目次
■余分な要素をそぎ落とした新しいデザイン言語
2023年1月、ラスベガスで開催されたCES2023にて発表された、近未来型ミドルセダンコンセプト「BMW i Vision Dee」。
デジタル・エモーショナル・エクスペリエンスの略のとおり、最大32色に変化するボディが話題ですが、同時に注目するべきは、そのエクステリアデザインでしょう。
ここでは、その魅力をあらためて振り返ってみたいと思います。
●グッドプロポーションのコンパクトセダン
まずは、完璧なプロポーションに注目です。BMWによれば、同車は「余分な要素をそぎ落とした新しいデザイン言語をとり入れた」とされますが、その基本となるプロポーションも明快です。前後をスパッと切り落としたショートノーズ&ハイデッキのボディに、大きなキャビンを載せたスタイルは、極めて高い合理性を感じさせます。
これは、いまどきの「長く」「広く」「低く」とはある意味逆のアプローチですが、コンセプトカーらしい大径タイヤとの組み合わせで、実にスポーティな雰囲気を醸し出すことに成功しています。
従来のセダンスタイルとしつつ、高い機能と動的なイメージを打ち出しているのは、かつての1980~90年代のBMW車を想起させるものです。
フロントの話題は、ボディに埋め込まれた可動式のキドニー・グリルですが、そうした機能的な面はもちろん、ボディに溶け込むくらいにスリムな形状に注目です。
ご存知のとおり、最近のBMW車といえば巨大なグリルに賛否が渦巻いていますが、Deeのフロントフェイスはキドニー・グリルの形状を大きく取り入れつつも、スッキリとした表情にまとめた点が肝なのです。
●美しく動的なサイドビュー
サイドビューでは、キャビンを包む太く力強いピラー類が特徴です。ここは1990年登場の3代目「3シリーズ(E36)」を思い起こさせるもので、ガッチリしたプレスドアによる高い凝縮感が、このDeeにも継承されているように感じます(Deeはプレスドアではないのですが…)。
また、伝統的な「ホフマイスター・キンク」を取り入れたサイドグラフィックは、美しさと、いまにも前進するようなスポーティさを表現。これも、前後を切り落としたコンパクトボディによるところが大きいと言えるでしょう。
一方、リアビューは、フロントフェイスと相似形を成すランプ類により、全体の統一感を形作っています。また、これもフロントと同様ですが、安定感のある大型のバンパーが、先の凝縮感をより強めているのが巧いところです。
●必要なモノだけを抽出したグッドデザイン
冒頭に書いたとおり、BMWは、Deeについて「余分な要素をそぎ落とした新しいデザイン言語をとり入れた」と謳っています。最近はメルセデス・ベンツやボルボ、国内では日産やマツダなど、よりシンプルなデザインに回帰するメーカーが増えており、ひとつの流れとも言えます。
ただ、Deeは単にシンプルなデザインということに止まらない点がユニークです。すなわち、ムダな要素をそぎ落とすことで、本来のセダンの美しさが見えてきたことにこそ意味があるのでは?ということです。
最近は少々迷走気味とも受け取られかねないBMWデザインですが、2020年代の「ノイエクラッセ」として、より本質的な美しさを期待したいと思います。