昨年の東日本大震災での福島第一原子力発電所の事故をうけて、一気に拡がった自然エネルギー転換への気運ですが、太陽光発電にしても風力発電にしても今すぐ実用化ができるかと言えば、そんなわけありません。すごく技術が進歩して、なおかつ権益に縛られない行政や政治の革命が行われなければ自然エネルギーの実用化ははっきり言って無理です。
自然エネルギーでの発電実用化を目指すなら、まずは発電と送電の分離、そして発電事業の自由化が必要であるということは、多くの専門家が声高に発しているのでお聞きになった方も多いことでしょう。
自然エネルギーへの移行を促すにしても、現状の電気はどうするのか?という問題ですが、これは完全に火力に頼るということになります。多くの原発は今年の3月でほぼ全て、法律に定められた定期検査ということで停止します。また、菅政権時代に決まったストレステストというものを受けないといけませんし、運転再開の許可を出す道知事、県知事は事故後の民意をうけて滅多なことでは再開の許可を出さないでしょう。再開許可なんか出したら次の選挙は落ちかねませんからね。
というわけで、火力発電に頼らなくてはならないのですが、今はガスタービンのコンバインドサイクルという熱効率50%以上の発電機のシステムもありますし、シェールガスという新しい天然ガスもありますから作ればすぐに動かせます。原油価格が高騰している折ですが、石油火力も使っていただかないといけません。石炭火力は運用コストがかなり安いのですが国内で石炭火力に対応している発電所ってありましたっけ?東京都もガスタービン発電所を作ると猪瀬副知事が公言していますが、ここで大きな問題点がひとつ。
二酸化炭素をどうするのか?
二酸化炭素排出を抑制する取り組みが行われる中で排出権取引というものがあります。二酸化炭素をたくさん出す国は出さない国から排出権の余剰分を買い取ることが出来るのです。すごく大雑把に説明すると、日本だけだと排出量をオーバーしてしまうけど、お金を払って他の国と合算して平均化してしまえばオーバーしない、ということになるのです。
この排出権取引の相場が2010年から大下落しているのです。一番高騰していた2006年は4000円/t近かったものが2010年末には1200円/t、2011年末には500円/tを割り込みました。
この安くなった排出権取引料を使って二酸化炭素問題を回避しながら、とりあえず火力発電でしのいでおいて、その電力で太陽電池を増産するなり、水素貯蔵の研究開発をするなりしていただくことが重要かと思います。
東京電力は昨年の11月に来年の夏の見通しで、今年と同程度の電力需要であれば原発を運転しなくてもしのげると発表しちゃいましたから火力発電に注力せざるを得ませんしね。いっそ発電と送電を分離して身軽になっちゃえばいいのに。
写真:東京電力海外向け広報資料より引用
http://www.tepco.co.jp/en/news/110311/indexold-e.html
(北森涼介)