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■めくるめくエンスーの世界へようこそ
クラシックカーに関する広く深い造詣と鑑定眼を誇る越湖信一(えっこ しんいち)さんがクリッカーに降臨!
本連載では、ときにPRコンサルタント、ときにジャーナリスト、ときにカーヒストリアンとして活躍する越湖さんがナビゲーター役となって、なかなか普段は触れることのできない特別な「エンスージアストの世界」にご案内します。
初回に皆様をお連れするのは、“花の都”イタリア・フィレンツェ。さあ、ご一緒に。アンディアモ!
●日曜のミケランジェロ広場はエンスー天国
クラシックカー・エンスー仲間のクリストファーを訪ねてフィレンツェへ。
ここフィレンツェはイタリア、トスカーナの中心部であり、なんとも美しいワインディングロードに囲まれたカーガイにとっての天国です。一年中多くのカーイベントが開催されていますが、仰々しいイベントだけでなくカジュアルな集まりもたくさんあるのです。
フィレンツェへ行くなら絶対訪れたいところはいろいろあります。ウフィツィ美術館やドゥオーモ…。しかし、なんと言っても一番のお勧めはミケランジェロ広場。
フィレンツェの丘に位置し、市街が一望できるパノラマスポットです。そして、そのベスト・スポットが日曜の昼間だけは、カー・エンスー広場となっているのです。
●フェラーリ、キャデラック、そしてマツダまで
アバルトの野太いエグゾーストが聞こえてくると思えば、ベスパをはじめとするバイカー集団も。
皆がミケランジェロ広場を目指している中で、私はとんでもない手間をかけてレストレーションを行ったクリストファーのポルシェ924ターボ(ヨーロッパ仕様)で、市街から丘を目指すワインディングを登っていったのです。
広場の様子は、一言でいってカジュアルそのもの。フェラーリ・モンディアルやランチア・フルヴィアなどは適度にヤレていて味があります。
かと思えば、キャデラック・エルドラドもあれば、ミアータ(マツダ・ロードスター)も。おっと、シトロエンDSやトラクシオン・アヴァンも忘れてはならないし、トライアンフなどの英車も、もちろん。要は何の脈略もなくクルマ好きたちが集まっているのです。
●警察からして協力的
クリストファーは馴染みの仲間を早速、私に紹介してくれます。「10月のラリーにはぜひ招待するから」など、マニアックな会話が盛り上がることこの上ないのでした。
しかし、ここミケランジェロ広場は世界的に有名な観光スポット。こんな旧車天国のような状態が許されるのか、疑問に思いませんか?
日本でも、自然発生的に路上ミーティングが行われますが、どれも周囲からのクレームや所轄警察署からの“指導”が入ったりして消滅してしまうではありませんか。
「そこがイタリアさ。ここは日曜になると地元警察が広場入り口のチェーンを空けてくれる。オフィシャルに言えばどうなのか解らないけれどね。廻りも皆、クラシックカーに対してはやさしいんだ」とクリストファー。
なんとも恵まれた環境ではないですか。
●越湖ナビゲーター的イチオシの1台は
私が気になったのは、ロンバルディ・グランプリ。フィアット850ベースのリアエンジン・クーペ。赤と黄の2台が仲良く並び、1台は“フォー・セール”。
このニッチなモデルは北米にも結構な台数が行っているし、世界各国で様々な仕様のモデルが販売されています。
乾いたエグゾーストを奏でて走り去るこのロンバルディ・グランプリは、まさにこの集まりに相応しいカジュアルなスポーツカー。勝手に「ミケランジェロ広場ミーティング賞」を私は捧げたのでした。
(越湖 信一)