三菱自動車の「ミニカトッポ」デビュー。背高ノッポのユニークな軽自動車は、82.3万~105.1万円で販売【今日は何の日?2月21日】

■ハイトワゴンの元祖的な存在だが、ブームの立役者にはなれず

1990年にデビューした「ミニカトッポ」
1990年にデビューした「ミニカトッポ」

1990(平成2)年2月21日、三菱自動車からユニークな軽自動車、背高ノッポの「ミニカトッポ」がデビューしました。

ハイトワゴンブームをけん引したのは、ミニカトッポの3年後に登場したスズキの「ワゴンR」でしたが、背が高い点においてミニカトッポは、現在も軽自動車の主流として続いているハイトワゴンの元祖的な存在なのです。


●長く三菱の軽自動車をけん引したミニカシリーズ

ミニカトッポの元祖である「ミニカ」の歴史は古く、初代ミニカの誕生は1962年まで遡ります。

1955年、スズキのスズライトで幕開けた軽自動車、1958年にデビューして大ヒットした富士重工業の「スバル360」、それに続いたのが1962年にデビューした東洋工業(マツダ)「キャロル」であり、新三菱重工の「ミニカ」でした。ミニカは、三菱初の軽乗用車であり、以降2011年まで8代49年間販売された三菱を代表する長寿モデルです。

1989年にデビューした6代目「ミニカ」
1989年にデビューした6代目「ミニカ」

初代ミニカは、最高出力17PSを発揮する359ccの2気筒2ストロークエンジンを搭載し、駆動方式は当時主流のRRでなくFRを採用。広いトランクスペースを持つ3ボックスタイプがアピールポイントでした。

その後、「ミニカスキッパー」など人気モデルも生み出した三菱の基幹モデルとして成長。6代目デビュー翌年の1990年から施行された軽自動車の新規格に対応したミニカは、排気量を660ccに拡大し、ボディも大型化されました。

この6代目ミニカの新規格対応マイナーチェンジと同時に発売されたのが、初代ミニカトッポだったのです。

●奇抜な発想で登場した背高ノッポのミニカトッポ

ミニカトッポがデビューした1980年代後半は、バブル景気の真っ盛り。高性能モデルとともに、レジャーにも使えるセカンドカーの需要も増えていました。ミニカトッポも、遊び心が盛り込まれた奇抜な背高ノッポの個性的な1台でした。

ミニカトッポは、6代目ミニカをベースに全高を230mm高く1695mmとし、シートポジションはほとんど上げずにヘッドクリアランスを拡大するという、ハイトルーフが最大の特徴。また、運転席側のドアと助手席側のドアサイズが異なる“左右非対称ドア”を採用、運転席側は小さく、助手席側は後席のアクセスが容易なように大きいドアにするという工夫もされていました。

エンジンは、ベースと同じ660cc直4 SOHCおよびDOHCの2種で、1気筒に3×吸気弁、2×排気弁を持つ、軽としては珍しい5バルブエンジンでした。当時のバブル期には、軽のエンジンでもターボや多弁化などで高性能化が図られていたのです。

車両価格は、82.3万~99.3万円(5速MT)/86.6万~105.1万円(3速AT)。ちなみに当時の大卒初任給は17万円程度(現在は約23万円)でした。ヘッドクリアランスが広いことから、主に主婦層から人気を獲得しました。

●ミニカトッポは、なぜハイトワゴンブームの立役者になれなかったのか

背の高いミニカトッポは、ハイトワゴンの元祖的なモデルと言えますが、実際には軽のハイトワゴンの一大ブームを起こしたのは、3年後の1993年にデビューしたスズキのワゴンRでした。

1993年に登場したスズキの「ワゴンR」。ハイトブームをけん引
1993年に登場したスズキの「ワゴンR」。ハイトブームをけん引

ワゴンRは、「アルト」より頭ひとつ背の高いハイトワゴンですが、単なる背高ノッポではなく、車高の高さを利用してホイールベースを広げて、シートポジションも200mm程度上げたことが、ミニカトッポとは大きく異なります。その結果、大人4人が余裕をもって乗れる居住空間と乗降のしやすさ、さらに広い視界を確保することに成功したのです。

圧倒的な居住空間を実現して爆発的な人気を博したワゴンRは、発売から3年2ヶ月で累計販売台数50万台を達成、ハイトワゴンブームをけん引しました。


ミニカトッポは車高を高くするという着眼点はすばらしかったのですが、奇抜なスタイリングの車で終わってしまいました。実用面でもう少しアイデアがあれば、大ヒットモデルになったかもしれません。

毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれません。

Mr.ソラン

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Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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