ノートオーラ発表会で「スカイラインをあきらめない」と日産星野副社長が明言した背景は株主?

■スカイラインを消滅させようとする勢力との争いか?

●ノートオーラ発表会で突然の発言

日産星野副社長
スカイラインをあきらめないと語った日産星野副社長

日産自動車がプレミアムコンパクトカー「ノート オーラ」を、2021年秋に発売すると発表しました。そのオンライン記者会見が開催されたのですが、その最後に星野朝子副社長が突然スカイラインについて発言を始めました。

中谷美紀さん
ノートオーラ発表会プレゼンターの中谷美紀さん

というのも、前週に日本経済新聞が「スカイラインが開発中止」といった内容の報道を行ったからです。星野副社長は、日経新聞を名指しして、そうした事実はないと明言すると共に「日産自動車はけっしてスカイラインをあきらめません」と力強く宣言しました。

中谷美紀さん
中谷美紀さん

この手の発表会でメディアを名指しして報道内容の訂正をするということは異例です。通常であれば、メディア名は出さずに、「そうした事実はございません」といった定型文のリリースを出すなりして、やんわりと否定するものです。

星野副社長の言葉で完全に報道内容を否定したということは、少なくとも日産の取締役会においてはスカイラインの開発中止という意思はないということが感じられたのです。

スカイラインと星野朝子副社長
2019年7月、スカイラインのビッグマイナーチェンジで挨拶をする星野朝子副社長

とはいえ、こうした新聞報道というのは何の裏もなく思いつきで出てくるものではありません。とくに新聞のスクープ記事の中には、業界用語で観測記事と呼ばれる、世間の反応を見たり、空気感を作るために情報をリークして記事化させるという意図のあるものが存在します。

もし、今回のスカイラインの開発中止という記事が観測記事であったならば、スカイラインを開発中止させたいという勢力があって、その意向を組んでのスクープ記事という可能性が考えられます。

●スカイラインを「やめない」ではなく「あきらめない」の意味は?

スカイラインはあきらめない
日産のプレミアムコンパクト「ノートオーラ」の発表会にて『スカイラインはあきらめない』と星野副社長は宣言した(写真はスカイライン発表会のときのもの)

では、スカイラインを消滅させたいと思う、日産自動車のステークホルダーとは、どんな人物・団体なのでしょうか。それも新聞報道につながるほどの存在感を持つ人物・団体となれば、答えはひとつに絞られます。

それは大株主です。

ここから先は完全に妄想となりますので、固有名詞を出すことは控えさせていただきますが、ある程度以上の大株主が、日本国内でセダンをラインナップしている意味はないと考え、取締役会にプレッシャーをかけているという可能性はあり得ることです。

実際、日産の国内販売でいえば軽自動車とコンパクトカーとSUVが大半を占めています。目先のことを考えれば、開発&販売リソースを集中したほうが利益につながるのは間違いなく、株主であればさほど利益の出ないような高価格帯のセダンを止めてしまえ、と考えるのは当然ともいえます。

そうした大株主からの「売れないクルマはあきらめろ」というプレッシャーが現実に存在するとすれば、「スカイラインをやめることはありません」ではなく、「スカイラインをあきらめません」という星野副社長の表現にも合点がいきます。

●インフィニティQ50としてスカイラインがなくなることはあり得ない!?

実際、スカイラインは日産の国内市場においてもっとも歴史のある名前であると同時に、現行モデルは手放し運転を実現する「プロパイロット2.0」や405馬力を発生する3.0L V6ツインターボ「VR30DDTT」エンジン、ステアバイワイヤなどテクノロジーショーケースとして「技術の日産」というブランディングの核となるモデルです。販売実績以上の価値を持つ重要なモデルともいえます。

日産星野副社長
日産星野副社長

よくよく考えてみればスカイラインは、海外ではインフィニティQ50として販売されています。インフィニティにおけるスポーツセダンの必要性を考えれば、そもそもQ50の一部としてのスカイラインの開発が凍結されるということはあり得ないことともいえるのです。

自動車コラムニスト・山本晋也

この記事の著者

山本晋也 近影

山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
続きを見る
閉じる