228馬力の2.4Lエンジンへと正常進化したSUBARU BRZ、発表データからわかる新型の変わった所と変わらぬ所。アイサイトは?

■ホイールベースとボディ幅は従来通り、製法は工夫するがプラットフォームもキャリーオーバー

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北米仕様のボディサイズは全長167.9インチ・全幅69.9インチ・全高51.6インチ、ホイールベースは101.4インチ。全幅とホイールベースは従来モデルと同じ値だ

ついに2代目BRZの姿が公開されました。SUBARUとトヨタの共同プロジェクトから生まれた、水平対向エンジンをフロントに積む低重心のFRスポーツカーは、安全や環境が重視される2020年代にフィットして、ラインナップに存在することができたというわけです。

注目のパワートレインは、2.4L水平対向4気筒エンジンに6速MTと6速ATのトランスミッションを組み合わせるというもの。初代モデルは205hpの2.0Lエンジンでしたが、新搭載される2.4Lエンジンは228hpを目標としているということで、時代の進化なりのパワーアップを果たしています(スペックはいずれも北米仕様)。

排気量アップというと高回転が使えなくなる印象もありますが、公開されているメーターの画像からレッドゾーンは7500rpmからとなっていることが確認できます。つまり高回転まで回す楽しみは従来通りというわけです。

環境性能への要求が厳しくなるなかで、高回転エンジンを守ることは非常に難しいと考えられますが、このあたりトヨタ独自の技術である「D-4S」というポート噴射とシリンダー直接噴射を併用する燃料システムの効能といえるでしょう。

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初代BRZの後期型で追加された「リヤアーチフィン」はさらに効果的な形状となってアップグレードされている。高速スタビリティの向上が期待できる

そして2.4Lという排気量は、じつは北米仕様のSUBARU車には直噴ターボ仕様の「FA24」型で存在しています。そのボア×ストロークは94.0mm×86.0mmというビッグボアなものですが、おそらく新型BRZにはFA24のNA仕様が載っていると考えられます。燃料供給系は従来と同じくD-4Sが採用されることが明らかとなっていますが、そのショートストロークのプロフィールから高回転までカーンと回るフィーリングが期待できます。

さて、エンジンがパフォーマンスアップした新型BRZですが、ドライビングを楽しむスポーツカーとして気になるのはシャシー性能です。メーカー発表情報によれば『スバルグローバルプラットフォームの開発から得たノウハウを取り入れ、さらにインナーフレーム構造や構造用接着剤などを採用し、ボディを再構築することで、初代モデルに対しフロント横曲げ剛性を約60%、ねじり剛性を約50%と大幅に向上』となっています。

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ホイール径は17インチと18インチを設定するが、いずれも215幅となっている

この文言を反対の視点から読み解けば、プラットフォーム自体はキャリーオーバーで、製法を工夫することで剛性アップを果たした仕様ということになります。つまり、フロント・ストラット、リヤ・ダブルウィッシュボーンという形式のサスペンションは基本設計も含めて従来通りと考えられるのです。

タイヤサイズも215/45R17もしくは215/40R18を履いているということですから、タイヤグリップに頼らないファンなハンドリングは健在と想像することができます。ちなみに、18インチタイヤの銘柄はミシュラン・パイロットスポーツ4と発表されています。

また、ワールドプレミアにあたって公開された走行シーンのほとんどはリヤタイヤを空転させた、いわゆるドリフト走行をイメージさせるものばかりですが、その姿勢から想像するに、なんらかのLSDが備わる設定であることも予想されます。おそらく、従来同様にトルセンLSDが備わっていることでしょう。

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SUBARUのアイデンティティであるヘキサゴングリルを低く配置することで低重心をアピールする

プラットフォームがそのままであることは、今回発表された北米仕様の目標スペックにおいて、ホイールベースが101.4インチと変わっていないことからも明らかですし、ボディ幅についても69.9インチと従来と変わっていません。全長こそ初代の166.7インチから167.9インチとわずかに長くなっていますがフルモデルチェンジでボディが大きくなってしまうクルマが多い中で、ほぼサイズキープしているというのはスポーツカーとしてはうれしいポイントですし、ライトウェイトスポーツ的なキャラクターを強めたといえるかもしれません。

実際、軽量化については、ルーフ、フロントフード、フロントフェンダーに軽量なアルミ素材を採用しているというのもトピックスのひとつ。とくにルーフの軽量化はさらなる低重心化に大きく貢献するもので、ハンドリングの改善も期待できるというものです。

空力性能については、フロントフェンダーのアウトレット、サイドシルスポイラー、そしてリヤアーチフィンといったデバイスが確認できます。こうしたディテールを紹介する画像が公開されているということは、すなわち冷却やスタビリティを考慮したボディメイクがされていることが予想されます。

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コクピットの写真を見る限り、キャビンの骨格はキャリーオーバーといえそうだ。インパネ中央にはスマートフォンと連携する8インチディスプレイを置く

コクピットの雰囲気も従来モデルに似たもので、いかにも肉厚なスポーツシートはホールド性と快適性の両立が期待できるもの。また、MT車においてはサイド式のパーキングブレーキが採用されていることも確認できます。先進運転支援システムとの関係もあり、スポーツカーでもEPBを採用することは当たり前となっていますが、サイドブレーキはドリフトやターンのきっかけに欠かせない装備。ドリフトを楽しむスポーツカーというコンセプトはしっかりと引き継がれていることが見て取れるのです。

ただし、ATについてはSUBARUの先進運転支援システムである「アイサイト」を標準装備すると発表されています。衝突被害軽減ブレーキや渋滞対応の追従クルーズコントロール(ACC)が備わるというわけです。今回、AT車のコクピット画像は公開されていませんが、SUBARU車として全車速対応ACCを装備するのであればEPBは必須というのがこれまでの通例ですから、そのあたりがどのように処理されているのかは気になるところ。

いずれにしても、基本的なメカニズムについては初代から受け継いだ部分の多そうな2代目BRZ。すなわちチューニングなどに関するノウハウもかなりの部分で利用できるということも予想されるわけです。チューニングのベースとして捉えているユーザーからしてもウェルカムなフルモデルチェンジになるといえるのではないでしょうか。

(自動車コラムニスト・山本 晋也)

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この記事の著者

山本晋也 近影

山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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