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■扱いやすさがキモチいい42PS! 欲しいパワーをいつでも好きなだけ
低速域からするするとのびやかに吹け上がる320ccツインエンジン。高回転域の過激なパンチを求める人ならともかく、レッドゾーン12500回転直前まで、谷も段差も感じさせず、よどみなく回しきれるバツグンの気持ちよさは、多くのライダーにとって心奪われる魅力ポイントといえるでしょう。
低速域ではまろやかでジェントルなエキゾーストノートは、高速域に入ると挑発的な鋭い金属音に。この排気音のくっきりした変化は、ライダーの走りの血を騒がせ、ぐっと官能に訴えかける粋な演出ともなっています。
発進加速からローギアで引っ張ると、レッドゾーンに入る前に一般道のスピードリミット60km/hにラクラク到達しました。すっきりとよく伸びて軽やかに回るエンジンには、高回転域まで引っ張っても無理をさせている感じはまったくありません。いつでもどこでもストレスなく低速ギアが使え、優れた俊敏性を自在に引き出せる特性は嬉しいかぎりですね。
●ABSは非装備。でもしっかり頼もしいブレーキです
ブレーキの握り込みはスポーツバイクにしてはソフトですが、握りはじめから握り切りまで、どこでもタッチは大きく変わらず全域でコントローラブル。なめらかな効き味のよさばかりでなく、たくましい制動力にも申し分はありません。ただし試乗した2018年型MT-03にはABSが装備されていません。
そのため、ブレーキレバーをどんどん強く握り込んでゆくと、やがてタイヤのグリップが限界をこえてフロントロックが起きてしまいます。とはいえ、舗装路でいきなりズルッと大きく滑るような不安感はなく、ロックの挙動はほどよく穏やか。本気で滑り出す前に、フロントタイヤがきゃんきゃんと派手に鳴きだしてリスクを予告してくれることもあって、きれいな路面で熟練したライダーが落ち着いて操作するかぎり、限界直前のフルブレーキング状態をキープするのも、それほど難しくはないでしょう。
●しっとり軽やか、峠のハンドリング・マシン
サスペンションはしっとりソフトで快適。穏やかな乗り心地です。でも、そのぶん状況によってはフロントを軸にほんの少しふわつきを感じることも。ハードコーナリングでもぴたりと安定する良い足ですが、スロットルのオン・オフにはちょっと敏感。あまり不用意に操作すると、やや大きなピッチングモーションを感じることがあるようです。
軽快で俊敏なMT-03ですが、コーナリングはしっとりじっくり落ち着いています。けっして重たいフィーリングではないのですが、ボディの軽さのわりにヒラヒラ感は強くありません。いったんリーンアングルが決まってしまえば、マシン任せにどっしり安心して曲がっていける、一クラス上のすぐれたスタビリティが印象に残りました。
●未来を感じるスムーズな走り。MT-03の進化の旅はまだまだ続きます。
MT-03の走りは、すべてが直感的でなめらかです。いつどんな状態からでも、ライダーが望んだだけ加速し、らくらくと曲がり、どこにも違和感なく意のままに操れます。ときには、まるでビデオゲームのような非現実感すらおぼえる快適な操縦性がこのマシン最大の魅力。
MT-03の走りに、現代の最先端の、いえ、もしかしたらちょっと未来のストリート・スポーツバイクの理想を垣間見る人だって少なくないはず。2020年型の大幅アップデートが、MT-03とライダーたちの未来をさらに大きく広げてくれるといいですね。
【ヤマハ MT-03 主要諸元】
全長×全幅×全高:2090mm×755mm×1070mm
シート高:780mm
エンジン種類:水冷4ストロークDOHC4バルブ直列2気筒
総排気量:320cc
最高出力/最大トルク:42ps/3.0kgm
燃料タンク容量:14.0L
タイヤ(前・後):110/70-17・140/70-17
ブレーキ:前後油圧式シングルディスクブレーキ
メーカー希望小売価格:65万4500円(税込)
(文:村上菜つみ 写真:高橋克也)
【関連リンク】
MT-03 Official Site
https://www.yamaha-motor.co.jp/mc/lineup/mt-25/
村上菜つみさんがヤマハ・MT-03で出かけたツーリング記事は、月刊誌「モトチャンプ」2020年9月号(8月6日発売)に掲載されています。