目次
■オイル劣化が進むと最悪の場合は焼き付く可能性も
●250cc以下なら3,000~6,000km、250cc超は1万km程度が交換目安
エンジンオイルは、走行とともに劣化し、また走行しなくても劣化するので、適正な時期に交換しなければいけません。メーカーは、エンジンの仕様や排気量に応じたオイル交換時期を推奨していますが、これをベースに使用状況に応じて調整する必要があります。
エンジンオイルの劣化要因やその影響、交換時期について、解説していきます。
●オイルの劣化要因
エンジンオイルは、さまざまな原因で劣化して、潤滑性などの本来の機能が低下します。エンジンオイルの劣化要因は、次のように多岐にわたります。使用しなくても空気に触れれば水分の吸収と酸素による酸化よって劣化します。
・せん断による劣化
回転部や摺動部を潤滑するオイルはせん断を受け、粘性が悪化してヘドロ状に変化します。
・熱による劣化
高速高負荷の運転頻度が高いと、油温が上昇して劣化が加速します。
・ブローバイガスや汚れによる劣化
ピストンとシリンダーの隙間からクランクケースに漏れるブローバイガスの混入やエンジン内の汚れ成分や摩耗粉などの混入によって劣化が進行します。
・空気中の水分や酸素による劣化
容器に保管していてもオイルは空気と接触しているので、水分の吸収や酸化によって劣化は進みます。
●オイルが劣化したら何が問題
エンジンオイルの主要な働きは潤滑ですが、他にも密封性や冷却性、緩衝性などの役目があります。劣化して最も大きな影響を与えるのは、粘度の低下です。ネバネバのオイルから水のようなオイルに変化すると、適正な油膜が形成できなくなります。
油膜が形成されないと摺動部品間で金属同士が接触する境界潤滑状態になります。金属接触を起こすと摺動部のフリクションが増え、燃費や騒音が悪化します。さらに摺動部が傷つき、最悪の場合はオイル切れで焼き付くこともあります。
オイルの劣化具合の目視チェックは、通常は点検窓やオイルレベルゲージで行います。新品のオイルは薄い黄金色でネバネバですが、劣化すると少しずつ赤黒くなり、最後はサラサラで真っ黒になります。
●適正なオイル交換時期とは
バイクメーカーの推奨交換時期は、車種や仕様によって異なります。交換時期は、概ね以下の走行距離、もしくは1年経過の早い方という考え方です。
・空冷エンジン:3,000km(空冷エンジンは、オイルが高温になりやすいため)
・125cc以下の水冷エンジン:3,000km
・126cc超の水冷エンジン:5,000~6,000km
・250cc超の水冷エンジン:6,000~10,000km
以上のメーカー推奨値をベースにして、運転条件や使用頻度などの使用状況によって交換時期を調整します。また新車の場合は、初期にエンジン各部の摺動部から金属粉が発生しやすいため、すべてのバイクで最初の走行距離1,000kmでオイル交換をしなければいけません。
また、シビアコンデションと呼ばれる厳しい使用条件では、交換時期は通常の半分程度に短縮する必要があります。シビアコンデションとは、走行距離が極端に長い(6,000km~8,000km/年以上)、悪路の走行頻度が高い、高速走行や登坂走行頻度が高い、低速走行や短距離走行頻度が高いなどの使用条件です。
●保管オイルの寿命は
オイルは、使わなくても空気と触れるので、水分の吸収や酸素による酸化によって劣化します。
未開封の金属缶に保管されたオイルの保存期間は5~8年程度、開封後は2年以内に使い切るのが安心です。またオイルは紫外線に弱いので、極力暗い場所で温度が上がらない場所で密閉性の高い金属容器で保管することが長持ちの秘訣です。
劣化したオイルを使い続けると、本来のバイクの性能が発揮できず、燃費の悪化やエンジンの寿命を縮めることになります。ただし、劣化の具合を性能で実感したり、オイルの状態を目視で判断したりするのは難しいので、メーカーのオイル交換推奨値を守ることが無難です。メーカー推奨値は、ある程度の使用状況のバラツキを加味した実績ある値です。