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■スポーツ仕様やオフロードモデルに設定あり
今や国産の新車では設定が少なくなってきたMT(マニュアル・トランスミッション)車ですが、運転することの楽しさを味わいたいクルマ好きなどには、根強い人気があります。
特に、660ccという小排気量エンジンを搭載する軽自動車の場合は、エンジンパワーがない分、こまめな変速により自在な走りが可能になるなど、MT車ならではの走りが楽しめます。
そこで、ここでは、新車で購入が可能なMT仕様の設定がある軽自動車を紹介しましょう。
●ホンダ・N-ONE
2020年11月にフルモデルチェンジした、ホンダの軽トールワゴン「N-ONE」には、RSというスポーツグレードに新しく6速MT仕様が設定されました。
初代が2012年に発売されたN-ONEは、1960年代の名車「N360」をモチーフとした愛嬌のあるデザインと、軽トールワゴンとしては全高が低い車体などによる、軽快で安定した走りに定評があるモデルです。
約8年ぶりのフルモデルチェンジとなった新型は、基本的に先代モデルの外観デザインを踏襲したことで話題になりました。ヘッドライト内にリング状のLEDライトを配したデイタイム・ランニングランプを採用したり、前後バンパー下部の形状を立体的にして「踏ん張り感」」があるデザインに変更するなど、細部には多少の変更点もあります。ですが全体的な外観の印象は、「街でよく見るN-ONE」のままです。
これについて、ホンダは、N360を源流とするN-ONEのキャラクターを踏まえると、あえて“変えない”ことで「日本の新しいベーシックカー」を目指したといいます。
一方、中味はほぼ別物です。車体には、N-BOXなどで定評がある「センタータンクレイアウト」をベースとした新設計のプラットフォームを採用。独自の運転支援システム「ホンダセンシング」を全グレードに標準装備するなどで、走りや安全性能は格段にアップグレードされています。
また、内装も、ホールド感が高いセパレートタイプのシートを採用、ナビモニターもインパネ最上段に設置されるなど、各部が一新されています。
そんなN-ONEには、前述の通り、スポーツグレードのRSに、従来からあるCVT仕様に加え、6速MT仕様が追加されました。
エンジンには、最高出力64ps、最大トルク10.6kgf-mを発揮する3気筒ターボを搭載。後述するホンダの軽2シータースポーツ「S660」と同様に、5速までをクロスレシオ化し、2速でも30~60km/h程度の速度域をカバーするなどで、軽ハイトワゴンとは思えないスポーティな走りを実現します。
また、内装では、ホンダが誇るスポーツカー「S2000」と同デザインのシフトレバーを採用。メーター右の液晶モニターに、運転時の重力加速度を表示する「Gメーター」や、ターボの過給圧を示す「ブースト計」なども表示するなど、より走りを楽しめる機能も装備されています。
加えて、軽自動車の6MT車では初の「ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)」と「LKAS(車線維持支援システム)」を搭載。特に、前車との車間距離を測りながら加減速するACCは、アクセル・ブレーキ・クラッチといった3ペダルのマニュアル車では、ストップ&ゴーが連続する渋滞路などでかなり重宝するはず。高速道路などを使った長距離ドライブでも、疲労軽減などに大きく貢献します。
N-ONEの価格(税込)は159万9400円〜202万2900円(RSグレードはCVT・6速MT共に199万9800円)です。
●スズキ・アルトワークス
大衆車の「アルト」をベースに、ハイパワーなターボエンジンと軽量なボディが魅力の5ドアハッチバックモデルが「アルトワークス」。初代モデルは1987年にデビュー、一旦は生産終了となりましたが、2015年に復活を遂げ、いまだに多くのクルマ好きを虜にしている伝統のモデルです。
現行モデルでは、水冷直列3気筒インタークーラーターボのR06A型エンジンを搭載。最高出力は64ps、最大トルクは10.2kgf-mを発揮。足まわりには専用チューンのサスペンションなども装備し、ステアリング操作に対して高い応答性などが得られるのも魅力です。
マニュアル車には、軽快なシフトフィールが楽しめる専用開発のショートストローク5速MT(マニュアル・トランスミッション)を装備。2WD(FF)仕様と4WD仕様の両方に設定があります。
また、このモデルは車両重量が軽いのも魅力で、2WDのMT車で670kg、4WDのMT車でも720kg。なお、4WDでパドルシフトも装備する5速オートギヤシフト(5AGS)仕様車でも740kgを実現します。
前述のN-ONEが、RSグレードの6速MT車で840kg、CVT仕様車は860kgですから、アルトワークスがいかに軽量なのかが分かるでしょう。
しかも、車両価格(税込)が、5速MT仕様の2WDで153万7800円、4WDでも164万7800円と安いのも魅力(4WD・5AGS仕様は168万6300円)。
ちなみに、3気筒NAエンジンを搭載するベースモデルの「アルト」にも、Fグレードに5速MT仕様があり、こちらは86万3500円〜129万5800円(5速MT仕様は2WD車86万3500円、4WD車97万1300円)となっています。
●ホンダ・S660
ホンダの軽2シータースポーツの「S660」にも、6速MTのマニュアル車が設定されています。
脱着式ソフトトップ「ロールトップ」を採用した2人乗りオープンカーであるこのモデルは、ソフトトップを外した状態でもシート背後のロールバーが残るタルガトップ風のデザインを採用。
エンジンは660cc・直列3気筒ターボで、最高出力64ps、最大トルク10.6kg・mを発揮。エンジンを運転席後ろに配したMR(ミッドシップエンジン・リアドライブ)レイアウントなどにより、スポーティな走りが楽しめるモデルです。
なお、S660は2020年1月にマイナーチェンジされ、ヘッドライトの色やフロントグリルのデザインなどが変更されています。ラインアップには、CVT車もあるほか、内外装にレーシーかつ高級感ある専用パーツを施したカスタマイズ仕様の「モデューロX」も用意。価格(税込)は203万1700円〜304万2600円で、全車種に6MT、CVTが用意されておりますが、6MT、CVTとで価格に変わりはありません。
●ダイハツ・コペン
電動格納式ハードトップを採用するダイハツの軽オープンカー「コペン」にも、走りが楽しめるマニュアル車が用意されています。
2014年に登場した現行の2代目LA400K型は、最高出力64ps・最大トルク9.4kg-mの660cc・直列3気筒エンジンを搭載。7速CVT車のほかに、5速MTのマニュアル車が設定されています。
独自の骨格構造「D-Frame」と内外装着脱構造「DRESS-FORMATION」を採用したこのモデルは、多彩なデザインが選べるのも特徴。Robe(ローブ)、XPLAY、Cero(セロ)があるほか、2019年にはトヨタのスポーツブランド「GR」の名を冠したコペン GR SOPRTも登場しました。
価格(税込)は、188万6500円〜244万6000円(5速MT車は190万8500円〜244万6000円)です。
●スズキ・ジムニー
スズキが誇る軽4WD(4輪駆動)モデルが「ジムニー」。軽自動車ながら、オフロードの走破性を高めた本格装備が特徴で、2018年に発売された現行の4代目は、いまだに納車が1年待ち(某スズキ販売店談)と、登場から2年経った今でも高い人気を誇っています。
そのジムニーにも、5速MTのマニュアル車が設定されています。エンジンは、660ccの直列3気筒インタークーラーターボで、最高出力64ps、最大トルク9.8kgf-mを発揮。電子制御式ブレーキLSDトラクションコントロールなど最新技術も採用し、悪路などでも優れた走破性を発揮します。
5速MTは、XC、XL、XGの全グレードに設定。ほかに4AT仕様もあります。価格(税込)は148万5000円〜187万5500円(5速MT仕様は148万5000円〜177万6500円)です。
(文:平塚 直樹/写真:トヨタ自動車、本田技研工業、スズキ、ダイハツ工業)