■1400万円超の国産スポーツクーペは高い完成度を誇る
近年のレクサスは、フルモデルチェンジやマイナーチェンジのみならず、年次改良(イヤーチェンジ)も含めたアップデートにより、走りを磨き上げています。2020年12月にIS、LSを中心としたほぼオールラインナップといえるプレス向け試乗会が行われましたので、ご報告したいと思います。
筆者が最初にステアリングを握ったのは、スポーツクーペのRC F。以前お伝えしたように、2019年5月に受けたマイナーチェンジ後モデルは報告済みで、今回は2020年9月に一部改良を受けた最新モデルです。
今年の一部改良は車載ディスプレイの使い勝手向上が柱で、「SmartDeviceLink」「Apple CarPlay」「Android Auto」に対応したマルチメディアシステムが用意されています。これにより、iPhoneやAndroid搭載のスマホを10.3インチワイドディスプレイと連携させることにより、リモートタッチによる画面操作や音声操作が可能になっています。
安全装備でもクリアランスソナー&バックソナーが全車に標準化され、デザインは不変ながらボディサイズに新色の「ソニッククロム」をはじめとした全6色が用意されています。
試乗時間は限られていましたが、481PS/7100rpm・535Nm/4800rpmを誇る5.0L V8エンジンは、少し踏み込めば走り出しから見た目を裏切らない強烈なダッシュ力を披露してくれます。NAエンジンらしい自然な回転フィールで、ハイレスポンスに加えて、リニアな加速感が魅力。
一方でレクサスらしい質感の高さを感じさせるのが、ゆっくりとジェントルに走らせるのも苦労しないアクセルの操作感。「ブウォン!!」というど派手な音を立ててエンジンが目覚めますから、早朝深夜の住宅街を出発する際は結構はばかられそう。ドライブモードを「NORMAL」にしたままでも少し踏み込むとV8エンジンの力強さが十分に伝わってきます。
その真価はやはり「SPORT」以上で堪能できます。なお、「SPORT+」はサーキット専用モードで、荒れた一般道で同モードにすると、ボディの剛性感は高くても上下動を中心に派手に揺すぶられます。それでもフロントシートは、ホールド性も剛性感、減衰も抜群に高く、シートフレームの剛性、強度の高さが伝わってきます。
サーキット走行で試したわけではありませんが、おそらくそうしたシーンでもこのシートなら安心感をもたらしてくれそう。高いボディ剛性感とシートの良さもあって、スポーツクーペらしい硬派な乗り心地ではあっても不快ではないのは、さすがレクサスというしかありません。
組み合わされる8速ATの「8-Speed SPDS」もいまだに一級品と思わせる変速スピードで、最高の黒子役に徹してくれます。速さだけでなく、カーボンセラミックブレーキとF専用レッドブレーキキャリパー(ディスクローターは前後共に380mm)のストッピングパワーも強力。しかも慣れると意外に扱いやすく、公道であれば制動力とフィーリングは十分以上の手応えをもたらしてくれます。
なお、試乗車の「RC F“Performance package”」の車両本体価格は1432万円。“マークレビンソン”プレミアムサウンドシステム(24万3100円)、寒冷地仕様(2万8600円)により、価格は1459万1700円となっています。
(文:塚田 勝弘/写真:井上 誠)