ここまで散々と能書きをたれて参りましたが、いよいよ乗ってどうなの?という部分に突っ込んで行きたいと思います。
エンジンのスマートは正直な話、決して静かな車ではありません。リアエンジンのおかげでそんなに気にはなりませんが、やはり騒々しいという言葉の2歩くらい手前まではにぎやかなクルマであることは否めません。
しかし、スマートのEVはそのにぎやかなエンジンの位置にモーターが、そして運転席の下にバッテリーがあるため、かなり静か。
スマートのネガティブな要因が消えてしまったのですから、これは「いいね!」と表現する以外ありませんね。このサイズで、このホイールベースで、ドタバタギクシャクしないという、あのスマートマジックが存分に楽しめます。
試乗に際して同乗していただいたメルセデスベンツ日本の方に「上り坂はタルいでしょ。第3世代はモーターがでかくなるのできびきびしますよ」と言われましたが、今のモーターでもエンジンのスマートくらいは走ります。モーターが大型化されるとリーフのノーマルモードくらい速くなるのでしょうか。
乗り心地やコーナーリング、室内の快適性や操作系のわかりやすさ等、スマートのEVでよかったところとはつまり、スマートのいいところなんですね。もともとSwatchと共同開発を始めた段階で、Swatchの総帥、故ニコラス・G・ハイエック氏は、スマートのプロジェクトは電気自動車を見据えている、と語っていましたし。スマートの本来の形が電気自動車なのであって、やっとそこにたどり着いたのだろうな、というのがスマートのEVに乗った本当に素直な感想です。
あっ、ひとつだけ気になるところがありました。ブレーキを踏んだときの感触。回生ブレーキの効きが弱いんですよ。その後に来るメカニカルブレーキとのタッチの差がありすぎて、チョット戸惑いました。試乗後に前述の小西氏にそのことを伝えると、「電気的にはあの回生で充分なので、タッチの問題を煮詰めると思います。ただ、リア駆動なのであまり回生を強くしすぎると横滑りの原因にもなりかねないので、その辺の調整は重要ですね」とのこと。
回生システムはフロント駆動のほうがエネルギーを取りやすいとは思うのですが、スペース効率やパッケージではすでに完成の域に達しているスマートですから、痛し痒しな部分なのでしょう。第3世代ではタッチの改良に期待します。
(北森涼介)