目次
■エクストレイルの、シーン別ライト性能はいかに?
リアル試乗・エクストレイルの第6回めはライト編をお送りします。
●いま風のアダプティブ式は最上級機種にのみ工場オプション
いちばん安い機種でも350万もの値段がする割に、エクストレイルのライトはシンプルな造りで、ヘッドライト光源はLEDであるものの、現代的なアダプティブ式を標準で持つ機種は存在せず、最上級のG/G e-4ORCEにだけ工場オプションで用意されるにとどまります。
今回の試乗車には、そのアダプティブ式ライト・・・カタログ名「アダプティブ式LEDヘッドライトシステム(オートレベライザー付)」がついていました。
エクストレイル試乗第1回でも書きましたが、メーンのライトをバンパー内に収めているのは見るたびに疑問で、バンパーだけで吸収する軽衝突でもランプ筐体が影響を受け、光軸が狂ったり、アダプティブ機能や複雑な基盤に損傷を与えたりしないかが心配の種。そうでなくたってLEDはどれかひとつ素子切れを起こしてもユニットごと全取っ替えになり、高額な修理費用を強いられるのだから、軽衝突を受けても無縁でいられるレイアウトデザインであってほしかった。
標準状態で眺めたとき、実用機能に機種ごとの差異はなく、以前だったらヘッドライトになりそうな位置にあるのは車幅灯とターンシグナルで、車幅灯がLED、ターンシグナルがバルブ(電球)式なのがS/S e-4ORCE、X/X e-4ORCE。
同じ位置のまま、今回の試乗車でもあるG/G e-4ORCEだけLED車幅灯が内側から外側に順繰りに広がっていくシーケンシャル式ターンシグナルにもなるのと、バンパーにフォグランプが備わる点が異なります。
機種仕様ごとの光源は、本稿末に示すとおり。
その下でいきなりバンパーになるその内側にアダプティブ式のライトがあり、背面のリフレクターがギラギラしているので目を凝らして見てもわかりにくいですが、どうも部屋が4つに分かれているようで、外側ふたつと最内側下段がロービーム、ハイにすると最内側下段の光が増すと同時に上段も追加点灯されます。バンパー下部には小さめのフォグランプが。
走行中、アダプティブビームの光がどのように発せられているのかは、自分で運転しているクルマを外から見ることができないのでわかりません。
ヘッドライトのバンパー置きには疑問がありますが、結果的に、ヘッドライトとターンシグナルが離れていることが、被視認性の点で奏功しています。
昔のクルマに対し、ターンシグナルがバンパー設置からライトユニットに一体にしたことの造り手側の本音は工数低減で、車体に別個それぞれ設置するよりは一体型にしたほうが取付の作業回数が片側1回ですむ。ただし一体型にしたことで、ターンシグナルの点滅がライト光に埋もれてわかりにくいという弊害が起きています。
エクストレイルの場合はその弊害が起きようがないわけですが、別にライトをバンパーに置かなくてもできるわけで、どのメーカーも、LED化による美しさの訴求よりも先に、灯火の見え方を第一にしてデザインしてほしいと思っています。
●実践・エクストレイルのアダプティブ式ライト
ライトスイッチは最新日産車に則ったデザインかつ新オートライト規制に準じた構成。
「AUTO」を起点に、昼間のパワー始動ならライトは消灯のまま、夜間なら自動点灯。この状態での停車時のスイッチ手前まわしで車幅灯に落ち、1秒以上の保持で全消灯。このポジションは手を離すと自動でAUTO位置に戻ります。
向こうまわしのスイッチ固定で昼夜問わずにライト強制点灯。
この試乗車はこれまた工場オプションのリヤフォグランプがついていましたが、そのスイッチはレバー中腹にあり、リヤフォグランプ付車なら常に定位置に戻るスイッチを上まわしするごとにフロントフォグが点消灯。ヘッドライトまたはフロントフォグ点灯状態で下に向けるたびに、こんどはリヤフォグランプが点消灯するという寸法です。
さて、アダプティブ機能の作動条件は、
・ライトスイッチがAUTO。
・アダプティブLEDヘッドライトシステムのスイッチがON。
・車速が約25km/h以上。
これらの条件が揃ったときにシステムが自動で配光をアジャストし、車速が約15km/h以下になるとロービームに落ちるというロジックです。
オートハイビームにしろ自動アダプティブビームにしろ、登場初期の頃は、レバー位置が向こう側で作動、中立位置で作動と、メーカーや車種によってばらつきがあり、システムが鈍感で手動でハイに切り替えたくとも、向こう側作動のクルマの場合はそれ以上どうしようもなくなるのが欠点でした。
たかだかレバー位置ごときでと思うひともいるでしょうが、運転者にとっては大きな違いで、筆者はこれがどうにも使いにくいと指摘し、「いずれどのクルマも中立位置作動になっていくだろう」と書いてきましたが、エクストレイルの場合は筆者が望むとおりのスイッチ構成になっていました…いいぞ、いいぞ。
エクストレイルの場合、レバー先端に別建てされているスイッチ(取扱説明書には特に名称はない)を押しておきさえすれば、あとは昭和・平成時代のクルマと同じ操作。すなわちレバー中立位置のまま光はローとハイの間を自動配光し、クルマ任せが感覚に合わなければ、昔同様レバーの向こう押しで通常のフル発光ハイビームになります。
逆に、自動配光が気に入らなければ、先端スイッチをOFFにしてタダのロービームに・・・これがいちばんいいに決まっているのに、何で初めからこうしないでバラバラだったんだろう?
このアダプティブシステム、まずは夜の住宅街で使ってみましたが、車速が25km/h以上になれば街灯に惑わされることなく正しく作動し、じわっと光が上向きになるのを確認。
これが道両脇の店舗や看板の照明のせいで暗いとはいえない夜の幹線路では、見た目には機能の働きは実感できませんが、メーター内には青いランプが灯っており、かつ先行車からパッシングされることもなかったのでうまく働いていたのだと思います。
アダプティブ式の本領発揮、その働きがドライバーにも一目瞭然となるシーンは、やはり道路照明が乏しい夜の山間道および郊外の高速道路です。
このリアル試乗で毎度おなじみ、群馬の夜の赤城山で試すと、料金所跡を通過するや照明がなくなる勾配路では即座に上向きのフルハイビームとなります。カーブ向こうから対向車が顔を出せばさきの街中走行同様、即座に光量を落としますが、すれ違えばまた上向きに戻す・・・その間も青いランプは点きっぱなしです。
高速道路にシーンを移し、関越自動車道下り・高崎ICを過ぎると途端に道路照明がなくなりますが、この場でも対向車・先行車がなければハイビームになります。このとき後続車が横を抜けて先行車になれば光を落とすし、対向車線先の光の点が次第に大きくなってクルマが「お、対向車か」と判断すればやはりロー以上ハイ未満の光を維持。
行く先のICやSA、PAを示す緑の看板を、まるで看板のほうが光を放っているのではないかと思うほど照らし、その反射光にドライバーが幻惑するアダプティブランプのクルマがままありますが、そんな困ったさんなことをしてくれるエクストレイルではありませんでした。
困ったことといえば、これくらいの値段のクルマのアダプティブ式ライトに、もはや各社各車間の性能差は見られなくなり、こちら書く身からすると書くことが画一的になってきてしまったことです。
●できれば採り入れてほしい要望点
ここから先は注文。
全体的によくできたライトで、光量や光の配り方に不足は感じませんでした。
ただ、できれば夜、交差点の進入先、高速路やバイパスの車線変更時ならその流入先をしっかり見極めたいので、ターンシグナル連動および山間道カーブ走行時のためにハンドル連動も付加したコーナーリングランプも加えてほしいと思います。低速でしか灯らないようにするための車速連動機能なんか、高速道路じゃあかえって不便になるので要らない!
ライトは相変わらずパワーONにするやいきなり点灯しますが、クルマに乗ってひと待ちをするといったシーンを思うと、始動時からいきなり点灯するのではなく、シフトをPから動かした、または5km/hあたりを超えたときに点灯させたほうがいいと思います。新しくなった現在のオートライト規制は「走行中にライトを消すことができないこと」なので、このへん、もうちょい柔軟性を持たせてもいいのでは・・・
いっぽう、このオートライト規制でほんと国土交通省も迷惑極まりない規制をしやがったなと思うのが、まさにこの「走行中、一切合切ライト消灯できないこと」そのもので、いったんスモールに落として道を譲るといった合図に使えないこと、そして何よりも困るのが、大型トラックの後ろについたとき、コンテナ下部=ナンバープレート周辺の、まるで鏡みたいなギンギンギラギラめっきパネルに自車のライト光が反射したとき、手の打ちようがないことです。
このような際、筆者はまわりがいくらかでも明るいなど、状況が許せばライトをスモールに落として走ることがあるのですが、新しいクルマの場合はそれができません。
何が悲しうて自分のクルマのライト光に惑わされながら走らにゃならんのか?
これも元をたどればライトをつけ忘れするやつが後を絶たないせいですが、それとは別に、トラックのフロントはともかく、後部のギンギラパネルにだっておおいに問題がある。規制がんじがらめをよしとしない筆者もこのあたり、トラックに規制を施してほしいと長いこと思っていますが、それが望めないからもっかスモールに落としていたのに、いまじゃそんなだまし技も通用しない。
というわけで、「自分の身は自分で守る」の観点から、どうせアダプティブ式なら、前の光が自車ライトの反射光であることを検知したら、運転に支障のないロービームのロービームがあるといいというのは、贅沢なないものねだりか?
現状のオートレベライザーの最下位置で済むなら、自車ライトであることを認識した時点で最下にしてほしいし、いまの最下位置でも足りないならレベライザーをもっとロー側に拡大する・・・本当はこんなことを自動車&ライトメーカーに要求するようなことになっていることのほうが情けないのですが、ライト点灯もレベライザーもクルマ任せのオート式だと、渋滞でギンギラトラックの後ろについたが最後、自前でスモールに落とすこともレベルを下げることもできないので、どうのしようもないのです。
ないものねだりついでにいうと、エクストレイルを借りている間、ときに雨天に見舞われることがありました。
夜の雨天走行では雨に濡れて黒くなったアスファルトに白い光が吸収され、淡黄色のハロゲン光よりもなお見づらくなる・・・どうせ光色を変えられるLEDなら、LEDの白とハロゲン光を模した淡黄色を切り替えられるようにしてほしい。ドライバー任意を基本に、設定しだいでワイパー連動にしてもよし・・・以前保安基準を調べたら色は「白または淡黄色」と決められているだけで、「灯火の色を変えてはならない」の旨はなかったので違反にはならないと思います。「変えてもいい」とも書いていませんが・・・
さて、ここからちょっと余談でがっかりする話を。
筆者がいま使っている旧ジムニーシエラは、「こんなに暗かったっけ?」と思うほどハロゲンライトが暗かったのと、ライトレンズの経年劣化による白濁or黄ばみの原因は紫外線のほか、ライト熱の影響もあると疑っているので、納車から20日ほどでIPF製の後付けLEDライトに変えました。
こいつが1年半ほどで切れたので、3年保証期間内だったこともあり、無償交換してもらいましたが、同じ製品は生産終了になっていたので、交換品はその次の新型モデルに。ただし保証は引き継ぎ・・・つまり新たに3年保証になるのではなく、交換品の保証は最初に買った製品の残り期間1年半。新型モデルのほうが明るく、シエラのリフレクターとの相性も良好、光のモヤもなかったので気に入りましたが、交換から3年ちょい経過、つまり本来の保証期間切れを待っていたかのようなタイミングで左のライトが点かなくなりました。最初の製品はシェードの影で、車幅灯よりなお弱い光が灯っているのが確認できましたが、新モデルはまったくの不点灯。どうやら基板がヤラレタらしい。
シエラの前に乗っていた日産ティーダは、工場オプションで選んだキセノンバルブ(一般呼称・ディスチャージ式)でしたが、これは4~5年ほどで左側が寿命を迎えました。
その前に乗っていた最終型ブルーバード、こいつのハロゲンバルブはただの1度も切れることなく8年で16万キロ超の距離を走りぬきました。正確にいうと、ティーダに入れ替える1週間前に右側が切れたのですが、8年16万キロ持てば充分がんばったヨ。
という筆者の経験から、所有期間中の夜間走行の頻度や、車両装着品か社外品かの違いはありますが、
クルマのライトはハロゲン球がいちばん持つ。
が私の結論です。
ね? がっかりしたでしょ?
多機能な車両装着のLEDライトも始まってだいぶ経ちますが、自然発生的故障が全国各地で起きていないかどうか、興味を抱いているところです。
●リヤランプ
クルマの後ろにまわってリヤランプ。
ランプユニットはボディ側とバックドア側にまたがって設置されており、ボディ側上段はそのままバックドア側扁平コの字と一体で灯るテールで、その下にはストップランプをはさんでターンシグナル。
バックドア側のテールランプ下は、外側がリバースランプで、その内側には、車両右側に限って小さなリヤフォグランプが設置されています。
法規は満たしているに違いありませんが、ストップランプは細い、ほそ~い1本線。ちょっとわかりにくいのが気になる点。さきに述べたフロントターンシグナルの話と同じで、夜の右左折待ちのとき、この1本線がテールとターンシグナルに埋もれるので、後続車からの被視認性が気になる・・・もうちょい位置関係を見直し、テールとスモールを引き離したほうがいいんじゃないか。
最後、各ランプの容量を示しておしまいにします。
<フロント>
・車幅灯:LED
・ヘッドライト(ロー):LED
・ヘッドライト(ハイ):LED
・ターンシグナル(LED仕様車):LED
★ターンシグナル(バルブ仕様車):12V-21W(アンバー・WY21W)
・サイドターンシグナル(ドアミラー部):LED
・フォグランプ:LED
<リヤ>
・テール(バックドア側):LED
・テール&ストップ(ボディ側):LED
★ターンシグナル:12V-21W(アンバー・WY21W)
★リバース:12V-16W(W16W)
★ナンバープレート灯:12V-5W(W5W)
・ハイマウントストップ:LED
・フォグランプ:LED
借りたクルマをばらすわけにはいかないので実物の確認はしていませんが、★マーク付きのものはバルブなので、DIYでできるかどうかはわからないものの、バルブ交換は可能と思われます。
次回、「車庫入れ編」でお逢いしましょう。
(文/写真:山口尚志 モデル:星沢しおり)
【試乗車主要諸元】
■日産エクストレイル G e-4ORCE アクセサリー装着車〔6AA-SNT33型・2022(令和4)年7月型・4WD・ステルスグレー&スーパーブラック2トーン/ブラック内装〕
★メーカーオプション(税込み)
・アダプティブLEDヘッドライトシステム(オートレベライザー付):3万3000円
・クリアビューパッケージ(リヤLEDフォグランプ):2万7500円
・BOSE Premium Sound System(9スピーカー):13万2000円
・ステルスグレー/スーパーブラック 特別塗装色:7万7000円
・ルーフレール+パノラミックガラスルーフ(電動チルト&スライド、電動格納式シェード付):18万1500円
★販社オプション(税込み)
・グリルイルミネーション(インテリジェント アラウンドビューモニター付車用):6万3840円
・日産オリジナルドライブレコーダー(フロント+リヤ):8万6302円
・ウインドウ撥水 12ヶ月(フロントガラス+フロントドアガラス撥水処理):1万1935円
・ラゲッジトレイ:1万7800円
・デュアルカーペット:3万9800円
・滑り防止マット:1980円
・アドベンチャーズパッケージ(リモコンオートバックドア・インテリジェント アラウンドビューモニター付車用):16万3118円(セット内容:フロントアンダーカバー、リヤアンダーカバー、フロントバンパーフィニッシャー(ブラック))
・フードディフレクター:2万9800円
●全長×全幅×全高:4660×1840×1720mm ●ホイールベース:2705mm ●トレッド 前/後:1585/1590mm ●最低地上高:185mm ●車両重量:1880kg ●乗車定員:5名 ●最小回転半径:5.4m ●タイヤサイズ:235/60R18 ●エンジン:KR15DDT型(水冷直列3気筒DOHC) ●総排気量:1497cc ●圧縮比:8.0-14.0 ●最高出力:144ps/2400-4000rpm ●最大トルク:25.5kgm/2400~4000rpm ●燃料供給装置:ニッサンDi ●燃料タンク容量:55L(無鉛レギュラー) ●モーター型式(フロント):BM46 ●種類:交流同期電動機 ●最高出力:204ps/4501-7422rpm ●最大トルク:33.7kgm/0-3505rpm ●動力用電池(個数/容量):リチウムイオン電池(-/-) ●モーター型式(リヤ):MM48 ●種類:交流同期電動機 ●最高出力:136ps/4897-9504rpm ●最大トルク:19.9kgm/0-4897rpm ●動力用電池(個数/容量):リチウムイオン電池(-/-) ●WLTC燃料消費率(総合/市街地モード/郊外モード/高速道路モード):18.3/16.1/19.9/18.4km/L ●JC08燃料消費率:-km/L ●サスペンション 前/後:ストラット式/マルチリンク式 ●ブレーキ 前/後:ベンチレーテッドディスク/ベンチレーテッドディスク ●車両本体価格:478万8700円(消費税込み・除くメーカーオプション)