■自動車線変更や自動追い越しが「慎重な時」がある理由とは?
●ホンダ・レジェンド「Honda SENSING Elite」の自動運転レベル3作動時でも、スマホ操作はダメ!
ホンダ・レジェンドに搭載された「Honda SENSING Elite」は、「トラフィックジャムパイロット(渋滞運転機能)」の自動運転「レベル3」だけでなく、ハンズオフ機能付の「レベル2」にももちろん対応しています。
まず、「レベル2」からチェックしていくと、渋滞時追従機能付のアダプティブクルーズコントロール(ACC)と車線維持支援システム(LKAS)により、一定の条件を満たせばハンズオフ(手放し運転)が可能。
ちなみに、日本で初めて渋滞時のハンズオフ機能を搭載したのはBMW3シリーズ。もちろん、日産スカイラインの「プロパイロット2.0」もハンズオフドライブが一定の条件下で可能です。さらに、「レベル2」の段階で、自動車線変更機能も付いています。自動車線変更は、日本ではメルセデス・ベンツが現行Eクラスに初めて搭載されました。
ハンズオフ機能はBMWや日産スカイライン、テスラなども採用している機能で、レジェンドでは、ハンズオフ機能付車線内運転支援機能を作動させるのがまず条件。
直線または半径300m以上のゆるやかなカーブを約65km/h以上で走行中に移動先車線の前方後方に車両がいない時、さらに、車線変更する側の車線境界線が破線、実線の時に作動するという条件もあります。実際に体験してみると、メルセデス・ベンツなどと比べ「車線変更は慎重かな?」と思うシーンもありました。
自動車線変更は、ドライバーがウインカーを1回軽く操作することが合図になります。これは、レジェンドの場合、片側3車線がある高速道路では、隣の車線だけでなく、2車線隣の交通状況も見ているそうで、隣の車線が空いているからすぐに車線変更を行うとは限らないようです。
自動的に追い越しも可能です。ハンズオフ機能付車線内運転支援機能が作動中で、スイッチをオンにするとスタンバイ状態になります。システムが目的地に向けて必要と判断し(ナビの目的地設定も条件)、上記のように、周辺の交通状況がクリアになれば追い越しもかけます。なお、降りるインターチェンジが近づくと自動的に追い越しは行われないようです。
渋滞区間に入ると30km/h以下で「レベル3」の「トラフィックジャムパイロット(渋滞運転機能)」の条件が整います。ハンズオフ機能付車線内運転支援機能が作動していて、渋滞など一定の条件を満たす場合に作動します。
トラフィックジャムパイロット作動時にはアクセル、ブレーキ、ステアリング操作をすべてシステムが行います。条件が整うと、音と共にメーターに表示され、インジケーターのイルミネーションがブルーに変わります。渋滞運転機能作動中のメーターには、自車だけでなく、前後、左右の車両もイラストで表示され、メーター表示で状況が把握できます。
この状況下では、ドライバーはいつでもオーバーライドできる状態を保つ必要があるものの(居眠りやわき見はNG)、純正ナビでありながらDVDなど映像の視聴、ナビの操作も可能になります。
なお、道路交通法では、運転中のナビやスマホの操作も可能になります。つまり、この状況下でスマホやナビを操作していても、白バイやパトカーと遭遇しても捕まらないことになります。が、ホンダではスマホ操作は推奨していない点は注意すべきことです。
渋滞時には、合流車線から入ってくる車両もあり、前を譲ったり、自車が先に行ったりする難しい制御も盛り込まれています。ドライバーからすると、「このシーンでは前を譲った方がスムーズに流れるな」ということもありましたが、流入してくるクルマの全長によっても制御は難しくなります。たとえば、全長が大きく異なる乗用車とトラックでは、譲るべきか先に行くべきか、後続車もいるだけに判断が分かれるでしょう。
さて、渋滞が解消してきて50km/h以上になったり、降りるべきインターチェンジが近づいたりすると、ビープ音と共にメーター表示とイルミネーションがオレンジになります。その後は、上記したレベル2相当の運転支援機能も使えることになります。
今回の試乗では、ホンダの説明員の方が同乗したため、比較的スムーズに操作、走行が可能でした。しかし、アダプティブクルーズコントロールや車線維持機能を使ったことがない人には、操作に一定のハードルがありそうです。販売店での説明はもちろんあるそうで、これまでリース契約しているユーザーの多くは、当然ながらこうした先進安全装備に強い関心を持っている方が中心だそう。
早朝から出かけるゴルフや渋滞に多く遭遇する長い連休などの際に、「Honda SENSING Elite」搭載のレジェンドは、ドライブの頼もしい相棒になってくれそうです。
(文:塚田 勝弘/写真:平野 学)