■ツインターボエンジンの仕様とシフトスケジュールを変更
1989年のレクサスブランドの発足とともに販売が開始されたフラッグシップセダンがLSです。
当時、日本ではレクサスブランドは存在せず、トヨタ・セルシオの名で販売されました。その後2003年にトヨタはレクサスブランドの国内での展開を発表、2005年から実際に店舗展開を開始、2006年には3代目トヨタ・セルシオに変わるモデルとしてLSの国内販売が開始されます。
LSはその後、2度のフルモデルチェンジを経て現行モデルとなり、2020年11月に改良を受けました。
試乗車はこの改良を受けたモデルの2台。LS500とLS500h、グレードはいずれもFスポーツです。資料によればパワーユニットで変更を受けたのはLS500の3.5リットルV6ツインターボのみで、燃焼室形状の最適化やコンロッド形状最適化、クランクピン径の拡大などが行われました。
また10速ATのシフトスケジュールも変更され、加速時のフィーリング向上が図られています。LS500、LS500hともに後輪駆動モデルは、サスペンションアームを高強度アルミ鍛造タイプに変更、タイヤの質量低減によりばね下質量を約3.5kgの軽量化をしています。
LSはランフラットタイヤを採用しますが、そのランフラットタイヤの縦バネ剛性、スタビライザーバーのばね定数、バウンドストッパーの先端剛性を最適化するとともにエンジンマウント内のオリフィスを変更し、NVH性能(振動・騒音・乗り心地)の向上を目指しました。
LS500、LS500hともに基本的にはどちらも非常に快適、なおかつプレミアム感にあふれるLSらしい走りを感じることができます。そしてFスポーツらしいピュアなハンドリングを活かしたスポーツ性を兼ね備える部分も忘れてはいけません。
パワートレインについては、ピュアエンジンのLS500もハイブリッドのLS500hも甲乙付けがたい高性能さです。ピュアエンジンはV6ツインターボの3444ccで最高出力は422馬力・最大トルクは600Nm。対するハイブリッドは最高出力299馬力、最大トルク356NmのV6・3456ccエンジンに180馬力/300Nmのモーターを組み合わせます。
LS500は10速のATが組み合わされています。
2020年の改良ではシフトスケジュールを変更したことによって、加速時のダウンシフト頻度を減らしギヤ段数を維持したままでの加速を可能にしています。
MT車で1段高いギヤのまま加速したときや、ATでホールドモードを使って加速したときなどにエンジンのトルクに余裕があると、グッと押し出させるような力感のある加速を味わうことができますが、LS500の加速感はつねにそうした力感にあふれるものなのです。
一方のLS500hは2019年の改良でモーターアシスト量が増やされていることもあり、こちらも力感あふれる加速感を味わえます。どちらの加速感も素晴らしいですし、どちらの巡航感も快適です。
現行LSは4輪マルチリンクのエアサスペンションを採用します。初代セルシオではすでに最上級のC仕様と言われるモデルにエアサスが採用されていました。当時のエアサスはいかにもエアサスという感じで、後席に乗った人が満足するための足まわりという印象でした。
2代目セルシオには欧州仕様の足まわりを採用したeRバージョンが登場し、それまでの印象はガラリと変わりセルシオが一気にドライバーズカーになったという思い出があります。
試乗したFスポーツはフロント245/45RF20、リヤ275/45RF20サイズのタイヤを履き、ブレーキローターも大型化されています。いわば現代のeRバージョンといった存在と言っていいでしょう。
試乗したLS500、LS500hのハンドリングはかつてのeRバージョンを彷彿とさせるしっかりとしたフィーリングで、限界は数段高め、さらに乗り心地はしっとりで上質と最上級のものです。
現行デビュー時の試乗では、助手席に誰も乗っていないとシートがブルブルと震えるなどのNVH対策の追い込み不足がありましたが、それらもしっかりと修正されていました。登場から4年が経過した現行LSは熟成を完了したモデルに仕上がったと言えるでしょう。
(文・写真・諸星 陽一)