■乗り心地の向上も盛り込まれたMAZDA 3の走り
2020年11月に商品改良を受けたMAZDA 3。
マツダは、高度でしかも迅速な開発を実現する「モデルベース開発技術」を採り入れた「ビルディングブロック戦略」により、常に新しい製品(クルマ)をディーラーに並べることを実現しています。
ハード面のベース技術の進化はもちろん、その上に制御技術、バッテリーEV技術、プラグインハイブリッド技術などを積み重ねていくことで、電動化技術の構築、ブラッシュアップまでを図るという戦略です。
2020年11月に発表された中期経営計画の見直しにおいて、この先2年間の投資対象として、制御技術による継続的な商品改良、ハードウェアのアップデート(ほかにも、ラージ商品用ハードウェア、ロータリーエンジン技術を使ったマルチ電動化技術も掲げている)を挙げています。
今回のMAZDA 3の商品改良では、ソフトウェアのアップデートにより火花点火制御圧縮着火である「SPCCI」を採用する「SKYACTIV X(e-SKYACTIV X)」の燃焼制御を最適化することで、ほぼ全域にわたってエンジン回転域でトルクと出力の向上が図られていて、最高出力は180psから190psに、最大トルクは240Nmから224Nmへとそれぞれ引き上げられています。
また、人気の1.8Lディーゼルエンジンの「SKYACTIV-D 1.8」も最高出力が116psから130psにアップし、高速道路での合流や追い越し時など、アクセルを踏み増すシーンでパワフルな加速が持続するようになったというのが主な変更点です。
ほかにも、サスペンションの改良による乗り心地の改善、アダプティブクルーズコントロールやレーンキープアシストの上限を55km/hから高速域まで引き上げることで実用性を高めると共に、アダプティブクルーズコントロールの加減速制御をより人間の特性に合わせて滑らかにしたなどの内容も盛り込まれています。
「SKYACTIV X」からチェックすると、応答性の向上、EGRの推定制御の精度向上によりトルク、出力の向上が図られたのに加えて、エンジンとAT応答制御の最適化により、アクセルのツキが良くなっているのが印象的です。EGRを正確にコントロールすることで、より覆うの空気を取り込む、エアサプライの過給も以前よりも精密に制御されたことで、不要なアクセル操作やダウンシフトが減るなどの利点があるそう。
さらに、ATのレスポンス、油圧クラッチの見直しなどもレスポンスに優れた走りに貢献しています。新旧乗り比べてみると、ディーゼルエンジン搭載車ほどの差は感じられなかったものの、高速域でのパンチ力は明らかに上。また、街中などの低速域でもトルク感が増したことで、よりストップ&ゴーがスムーズになった印象を受けます。
とはいえ、「SKYACTIV X」は改良前でもレスポンスの良さが印象的でしたから、こうした利点はもちろん維持されながら、全域に渡ってより力強く、洗練されたパワーユニットになったといえそう。
また、改善が図られた乗り心地は、新旧比較すると、基本的には引き締まっているものの、主に街中での凹凸に対しての「いなし」具合が洗練され、微少な揺れが減っている印象。
今回の試乗車は新旧ともにMTで、MT自体に変更はありませんが、最新のマツダのMTはシフトフィールの剛性感が高くなっていて、こちらを選んでもMTならではの楽しみを享受できます。
なお、MAZDA 3のMT比率は、ATが94%、MTが6%とのこと。MAZDA 3に限らず日本車のMTは年々減る一方ですが、少数派にも選択肢が用意されているのがうれしい限りです。以前お伝えしたように、既存車のオーナーに向けても今回のソフトウェアアップデートの無償提供が行われます(足まわりは変更されません)ので、案内が来た方はぜひアップグレードされることをオススメします。
(文/塚田勝弘 写真/前田惠介)