■速さは十分
未来を見据えて、BMWのサスティナブルさを象徴する存在としてデビューしたi8。スポーツカーのような存在感を持ちつつ、1.5Lの3気筒エンジンに強力なモーターを組み合わせたプラグインハイブリッドカーだ。
実際に乗ってみると、これまでのスーパーカーとはまったく違う世界が面白い。これまでのスーパーカーは、エンジンを掛けると同時に派手なエンジン音を奏でるのが常識。
しかしi8は無駄なアイドリングをせず、エンジンを掛けることなくモーターでスーッと滑るように走り出す。ほぼ無音。そしてエンジンの振動も無いから、まるで雲に乗ったかのような感覚だ。
それでいて本気になれば、231psのエンジンと131psのモーターのコンビネーションで、ベーシックなポルシェ911と同等の加速をするから十分な速さを楽しめる。
●特別なクルマ
ボディはカーボンで、まるでレーシングカー。そのあたりからも、「特別なクルマを作ろう」というBMWの意気込みが伝わってくる。
しかしこのi8は、商業的に成功したとは言い難い。スーパーカーに多くのオーナーが求めるのはやはり「ロマン」であり、プラグインハイブリッドという先進性よりも、大排気量マルチシリンダーの躍動感や奏でる音といった官能性能が大切なのだ(だからエンジンが小さなホンダ「NSX」も苦戦しているのだろう)。
もしくは、ハイブリッドでもフェラーリ「SF90」やマクラーレン「P1」のように絶対的な速さがないと受け入れられにくい。
そんな事情もあり、デビューから約6年を迎えた2020年4月には生産を終了している。生産台数は未公表だが、そう多くはなさそう。
しかし、BMWの歴史に残る1台といえるのは間違いないと思う。(おしまい)