ルノー・メガーヌR.S.は500万円を切る価格で手に入る高性能スポーツカーだった!

■ガンガン加速し、ビュンビュン曲がる

●Cセグ・ホットハッチのメガーヌR.S.は走りが一味違う!

日本でルノーといえば、のんびりキャラのカングーが大人気なので、けっこう大衆車メーカーとして思われがちなのですが、じつは多種多様なクルマを作る総合自動車メーカーで、F1にも参戦するモータースポーツとも縁の深いメーカーでもあります。

そのルノーがロードカーとして発売しているホットモデルが「メガーヌR.S.」というモデルです。

メガーヌR.S.フロントスタイル
メガーヌR.S.のフロントスタイル

もともとメガーヌは、1995年に19の後継モデルとして投入された乗用車です。2代目メガーヌに「ルノースポール」が設定されますが、日本への正式導入はなし。日本にて正式にスポーツモデルが導入されるのは3代目メガーヌに設定された「R.S.」でした。このR.S.が示すのはもちろんルノースポールのことです。

現行モデルのメガーヌは2016年に登場(日本での発表は2017年)し、2018年から「R.S.」が追加されています。2021年1月の改良では従来279馬力/390Nmだった標準モデルのメガーヌR.S.のエンジンスペックを、R.S.トロフィーと同じ300馬力/420Nmに向上。ドライブモードのセッティングの自由度をアップするなどが行われています。

メガーヌR.S.正面
全幅は1875mm。ヘッドライト下のランプはチェッカーフラッグをモチーフにしており、コーナリングランプ、フォグランプ、ハイビームを担当している
メガーヌR.S. 真横スタイリング
全長は4410mm、ホイールベースは2670mm。普使いの乗用車として十分な広さを持つ
メガーヌR.S.真後ろスタイリング
全高は1465mm。センター出しの太いエキゾーストパイプが力強い印象

試乗車は1.8リットル4気筒ターボエンジンを搭載し、6速のデュアルクラッチ式ATが組み合わせられるメガーヌR.S.。

先述のように最高出力は300馬力、つまりリッター当たり160馬力以上を発揮する超高性能エンジンです。

エンジンを始動するとアイドリング状態であっても、このクルマがただ者ではないという雰囲気を醸し出す重低音があたりに響きます。セレクターをDに入れアクセルを踏み込むと怒濤のごとく加速を始めます。

一昔前は300馬力・400NmオーバーのFF車などはキワモノの部類で気合いを入れて乗ったものですが、現代の各種制御デバイスはドライバーに余計な神経を使わせずにガンガン加速していきます。ターボがしっかりと効く中間加速はもちろん、発進加速も軽々と加速してくれるところが大きな魅力です。

メガーヌR.S エンジン
金属製のパイプが無骨なエンジンルーム

●足まわりが絶妙!

大パワーのエンジンはもちろんなのですが、メガーヌR.S.最大の魅力は、その足まわりにあるといえます。サスペンションの基本形式はフロントがストラット、リヤがトーションビームでノーマルのメガーヌと変わりありません。

しかし使われるショックアブソーバーは4HCCという名のもので、いわばショックアブソーバーのなかにさらに1つショックアブソーバーが内蔵されるようなもの。コツコツとした速く小さな入力から高速コーナリング時のゆっくりとした大入力までを対応するものが装備されます。今回は試乗時間が長く取れたので、フラットな有料道路での試乗もしましたが、このクルマのパフォーマンスを考えればかなりいい乗り心地。さらに後席に乗った印象もいいものでした。

メガーヌR.Sインパネ
ステアリングトップにレッドマーカーを配したスポーティな空気感にあふれるインパネ

ワインディングでのハンドリングは、現在のFF車ナンバーワンといえる実力です。ステアリングを切ったら、切っただけ素直に曲がってくれるというのがメガーヌR.S.の印象です。

このハンドリングに貢献しているのが、4コントロールと呼ばれる4WS(4輪操舵システム)です。4コントロールは低速では逆位相(フロントの操舵と逆方向)、高速では同位相(フロントの操舵と同方向)に後輪をステアします。つまり、低速ではスパッと曲がり、高速ではジワッと粘るという設計です。

通常のモードでは60km/hを境に逆位相と同位相が反転しますが、レースモードでは100km/hが境となります。100km/h近くで逆位相に切れるハンドリングはなかなかの迫力ですが、これも各種デバイスのおかげでしっかりとした安定感を得ています。メガーヌR.S.はガンガン加速し、ビュンビュン曲がる最強のワインディングマシンで、クルマ好きのこころをガシッとつかむ魅力にあふれています。

メガーヌR.S フロントシート
フロントシートはアルカンターラを採用した専用タイプレッドステッチと「RS」のロゴが力強い

また4コントロールの安定性の高さはリヤがトーションビーム式であることも大きく影響しているでしょう。従来、4輪操舵システムを成立させようとした場合、多くは4輪独立懸架方式との組み合わせでした。しかしどうも4輪独立懸架方式だと、リヤのロール剛性が足りないフィーリングだったのです。

ところがリヤがトーションビーム式の4コントロールはしっかりとしたロール剛性を保ちつつ、低速ではリヤタイヤを逆位相に切って俊敏性を、高速では同位相に切って高いコーナリングフォースを稼ぐことに成功しているのです。この思い切った考えが4コントロールの使いやすさ、スタビリティの高さを生んでいると言っていいでしょう。

ちなみに、4コントロールはバック(後退)では作動しないので、バックであらぬ方向にクルマが動くこともありません。

メガーヌR.S リヤスタイル
フェンダーやバンパーなども走りを感じさせるエアロデザインとなる

●スポーツ性能だけじゃない、使い勝手の良さもイイ

メガーヌR.S.はもともとがメガーヌなので、その使い勝手のよさはかなりのものです。リヤシートの広さもしっかりとしているし、5ドアハッチバックのパッケージングでラゲッジルームはかなり広い。そして、なによりもACCが装備されたことがうれしい限り。

今、クルマを選ぼうとしたときに一番大切にするのは、自動ブレーキなどの安全装備となるでしょう。そしてその次にくるのが追従タイプのACCではないでしょうか? 少なくとも私が今、新車を買うとなったらACCを装備するクルマを選びます。

メガーヌR.S リヤシート
センター部分はきつめだが3名分のスペースを確保しているリヤシート

メガーヌR.S.の価格は464万円と絶対値としては高めの価格設定ですが、現代のスポーツモデル事情のなかでは比較的平均値なのかもしれません。たとえばGRヤリスのハイパフォーマンスパッケージは456万円でほぼ同一となっています。

世の中がEVへ向かってまっしぐらとなっている今、500万円を切るプライスでこのようなハイパフォーマンスなクルマが手に入るのは貴重なタイミングといえるでしょう。

メガーヌR.S ラゲッジ
ラゲッジルーム最大幅は1111mmと発表されている。必要十分な広さだが、フロア下にはマフラーが収められるのでフロア下の利用はできない
メガーヌR.S フルラゲッジ
リヤシートは6対4分割でスペースアップ可能。フルラゲッジ時の容量はかなり大きい

(文・写真:諸星 陽一

この記事の著者

諸星陽一 近影

諸星陽一

1963年東京生まれ。23歳で自動車雑誌の編集部員となるが、その後すぐにフリーランスに転身。29歳より7年間、自費で富士フレッシュマンレース(サバンナRX-7・FC3Sクラス)に参戦。
乗って、感じて、撮って、書くことを基本に自分の意見や理想も大事にするが、読者の立場も十分に考慮した評価を行うことをモットーとする。理想の車生活は、2柱リフトのあるガレージに、ロータス時代のスーパー7かサバンナRX-7(FC3S)とPHV、シティコミューター的EVの3台を持つことだが…。
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