浜で開催され、7月5日から7日まで名古屋でも開催されます。さらに、オンラインも同様に2回開催されています(横浜はオンラインも6月7日[水]で終了)。

ヤマハ発動機 AM開発統括部の原 隆統括部長がプレゼン
ヤマハ発動機 AM開発統括部の原 隆統括部長がプレゼン

以前お伝えしたように、ヤマハ発動機は、クルマ向け製品、技術のコンセプトブランドである「αlive」を横浜会場で出展しました。

「αlive」は、エンジンやサスペンションなどクルマ向けの技術コンセプトで、同社が開発を進めている最新技術の一端を知ることができます。

ブースのプレゼンテーションでは「αlive」についてAM開発統括部の原 隆統括部長がコンセプトブランドと紹介。

同社が大切にしてきた開発思想や提供価値を、言葉やデザインで表現されています。今回は、カーボンニュートラルへ向かう家庭のエネルギーミックスのコンセプトや技術をメインテーマとして展示されていました。

水素エンジンのコンセプト「αlive H2E」
水素エンジンのコンセプト「αlive H2E」

水素エンジンの「αlive H2E」は、CO2を排出しない水素エンジンで、EV以外のひとつの選択肢として提案。とくに、エンジンを活かすことで、従来の設備やサプライチェーンを活用しエンジンを残せる手段としても開発されています。大きなメリットとしては、EVよりも充填時間が少ないなどがあります。

水素エンジンの「αlive H2E」
水素エンジンの「αlive H2E」

一方で、水素エンジンの実用化については、まだ可能性を探っている段階で、同社も研究中。

課題としては、異常燃焼の制御(プレイグニッション/早期着火)、エネルギー密度の問題から来る航続距離の課題(車両への搭載性など)が大きいそう。普及については、インフラの整備(水素ステーションの普及)も不可欠です。

なお、トヨタがスーパー耐久レースの現場で開発している水素エンジンについても、ヤマハ発動機が耐久性などについてトヨタと一緒に研究を進めています。

そのほか、発表済みのレクサスの水素バギー「ROV(Recreational Off highway Vehicle)」は、エンジンもトヨタとヤマハ発動機が共同開発。水素エンジン以外では、水素関連では燃料電池(FC)の活用やカーボンニュートラル燃料(e-fuel/合成燃料)を活用、評価も進められています。

レンジエクステンダーの「αlive RX」
レンジエクステンダーの「αlive RX」

「空」というコンセプトを掲げる「αlive RX」は、エンジンとモーターを組み合わせた発電ユニット。ヤマハ発動機が得意とするモーターサイクルの技術を活かした軽量、コンパクトな技術が活かされています。

モーターも小型、軽量化され、約80kWのユニットになっていて、空飛ぶモビリティなどの大型向けが想定されています。

燃料はまだガソリンが使われていますが、将来はe-fuelなどにも対応したいとしています。研究開発中で、今回の提案は「空」で、用途を限定せずに「陸」でも使える技術になれば、と説明されていました。

同社は、エンジンを残したいという想いがあり、内燃機関を活かした取り組みが展示されていました。

「αlive EE」。小型モビリティ向けや高出力帯モビリティ向けを開発中
「αlive EE」。小型モビリティ向けや高出力帯モビリティ向けを開発中

もちろん、電動化への取り組みも行われています。ELECTRIC ENGINEの略である「αlive EE」は、モーターにもエンジンの名を付け、高出力のハイパーEV向けのモーター。先行開発段階ではあるものの、トップクラスの出力を目指しているそうです。

2021年に発表された際は、ギヤ配置が外側にありましたが、今回はギヤは位置を内側にすることで、車両への搭載性が向上。いろいろな顧客に訴求できる搭載の自由度が高まっています。高出力のインバーターが搭載されていて、エンジン技術で培われてきた冷却技術が採用されているそうです。

サウンドデバイスの「αlive AD」
サウンドデバイスの「αlive AD」

サウンドデバイスで「アコースティックデザイン」の略である「αlive AD」は、エンジンやモーターの回転数、車速に合わせて電子的な音源を付加する装置で、アクティブサウンドコントロールになります。

感性に響く音源としてアコースティックサウンドを目指し、ドライバーの心を響くような音質が追求されています。同社のブースでは、モニターに映し出されていたサーキット走行の映像に合わせて3種類のサウンドを体感できました。

(文・写真:塚田 勝弘)

この記事の著者

塚田勝弘 近影

塚田勝弘

1997年3月 ステーションワゴン誌『アクティブビークル』、ミニバン専門誌『ミニバンFREX』の各編集部で編集に携わる。主にワゴン、ミニバン、SUVなどの新車記事を担当。2003年1月『ゲットナビ』編集部の乗り物記事担当。
車、カー用品、自転車などを担当。2005年4月独立し、フリーライター、エディターとして活動中。一般誌、自動車誌、WEB媒体などでミニバン、SUVの新車記事、ミニバンやSUVを使った「楽しみ方の提案」などの取材、執筆、編集を行っている。
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