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■ブローバイガスとは、ピストンとシリンダーの隙間からクランク室に漏れる燃焼ガス
●ブローガスを放置すると、クランク室内の圧力が上昇して外部に噴出する恐れあり
シリンダー内の圧力が高くなる圧縮行程と燃焼行程では、ピストンとシリンダーとの隙間から未燃焼ガスと燃焼ガスが、クランクケース内に漏れます。このガスを「ブローバイガス」と呼び、ブローバイガス還元(PCV)システムによって吸気に戻して再燃焼させます。
ブローバイガスの発生原因とブローバイガス還元システムの仕組みについて、解説していきます。
●ブローバイガスとは
圧縮行程と燃焼行程で、シリンダーとピストンの隙間からクランクケース内に漏れる未燃焼ガスと燃焼ガスを、ブローバイガスと呼びます。ブローバイガスは、主に未燃燃料(HC)と燃焼ガス、オイルのミスト成分で構成されていますが、その80%以上は未燃燃料成分が占めます。
ピストンには、通常3本のピストンリング(トップ、セカンド、オイルリング)が組み込まれており、ガス漏れを防止しながらシリンダーライナー間の潤滑を確保します。ガス漏れを防止するのは、トップリングとセカンドリングの役目ですが、シリンダー圧力は高く、しかもピストンは高速で往復運動するのでガス漏れは避けられません。
シリンダー圧力は、吸入空気量が多い全開運転で最も高く、過給エンジンではさらに上がるので、ブローバイガス量も増えます。ブローバイガス量が増えるということは、その分エンジンの仕事量が減少するので出力は低下します。
ブローバイガス量を低減するために、通常はピストンリングの張力を上げるなどして対応しますが、それもリングとライナー間のフリクションを増大させることになるので、限界があります。
●ブローバイガス還元(PCV)システム
ブローバイガス増加による問題は、出力低下ともうひとつはクランク室圧が上昇することです。クランク室圧が増大すると、ブローバイガスの逃げ場がなくなり、最悪の場合はオイルレベルゲージを押出し、ガイド穴から吹き出すなどの不具合を起こします。
ブローバイガス中の未燃ガスHCは、漏れると引火の恐れがあり、またHCや燃焼ガスは排出ガスの規制対象なので、大気に放出できません。対策として、ブローバイガス還元 (PCV:Positive Crankcase Ventilation) システムを採用しています。
●ブローバイガス還元システムの仕組み
PCVシステムでは、クランク室に溜まったブローバイガスをシリンダーヘッドのロッカーカバー内に導き、既定の圧力以上になったらPCVバルブ(逆止弁)によって、ガスだけをエンジン吸気管に投入して再燃焼させます。
ブローバイガスには、未燃燃料のほかオイルのミスト成分も含まれます。オイルミストが吸気管に吸入されると、吸気管内や燃焼室内にカーボンが堆積しやすくなります。また、オイル消費量が多いという問題が発生します。
これを回避するため、PCVシステムではオイル分を分離して、吸気管に戻さないような対策が必要です。通常は、ブローバイガスが上がってくるロッカーカバー内にオイル分を分離するバッフルプレートを内蔵します。それでも分離できない場合は、ブローバイガスの配管途中にオイルセパレーター(オイル分離器)を装着します。自動車の過給エンジンの多くは、オイルセパレーターを装着しています。
排気ガスとは、排気管から排出される燃焼ガスだけでなく、燃料に起因する気体で大気に放出されるすべてのガスを指します。ブローバイガスや燃料蒸散ガス(燃料系から蒸発するガス)も排気ガスなので、法規で規制されています。
性能アップのためにブローバイガスのチューブを大気開放にする行為は、完全な違法行為なのでやめましょう。
(Mr.ソラン)