目次
■エクストレイルの販売動向をさぐる
今回はエクストレイル試乗の最終回。
エクストレイルの販売動向を見ていきます。
●販売動向
日産広報の方にお願いして、現行で4代めを数えるエクストレイルの、2022年7月20日発表、同25日発売から今年2024年1月31日まで、ざっと17か月強の期間の販売動向のデーターを出していただきました。
【現行4代めエクストレイルの販売動向】
1.販売台数(2022年7月25日~2024年1月31日)
41.515台
2.全体の2WD・4WD比率
1:9
3.機種別比率(AUTECH、エクストリーマーX等を除く主要グレード抜粋)
1.2WD
・S:0.5%
・X:7.0%
・G:5.0%
2.4WD
・S e-4ORCE:4.0%
・X e-4ORCE:15.0%
・X e-4ORCE 3列シート車:2.0%
・G e-4ORCE:55.0%
4.人気ボディカラー比率
1.単色
1位:ブリリアントホワイトパール 35.0%
2位:ダイヤモンドブラック 26.0%
3位:カーディナルレッド 5.0%
4位:ブリリアントシルバー 4.0%
5位:ダークメタルグレー 2.0%
6位:カスピアンブルー 1.5%
7位:ステルスグレー 1.0%
2.2トーン
1位:ブリリアントホワイトパール × スーパーブラック 11.0%
2位:シェルブロンド × スーパーブラック 9.0%
3位:ステルスグレー × スーパーブラック 3.0%
4位:カスピアンブルー × スーパーブラック 2.0%
5位:サンライズオレンジ × スーパーブラック 1.0%
5.メーカーオプション装着人気比率(上位5つ。「◇」は、7組あるカタログ記載のセットオプション◇1~◇7のこと。)
1位:セットオプション◇7 85.0%
・ホットプラスパッケージ(後席ヒーター付シート(セカンドシート左右席)、ステアリングヒーター)
2位:セットオプション◇1 84.0%
・インテリジェントアラウンドビューモニター(移動物検知機能付) ・インテリジェントルームミラー ・Nissan Connectナビゲーションシステム(地デジ内蔵) ・車載通信ユニット(TCU・Telematics Control Unit) ・ETC2.0ユニット(ビルトインタイプ) ・USB電源ソケット タイプC(フロント1個、リヤ1個) ・100V AC電源(1500W・ラゲッジ1個) ・プロパイロット緊急停止支援システム(SOSコール機能付) ・SOSコール
3位:セットオプション◇3 80.0%
・インテリジェントキー(運転席・助手席・バックドア感知、オートバックドア開閉機能付、フューエルフィラーリッド連動、キー2個)、リモコンオートバックドア(ハンズフリー機能、挟み込み防止機構付)
4位:セットオプション◇4 46.0%
・ルーフレール、パノラミックガラスルーフ(電動チルト&スライド、電動格納式シェード付)
5位:アダプティブLEDヘッドライトシステム 45.0%
6.ユーザー層(メーカーより)
想定のターゲット層である40台後半~50台のお客さまをメインにご購入いただけております。4WD構成比・Gグレード構成比ともに高く、本革シート装着率も一定以上ある点から上質さを求めつつも本来ご自身の中に秘めるアクティブな気持ちを両立したいと考えているお客さまからご好評いただいていると考えています。
また、以下機能や品質については先代モデルから各段に改善したと評価いただいています。
・先進技術:e-POWER/e-4ORCEにより実現するスムースな加速と快適な走り、静粛性
・品質・質感:素材の質感、12.3インチワイドモニターなどを含む車内空間の上質感
販売台数については後述するとして、クルマの性格を象徴しているとはいえ、4WDが9割を占めるとは想像以上。
人気がシリーズ中いちばん高いG e-4ORCEに集中しているのも想像していましたが、おそらくは乗り出しで500万円を超えるであろう最上級機種が過半数とは!
ここから先は個人的趣味が前面に出る語りとなりますが、「クルマは白がいちばんすっきりしていていい」と思っている筆者から見て、2トーン塗装であろうと単色塗装であろうと白がトップなのはわが意を得たり。いっぽう、てっきり流行中なのだと思っていた2トーン塗装のほうが、少なくともエクストレイル全体では人気薄なのは意外でした。
工場オプションは、装備表をあらためて眺めると単品オプションは少なく、多くはセットオプション。だから「◇」が上位に来るのは当然ですが、7つあるセットオプションのうち、「◇4」のパノラミックガラスルーフのセット一式がランクインしているのは、サンルーフ必須派としてひそかにほくそ笑んでいるところです。サンルーフの選択率がエクストレイルでは46%だからといって、ノートやセレナにも用意したらというのは甘いか?
ユーザー層が40~50代がメインなのは「意外に高いな」と思いましたが、落ち着いて考えてみれば妥当でしょう。車両イメージから、30~35歳あたりが中心かと思っていましたが、若いひとたちはクルマを購入する余力がないし、いまや還暦前後のひとだって昔の60代・・・いや、50代と比べても若い。同様、エクストレイル乗りの「メインを占める」という40~50代は、おっさんくさい40~50代なのではなく、いってみれば松岡修造みたいな姿の40~50代というイメージが浮かびます。
さて、エクストレイル約17か月強での平均月販台数は2400台ちょい。
買いやすい車両価格ではないことに加え、これは他車も条件は同じですが、半導体不足による納車遅延の影響があり、絶対数の多い少ないについては何も書くことができません。
ただ、日産の販売台数TOP3の常連とはいえ、販売戦略上、エクストレイルがe-POWERへの1本化に踏み切ったことが必ずしも吉と出ているとはいい切れない面があります。
日本自動車販売協会連合会(通称・自販連)を見てみると、エクストレイルが現行型に移行した2022年7月から今年2024年1月までの、競合RAV4の販売推移を見てみると、エクストレイルが4万3337台(日産広報の数字より大きいのは、たぶんAUTECHやエクストリーマーXを含んでいるため)であるのに対し、RAV4は5万9178台となっています。
月単位で見ればRAV4よりも多く売れている月があるし、RAV4の販売統計を見てのことではないので、あくまでも推測に過ぎないものの、全体的にはRAV4のほうが勝っているのは、価格を抑えたガソリン車にも2WD、4WDそれぞれをラインナップに揃えているためではないか。
価格帯を比較してみると、こちらe-POWERひとすじのエクストレイルが2WDのSから4WDのG e-4ORCEまで、351万0100円から474万8700円までの範囲であるのに対し、あちらRAV4は、とびぬけて高い563万3000円のプラグインハイブリッド4WD Zは別格に、安い2WDガソリンXの293万8000円から4WDハイブリッドGの430万4000円までと、低価格寄りに範囲を広げて分布しています。
今日、RAV4はハイブリッド比率が高いと思いますが、エクストレイルとの販売台数差16000台弱の多くはガソリン車であり、(約5万90000-約1万6000):約1万6000≒11:4は、そのままRAV4のハイブリッド車とガソリン車の販売比率になるのかも知れないなァと、かなり無理して思っているところ。
RAV4のガソリン車は、2WDも4WDも直列4気筒2000。別に競合に合わせる義理はありませんが、ノートやキックス、エクストレイルがe-POWERに徹している中、セレナだけはRAV4と同形式の直4ガソリン2000車も持ち合わせていることだから、ここはひとつセレナからMR20DDをちょうだいしてエクストレイルにも載せ、価格帯を安い側に拡大して買われやすくすれば販売台数も上向くのではないか。
仕上りのいいクルマだし、プロパイロットパーキングに代表される先進技術もなかなかのもの。
発売から17か月ばかりの台数差約1万6000は、何となく、価格を抑制できるガソリン車を設けることで埋められる程度の数字のような気がします。これが相手の背中・・・いや、バックドアが見えなくなる4万台、5万台もの差となると、根底からの巻き返し策が必須でしょうが、現状のエクストレイルがRAV4に対して車両キャラクターや商品力で劣っているとは思いません。
次にメーカーからのコメントを記載します。
7.メーカーコメント
今回のエクストレイルは従来の”タフさ”に加えて、”上質さ”を新たに組み合わせたモデルです。
お客さまにはこの点高くご好評いただき、下取りの40%が先代モデルからの乗り換えである点から、30-40代で先代のエクストレイルをご購入いただいたお客さまが時間的・精神的な余裕を持った上でより上質な現行モデルに乗り換えいただいております。
●エピローグ
いま、日産ホームページ内の「カーラインアップ」(の乗用車)を見ると、アリア、リーフ、サクラは「電気自動車(100%電気自動車)」のグループに配属され、ノート&ノートオーラ、キックス、セレナ、そして今回のエクストレイルは「電動車(e-POWER)」組に区分けされています。
「いくら純粋な電気自動車ではなく、そしてシリーズハイブリッドのモーター走行だからといっても、エンジンを載せている以上「電動車」というのは無理があるんじゃないの?」
筆者がこのように思ったのは、e-POWERが先代ノートで初登場したときでした。
しかし初めてノートe-POWER車(先代の)に乗るや考えが一変。
e-POWERは、エンジンは発電に徹し、その発電で得た電力でタイヤをモーター駆動するシリーズハイブリッドに分類されます。プリウスのようなパラレルハイブリッドとは異なるハイブリッドです。
走ったのはわずかな距離でしたが、エンジンは住宅街や街乗りレベルではほとんどかからず、かかったとしても全体のうちのわずかな間だけ。同じハイブリッドでもプリウスとはこれほど違うとは思ってもいませんでした。発電のためならドライバー意志とは無関係にエンジンがまわり始めるから燃料消費を心配しましたが、燃料計を見りゃあいっくら走ったってちっとも減りゃあしない。
ハンドルを握って走らせてみて、「クルマを動かしている間だけは事実上、こりゃ確かに電気自動車だわ」と脱帽したものです。やはり自動車は実際に乗ってみないとわからない。
リーフは「電気自動車」ですが、e-POWER車だってタイヤが転がっている間だけを切り取れば立派な「電気自動車」と捉えてもいいと思います。発電役のエンジンを載せている以上「電気自動車」といい切ることができずにいるだけで、ひょっとしたら日産自動車はe-POWERを「電気自動車」のうちに勘定したいのが山々なのではないか。
現行3代めノートからe-POWERも第2世代に入り、そのVCターボ版e-POWERを載せたエクストレイルは、重量・サイズとも大きいがために、さすがにエンジンは新旧ノートよりも始動頻度が上がりますが、それとて電気自動車といっても差し支えないほどエンジンの存在感は薄い・・・筆者は昨今、自動車がらみのニュースで「電動化」「電気モーターで・・・」という文句を見聞きするとにつけ、何だかマブチモーターを組み込んだタミヤ模型のプラモデルの話を聞かされているようで、自動車がおもちゃになったみたいなのが実におもしろくないと思っていました。
が、しかしモーター駆動ならではの走り始めからの力感や、追い越し時の加速力はエンジン車ででもパラレルハイブリッドででも得られない味で、e-POWER車に乗れば乗ったで、なるほど「電動化」も悪くはないし、販売戦略としてどうかの詮議はともかく、日産が現行ノートやこのエクストレイルをe-POWER車に決め打ちした理由がわかった気がしました。
最後、燃費の報告をもって、16回に渡って続けてきたリアル試乗・エクストレイルの幕を降ろします。
(文:山口尚志 モデル:星沢しおり 写真:山口尚志/日産自動車/トヨタ自動車)
【燃費報告】
★試乗トータル燃費:12.6km/L(カタログ燃費:18.4km/L(WLTC総合))
★燃費計測のための総走行距離:443.2km(一般道 122.6km + 高速道 259.2km + 山間道 61.4km)
★試乗日:2023年11月25日(土)~27(月) 天候は晴れ。クーラーはほぼONのまま。
【経路内訳】
一般道:東京都練馬区~新宿区~江東区、群馬県前橋市内 計122.6km
高速道:
・首都高速 台場線・台場IC~都心環状線C1右回り~5号池袋線・早稲田IC 計13.3km
・関越自動車道 下り・練馬IC~北関東自動車道・前橋南IC 計87.9km
・関越自動車道 下り・前橋IC~沼田IC 計33.5km
・関越自動車道 上り・沼田IC~練馬IC 計124.5km
山間道:赤城山2往復 計61.4km
【所感】
12.6km/Lの平均燃費はカタログ燃費達成率約68.5%。
車重1880kgが前回ステップワゴンの1740kgの140kg増であっても、駆動方式が違っても、メカニズムの複雑化による機械ロスが増しても、ステップワゴンの12.4km/Lと同等+アルファの12.6km/Lなのは、「同じ重量物を同じ時間内に同じ距離だけ移動するなら、そのエネルギー消費量は同じ」の論を大ざっぱに証明しているような気がする。いや、140kg増だからむしろ優秀。
いっぽう、最新メカニズムのイメージからするとちょっと期待外れの感もある。ステップワゴンはただのガソリンエンジンであったのに対し、こちらはハイブリッドなのだから、カタログ値は望まないにしても、実用燃費はせめて14~15km/Lあたりに届いてほしかったというのが率直な感想である。でもあらためてエクストレイルを眺めれば図体のでかい4WDなのだから、これで12.6km/Lなら素直によしとしなきゃならないか。
しかし発進時や加速時に感じる力感はモーター駆動ならではのもので、このパワー感と燃費の抑制をいまよりももっと明快に両立できるよう改良されると「e-POWER、いいね!」となるだろう。
この「リアル試乗」では記事のために一般路・高速路・山間道のコースを決めて試走しているが、このエクストレイルe-POWERのe-4ORCEを、クーラーもヒーターも使わなくてすむ春か秋に、街乗り中心で使うとどうなるか、試してみたい。
燃費は格段にいいのではないかと予測する。
【試乗車主要諸元】
■日産エクストレイル G e-4ORCE アクセサリー装着車〔6AA-SNT33型・2022(令和4)年7月型・4WD・ステルスグレー&スーパーブラック2トーン/ブラック内装〕
★メーカーオプション(税込み)
・アダプティブLEDヘッドライトシステム(オートレベライザー付):3万3000円
・クリアビューパッケージ(リヤLEDフォグランプ):2万7500円
・BOSE Premium Sound System(9スピーカー):13万2000円
・ステルスグレー/スーパーブラック 特別塗装色:7万7000円
・ルーフレール+パノラミックガラスルーフ(電動チルト&スライド、電動格納式シェード付):18万1500円
★販社オプション(税込み)
・グリルイルミネーション(インテリジェント アラウンドビューモニター付車用):6万3840円
・日産オリジナルドライブレコーダー(フロント+リヤ):8万6302円
・ウインドウ撥水 12ヶ月(フロントガラス+フロントドアガラス撥水処理):1万1935円
・ラゲッジトレイ:1万7800円
・デュアルカーペット:3万9800円
・滑り防止マット:1980円
・アドベンチャーズパッケージ(リモコンオートバックドア・インテリジェント アラウンドビューモニター付車用):16万3118円(セット内容:フロントアンダーカバー、リヤアンダーカバー、フロントバンパーフィニッシャー(ブラック))
・フードディフレクター:2万9800円
●全長×全幅×全高:4660×1840×1720mm ●ホイールベース:2705mm ●トレッド 前/後:1585/1590mm ●最低地上高:185mm ●車両重量:1880kg ●乗車定員:5名 ●最小回転半径:5.4m ●タイヤサイズ:235/60R18 ●エンジン:KR15DDT型(水冷直列3気筒DOHC) ●総排気量:1497cc ●圧縮比:8.0-14.0 ●最高出力:144ps/2400-4000rpm ●最大トルク:25.5kgm/2400~4000rpm ●燃料供給装置:ニッサンDi ●燃料タンク容量:55L(無鉛レギュラー) ●モーター型式(フロント):BM46 ●種類:交流同期電動機 ●最高出力:204ps/4501-7422rpm ●最大トルク:33.7kgm/0-3505rpm ●動力用電池(個数/容量):リチウムイオン電池(-/-) ●モーター型式(リヤ):MM48 ●種類:交流同期電動機 ●最高出力:136ps/4897-9504rpm ●最大トルク:19.9kgm/0-4897rpm ●動力用電池(個数/容量):リチウムイオン電池(-/-) ●WLTC燃料消費率(総合/市街地モード/郊外モード/高速道路モード):18.3/16.1/19.9/18.4km/L ●JC08燃料消費率:-km/L ●サスペンション 前/後:ストラット式/マルチリンク式 ●ブレーキ 前/後:ベンチレーテッドディスク/ベンチレーテッドディスク ●車両本体価格:478万8700円(消費税込み・除くメーカーオプション)